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『リーガルマインド商法総則・商行為法』 弥永真生 有斐閣 2014(最新版)
『リーガルマインド手形法・小切手法』 弥永真生 有斐閣 2007(最新版)
著者は、明治大学在学中に公認会計士二次試験に合格し、今度は東京大学にも入学して司法試験に合格しながら、そこから実務家になるでもなく商法学者の道に進んだという異色の経歴を持っている。その経歴どおり、会計法学において目立った活躍をされているようだ。
そして、難関資格を攻略してきた経験をダイレクトに活かして、既存のテキストに見られないほど、学習者の目線に立ってシステマティックに構成したこの「リーガルマインド」3部作シリーズを完成させた。90年代後半から00年代にかけて、商法テキスト界のベストセラーの座を勝ち取っている。
かつては、「これだけでは足りない」とか賛否の議論があったもんだが、もともと研究書や注釈書ではなく、教科書または試験対策書なのだから、そこで不足をどうのこうの言っても始まらないだろう。最近はそういう話もあまり聞かなくなった。
激戦区である「会社法」はともかく、現在に至るまで長らく、「商法総則・商行為法」と「手形法」に関しては、この本の一人勝ち状態である。他に競合するものがほとんど見当たらない。単純に考えればやはりよくできたテキストだということだろう。
しかし、独占状態が生じた真の原因は別のところにあるのかもしれない。つまり、従来の「総則・商行為法」,「会社法」,「手形・小切手法」というカテゴライズから、世の中の興味がすっかり離れてしまったのではないか。
2006年の大改革を経た現在の「商法学」は、従来の三分類から大きく変容したと思われる。つまり、①「会社法」がだんぜん重要視されている。②「総則・商行為法」,「手形・小切手法」への関心が激減した。③それ以外の諸分野が応用分野として分立し、相対的重要性が「総則・商行為法」,「手形・小切手法」と対等以上になっている、という具合である。素人レベルに限れば、言い換えると、「商法」とは、「会社法(企業組織の法)」と「それ以外(個別的な商取引の法)」というふうに捉えることが適切になってきていると思われるのだ。言うなれば「商法三分野説」から「商法二分野説」へ、である。
したがって、弥永真生「リーガルマインド」シリーズにも、現状に即した再編集をしてほしいと個人的に思うのである。
1.「商法総則・商行為法」に現代取引など諸分野を加筆する。
2.「手形法・小切手法」を180頁ほどに縮小する。
3.そして二つを合体させて「商取引法」と名づける。
これが私の提案である。つまり『リーガルマインド会社法』と『リーガルマインド商取引法』の二冊編成にしてほしいということである。なんなら「リーガルマインドシリーズ」はもはや放棄して、『会社法』と『商取引法』として新規一転、書き下ろすというのもありだろう。
利便性も上がるであろうし、価格も1000円程度圧縮できる。ぜひ見直してほしいと思います。
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民法・商法の本
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『リーガルベイシス民法入門』 道垣内弘人 日本経済新聞出版社 2014
日本経済新聞出版社の「ゼミナール」シリーズであるが、
その法学部門が独立され、「リーガルベイシス」シリーズとなるらしい。
その第一弾がこの『リーガルベイシス民法入門』。
従来の『ゼミナール民法入門』(初版2002,第4版2008)
からの変更はほぼゼロで、まるっきり同じものである。
以下で指摘するが、せっかくの機会なのだから改革をしてほしかった、
少し残念である。
本書は民法財産法(総則,物権,債権)の入門書。
文章のわかりやすさには定評がある。雑誌書評でその説明の
うまさに対する学者仲間からの称賛の声を目にしたこともある。
日経が出していることからわかるように、ビジネス法務の
最先端にも少し触れている。したがって、法学部生はもとより、
むしろ経済学部生,ビジネスマンのテキストとして適しているのだろう。
債権法大改正も重点的に説明されているらしい。
ただしかし、本としてはかなり不満な面も大きい。
①通読するには意外と骨が折れる。
いかつい見た目からもわかるように、通勤通学時や寝っころがって
安易に読み流せる本とはいかない。入門というわりにはそれなりの
意気込みが必要だ。債権法大改正についてビジネスマンに紹介するだけなら、
350ページくらいに収めたほうがよかったのではないかと思う。
②家族法が含まれていない。
親族法と相続法が含まれていない。したがって
法学部新入生や資格試験受験生は注意がいるし、利用しにくい。
どうせ大きい本なら、家族法も入れてもっとぶ厚くしてしまったほうが
逆にいいのかもしれない。
③上下巻で2冊にするべきかも。
財産法のテキストしてはどうか。
教養として一通り学んだというためには、
民法総則200ページ,物権法300ページ,
債権総論200ページ,債権各論300ページ,
は欲しいところだろう。となると、「民法総則・物権法」で上巻、
「債権法」で下巻とするのがいいと思う。
さらに家族法も加えて、上巻「民法総則・物権法」,中巻「債権法」,
下巻「親族・相続」の三部作でもいいと思う。
このように、突っ込みどころは満載である。
とはいえ、著者は新進気鋭の東京大学教授。
ぱっと買ってざっと読み通す気概のある人にはいいのではないか。
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『セカンドステージ債権法Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ』 野沢正充 日本評論社 2011
債権法の総論から各論までを書き下ろした全三冊の教科書。
法学セミナーでの連載をまとめたものである。
法律学を勉強しようと思ったときにとかく困るのがテキスト選びだが、
今現在、この分野を勉強しようと思い始めた人には
このシリーズをおすすめしたい。良作だと思う。
本書は、一人の著者が、シンプルな体裁で、
全面的に判例,通説を中心として債権法を説明したものである。
そういうときわめてオーソドックス(ふつう)に聞こえるが、
実際にはここまで割り切ったテキストはなかなか存在しない。
民法をかじった人ならわかるだろうが、
重厚すぎたり、独自すぎたり、詳しすぎたり、薄すぎたりと、
法律学の教科書は、数が多い割には、
“これ”というものが実は少ないと思う。
そういう意味ではこの本は相対的にかなり良くできていて、
貴重とすらいえるかもしれない。
中でも判例の扱いが丁寧な点がよい。
シンプルながら重要な判例は原文を引いて詳しく説明されている。
そして学説は、いまどき珍しく基本的に「我妻説」一筋であり、
それをあくまで補強する形でその他の学説も盛り込まれている。
やや淡白とも感じるが、おおむね明快でわかりやすい記述である。
無駄なところがほとんどない。
ただ、本書の特長として、“論理的な思考力も涵養されて、
試験問題の解答力も向上する”といったようなことまで
うたわれている(そのため「セカンドステージ」か)が、
その点はやや疑問だ。そこまでテクニカルで、
懇切丁寧だとは思われない。その点をいうならば、
他に読むべき参考書はいろいろあるだろう。
やはり本書のすばらしいところは、“当たり前の基本を、
オーソドックスに説明してくれる基本書”というところにあり、
演習書的性格まで請け負うのは限界があるだろう。
そういう意味では、「セカンドステージ」というネーミングは、
ややミスリーディングで不適切だし、損していると思う。
タイトルから取り払った方がいいだろう。
それはそうと、迷っているなら読んでみてもいいテキストだ。
債権法(債権総論,契約法,不法行為法等)について、
これから勉強をし始める人、または、
混乱したのでもう一度勉強し直したいという人に、
ぜひお薦めしたい。
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『債権法の新時代』 内田貴 商事法務 2009 |
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『会社法』 伊藤靖史・大杉謙一・田中亘・松井秀征 有斐閣 2009 |




