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『憲法判例百選(第6版)』 長谷部・石川・宍戸編 有斐閣 2013
憲法判例百選の新版が出た。
6年ぶりということで従来通りのペースでの刊行。
編者は高橋和之教授から後継者の宍戸常寿教授へと、
これまたスムーズにバトンタッチされたようだ。
執筆者はいつものとおり“学会総出”という様相に変わりはなし。
質にバラツキがあるという批判は残りそうだ。ただ、
編者による執筆方針は、「判例の内容をできるかぎり
客観的かつ内在的に解説してください」ということらしいので、
良し悪しの差があまりないことを祈るばかりである。
私たち学ぶ側からは、一つ一つの出来不出来を網羅的に
判断することは困難なのであるから、編者の方はそこは厳しく
品質管理をしてもらいたい(学者の内輪から百選批判が出たりすると、
読者としてはただただ迷惑である)。
判例の数は、うれしいことに緊縮が実行されている。
これは願ったりかなったりである。第5版は、
Ⅰが117件,Ⅱが120件であったが、今回は、
Ⅰが111件,Ⅱが105件となっている。私は、
「判例百選は“百選”なのだから各100件に収めるべきだ」
と常々思っている。百選の肥大は、試験での暗記量のインフレを招く。
だいたい毎回、新判例が20件くらい入るのであれば、
古い判例を中心に20件を除外してもらいたい。
まだまだアペンデッィクス欄に移行しても
よさそうな判例がけっこうあるように見える。
この質の問題と数の問題には、目次を眺めるに、
うっすらと相関関係があるのではないかと私は思う。
つまり、多くの学者に書かせたいがために判例数が
減らせないのではないか。執筆者をもっと減らせば、
自然に200件に落ち着くのでは…、と思うのだが、
外野にはどうにもならない事情である。
ただ、従来のややだらだらとしていた印象が、
一段階きりっとした感じは確かにある。
この方針が継続するなら、判例教材の定番として
面目躍如といっていいのかもしれない。
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憲法・行政法の本
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『新・判例ハンドブック憲法』 高橋和之 編 日本評論社 2012
20年ぶりにリニューアルされた
憲法判例のガイドブックである。
旧版は芦部信喜博士編集だったが、
今回は弟子の高橋和之教授の編集となった。
執筆陣も、弟子筋の宍戸常寿准教授を中心に、
現在の新進気鋭が担当している。
内容は、223件の判例を、1ページ1件で、
事実,判旨,解説で構成している。
簡単にいうと、判例百選のⅠとⅡを
圧縮し,コンパクト化したようなものだ。
分厚い資料集ではなく参考書としてみれば、
過不足がなく、すごく便利だと思う。
「百選は解説がいまいちだし、かといって
判例六法だけではよくわからない」という
ケースがままある中、
その間をとった使い勝手の良さがある。
要約はかなり短いが、
勘所を突いていて、無駄がない。
論文式試験にはどうかわからないが、
短答式の資格試験には相当有効だろう。
「初心者の入門と、試験対策の復習の2通りの使用」
を想定しているらしいが、(法律系の本にはめずらしく)
その狙いに狂いはなさそうだ。
価格が安いので、あてが外れても痛くないのも嬉しい。
ただ、あえて一つ個人的好みから難点をいえば、
B6版ではなく、A5版またはB5版だったら
もっと良かったなと思う。
B5の大判なら、まさに百選を“食う”ほどの
注目書となったろう。
また、文字がぎゅうぎゅうで小さいので、
老眼の人には厳しい。
内容そのままでA5版にした方が受けたかもしれない。
もちろん「B6版だからいいのだ」という意見もあろう。
一概にはいえない。とはいえ、
「ハンドブックの伝統だから小さく」
という形式論理だとしたら、
ちょっともったいなかったかなと思う。
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『新基本法コンメンタール憲法』 芹沢・市川・阪口編 日本評論社 2011
日本国憲法に関する現時点で数少ない
注釈書・コンメンタールである。
2006年の第5版から大幅にリニューアルされた。
かなり力の入ったすばらしいできである。
今回のリニューアルで横組みに一新された。
私は、第5版からこの本を読んでいる。
憲法全条文を網羅していて、ほどよく詳しい
コンメンタールというものはこの本くらいしか
ないので、とても重宝している。
条文の細かい言葉の説明はもちろん、
沿革から最新の解釈や判例も十分に解説されている。
書店等で手に入るような教科書・解説書類に
書いてあるようなことならほとんどカバーしているので、
極端な話、この本だけあれば標準的なことはほとんど
すべてわかるといっても過言ではないかもしれない。
もちろん内容は刷新されたわけだが、
注目されるのは執筆者の大幅な交代である。
若返りを図ったそうであるが、東大勢をはじめ
気鋭の学者が多数参戦している。第5版までは、
メンバーのマイナーさがひっかかるように思われたが、
今回かなりメジャーな人が参加していることが
個人的に非常に興味深い。
東大からは石川、宍戸、林氏が、京大から毛利氏、
慶大から駒村、小山氏、早大から中島、西原氏など、
それ以外にもよく名前を目にする人が
たくさん加わった豪華競演となっている。
これは基本法コンメンタールではあまりない状況である。
今までも便利だったが、これまで以上に、
幅広い人が日本国憲法を調べるときに読む本として
ベストな信頼の一冊になったといえるだろう。
内容もサイズも人選もうまいことかみ合った注釈書といえる。
民法や刑法もこのような感じでぜひリニューアルしてほしい。
前に『新基本法コンメンタール刑事訴訟法』が
なんか非常に残念な感じになってしまったと書いたが、
そのことは本書と比較してみればよくわかると思う。
(あくまで私の嗜好に過ぎないのかもしれないが。)
ところで、本書にいい人材が流入したのは、
有斐閣の『注釈憲法(全6巻)』計画が
沙汰止みになっていることと関係があるのかもしれない。
本書もよいが、『注釈憲法』計画もぜひ再始動をして
ほしいと思うが、無理なのだろうか。
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『憲法入門』 長谷部恭男 羽鳥書店 2010
私にとって、著者は尊敬している学者の一人だけど、
この本はどうみてもいただけない。
今まで論文・エッセイを大量に書いている氏の待望の入門書、
なのだが本文はわずか140ページである(プラス30ページは
ただの日本国憲法条文)。それもスカスカの。それで、
2300円もとるのは無理があるのではないだろうか。
著者は、その著作『憲法と平和を問いなおす』(これは良書)
のあとがきにおいて、「(書籍を手に取り、)品定めをし、
定価や読了に要しそうな時間等のコストも勘案したうえで
結論を出そうという(態度を、)適切この上ない判断力」と
評している。では、著者はこの本をどのような気持ちで
世に送り出したのであろうか。
しかも、書店で実物を見てさらにがっかり。
出版社HPの紹介には“上製”と書いてあるが、
なんかボール紙みたいな表紙の、手作り感のある本だった。
普通のハードカバーとは全然違う安物。
図書館で借りて一気に読了。
内容的にも、著者の既存の著作のダイジェスト。
文体は極めて簡潔で、ときに高度でもある。
「憲法入門」というより「長谷部恭男入門」といったほうがいい。
著者の本を読んだことがない人が始めて
著者の見解に触れるには格好の本だが、
初心者用の入門書といえるのかといえば、
大きく評価は分かれるだろう。
人に薦めるなら、すでに出ている
『憲法とは何か』(岩波新書)か、
『憲法と平和を問いなおす』(ちくま新書)の方を薦める。
つまり、本書も、文庫本や新書だったらよかったということだ。
古書店で800円くらいで売っているのが見つかれば買ってもいい、
という感じである。
なお、出版社の羽鳥書店は以後、
大村教授,内田教授,藤田教授などの本が出版されているが、
いずれもファン向けで、しばらくは、
一般に広く読まれるような本は出ないようだ。
お金のことばかりで守銭奴と思われるかもしれないが、
藤田広美『民事執行・保全』も、300ページで4200円とは、
ちょっとボッていると言わざるをえないのではないだろうか。
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