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kenta's diary
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文七元結

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久しぶりのお噺ネタです。

今回は長編芝居話の「文七元結」です。
長い噺なので動画を使わせていただきます。

「元結」とは、まげを止める紐のことです。


【あらすじ】

舞台は、江戸時代の下町 本所と浅草です。

主人公は左官屋の長兵衛さん。
仕事は出来るのですが、バクチ好きで
負けては方々で借金をしてしまう。

これがもとで、夫婦喧嘩が絶えない。

これを見かねた親孝行な娘が、父のバクチの借金返済のために、
吉原にある「さのづち」という女郎屋へ自ら奉公に行ってしまいます。

ところが訳を聞いた「さのづち」の女将が、
長兵衛さんを呼び出し、娘の親孝行な気持ちに免じ50両を貸してあげます。
ただし、その条件として、期日までに全額返さなければ娘を女郎にして
しまうとの条件をだされます。
長兵衛さん、期日までの返済を約束し、50両をもらいます。

しかし、その帰り道の吾妻橋で川へ飛び込もうとする
1人の若い奉公人「文七」を助けます。
訳を聞くと売掛金50両をスリに取られてしまい
店の主人に申し訳がたたないと言って、
川へ飛び込もうとしていた、とのこと。

すると長兵衛さん、懐にあった大事な50両を、その奉公人へ
あげてしまいます。

50両をもらった奉公人「文七」がお店へ帰ると・・・??

さて、その続きは動画で!!





長編です。
全部で1時間以上あります。

動画の最後で、続きを探せますが
見当たらない場合は下のリンク先を
クリックしてください。

なお、携帯からもご覧になれます。

ただし、動画のため高額のパケット通信費がかかりますので
パケットフリーなど、ご契約の上、ごらんください。








富久 その4

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富岡八幡宮境内では、寺社奉行立会のもと、
良く通る子供の声で、次々と富の当たり札が読まれていきます。
「本日の〜特富ぃ〜〜!!」
子供の声に続いて、拍子木がカ〜ンと鳴り響き
奉行所の役人が、槍で札のいっぱい入った箱の中から
一枚の札を突きます。
あたりが静まりかえり、一同が息をのみます。
「本日の〜、特富ぃ〜〜!」
「松の百十番!!」



えっ!!!!
まっ、松の・・・。
ひっ、百十番・・・。
あっ、あっ・・・。当たった〜!!!!

えっ!お前さん。
当たったのかい?うまくやりやがったなぁ〜!
早く本殿へ行かなきゃだめだよ。
どうしたい?えっ?腰が抜けた??
しょうがねえな。



久兵衛さん、周りの人たちに担がれて本殿へ向かいます。
わっしょい!わっしょい!わっしょい!わっしょい!
中には、担ぎながら久兵衛さんのお尻をつねる奴までいまして・・・。



すいませんね、この人、千両富当たったみたいなんですがね
腰を抜かしちゃったようで。

あた・・・、あた・・・。

おや?久さんじゃないか!
よかったね。当たって。え〜。

ぶ、文さん。
あっ、あたりました・・・。

心配してたんだよ。先だっての火事で
お前さんとこ焼けちまって、どうしちまったかと
思ってたら・・・。

そんなこと、どうでもいいですから
千両ください!!

おいおい、あせっちゃいけないよ。
手続きってものがあるんだ、いいかい?
今すぐに持ってくってなると、
いろいろ手数料が3割ほどかかっちまう。
それでもいいのかい?

なんでもいいんですよ!
3割だろうと、5割だろうと、10割だろうと。

おいおい、10割じゃ無くなっちまうじゃないか。
わかった、わかった。
それじゃね、これから手続きをするから、あの札を出しておくれ。

あの札ね。あっ!!!

どうしたい?久さん?

あの札・・・。無いんですよ・・・。

無いって、どういうことだい?

あの札、当たるように大神宮様の中にしまっておいたんですが、
先だっての火事の時、一緒に燃えちまって・・・。

それじゃ、お前さん。
せっかくの千両あげらんないよ。

えっ!そんな・・・。
あっ!でも、文さんの帳面にアッシが買ったこと書いてあるじゃありませんか。
文さんから買ったんだから証人になってもらって・・・。

そうしたいのは、やまやま何だけどねぇ・・・。
お上の規則で、あの札と帳面が揃ってないと千両富は渡せないんだよ。

そんな、何とかお願いしますよ。ねえ〜。
手数料、倍取ってもいいですから、あれが無いと方々の借金やら
何やらが払えないんですよ!
お願いします。この通り。
お願い致します!!

そう言われてもねえ・・・。
ダメなものは、ダメなんだよ。

アッシが、これだけ頼んでもダメなんですか?
そうですか、そうですか!もう頼みませんよ!
アッシがこのまま、のたれ死んだっていいんですかい?
この、人殺し〜!!!!



『浅草 鳥越神社 前』



・・・ちきしょう。

おい。久兵衛さんじゃないかい?

えっ?あっ、かしら。

どうしたい。心配してたんだよ。
熊さんから聞いて、芝の出入りの旦那の所へ行ったって
聞いてたけど、今どこにいるんだい?

ええ、芝の田丸屋の旦那にお世話になっております。

そうかい。
あっ、そうそう。うちの若ぇ衆が焼ける前、
お前さんとこに飛び込んで、布団出してあるから
取りに来ちゃくんねえか?

布団なんか、いりませんよ。

おいおい、どうしたい?
折角取ってあるんだ、持って行きなよ。

差し上げます!!

おい、何かあったのかい?
え〜?いつもの久さんらしくないじゃないか?

いいんですよ。もう・・・。

何だか知らねえが、落ち着いたら取りに来るんだぜ。
ちゃんと取っておくから。
あっ、そうだ!
布団と一緒になぁ、大神宮様も、うちで預かってるから
ちゃんと取りに来ないと罰があたるぜ。

そうですか、大神宮さまも・・・。
大神宮様!!!!
どっ、泥棒!!

なんだよ!藪から棒に、泥棒って。
人聞きの悪い。

だっ、だっ、大神宮様。返せ!!

何だ?おまえ今まで、要らねえって言ってたじゃね〜か。
それじゃ、うちに来い!!



『鳥越 頭宅』




ほら、お前さんの布団と大神宮様だ。
何だよ。人の顔じっと見て?

大神宮様の中は、触ってないでしょうね?

え?さわっちゃいないよ。なんもしないよ。
何かさっきから、おかしなこと言ってるね?
何か大事なものでも、入っているのかい?

大きなお世話ですよ。
大神宮様。大神宮様。開けますよ〜。
・・・。
あっ!あった!あった!!
松の百十番!
頭!ありがとう存じます。
ありがとう存じます・・・。

おいおい、どうしたんだい今度は?
ペコペコ頭下げ出して?
えっ?それが?
千両富!!
そうかい。道理でさっきから様子が変だと思ったら。
でも、よかったな久さん。
お前さんは芸人だけど、根は真面目だ。
真面目な人には、神宿るってぇが本当だな。
それで、その千両どうするんだい?

これも大神宮様のおかげ。
この千両で方々にお払い(お祓い)をいたします。



お粗末さまでした。

落語 〜富久〜

富久 その3

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おいおい、またどっかで半鐘が鳴ってや、しないかい?
今夜は火事が多いねえ。
おい、誰かちょっと見てきてくれないか?
あっ、定吉。
誰かが櫓に登ってるだろうから、どちらの方向か聞いてきておくれ。
年の瀬だってぇのに、こう火事で焼け出されちゃ
お気の毒だ。
おお、定吉。どちらの方角だい?
浅草?
そうかい。あちらの方には、うちのお得意は、どちらもなかったはずだが・・・。
浅草はどこらへんだい?
えっ?鳥越。
鳥越には、無かったはずだが。え〜と、鳥越・・・。
鳥越・・・。あっ!!あったよ。
奥で寝てる、久兵衛は、確か浅草阿倍川町。
ちょいと、定吉。
急いで久兵衛を起こしておくれ。

ちょいと!久さん!久さん!!

・・・へい、へい。頂戴いたします。

何を寝ぼけてるんです?火事ですよ!

火事?火事は、牛込神楽坂・・・。

寝ぼけてないで、起きて下さいよ。旦那様がお呼びですよ!

えっ!どうも御機嫌よろしゅう・・・。
あれ?定吉さんじゃありませんか?

旦那様がお呼びですよ!

旦那が。お呼び?
かしこまりましたよ。では、早速に。
えへへ、どうも旦那。お呼びだそうで・・・。

おお、久兵衛。
大変だよ、火事だよ。
今度は、浅草鳥越だそうだ。
たしかお前の長屋は阿部川町だったよな?急いで行っておいで。

えっ!
それでは、行ってまいります!

お待ち、お待ち。
いいかい、久兵衛。
もし、万一焼けちまった時は、よそへ行っちゃいけないよ。
お前ひとり食わせる位、どうってことないんだ。
必ず家へ戻って来るんだよ。
いいね!!

はい、ありがとう存じます。
それでは、行ってまいります。



『浅草 鳥越神社 付近』



おい、どいてくれよ!どいてくれよ!

おい!久さんじゃないか。
どこ行くんだい?

あっ!頭!
へえ、長屋へ。

ダメだよ。お前さんとこ焼けちまって跡形もないよ。

えっ!火元はどちらなんでございます?

火元は、裏の糊屋のババアんとこだよ。

あの、糊屋のババアが火元?
どうも、イケスカないババアだと思ったら
火まで出しやがって。

とにかくここにいちゃ危険だよ。
逃げなくちゃいけないよ!

ありがとう存じます!



『芝 田丸屋』



旦那・・・。
ただいま戻りました・・・。

おお、久兵衛。
どうだった?えっ?ダメだったのかい。
そうかい。力落とすんじゃないよ。
お前ねぇ、心配する事はないよ。
私が面倒みるから。
ずっと、うちにいていいんだからね。

ありがとう存じます・・・。
旦那・・・、よろしくお頼もうします・・・。



久兵衛さん、家財道具すべて焼けちまって
田丸屋の居候になります。
火事の一件以来、すっかり元気をなくしちまった、久兵衛さん。
見かねた旦那が、ちょっと外の空気でも吸ったほうがいいだろうと、
深川まで、ちょっとした用事を言いつけます。



『深川 富岡八幡宮』



なんだい?今日は随分と人が出てるなぁ。
何だろうな?聞いてみようかな。
どうも、すいません。
随分と大勢、人が出てるようですが、今日はお祭りか何かで?

え?こんな寒い時期に祭りなんかやんないよ。
今日はね、ここでね、富があるんだよ。
今回は千両富だから、こんだけの人が出てるんだよ。

そうでしたか。
ありがとう存じます・・・。
そうか、富ねぇ。うん?そう言えば先だって、
文さんから富くじ買ったなぁ。
「松の百十番。」
冷やかしに行ってみるか。


さて、久兵衛さん。
境内へ入っていきます。
つづく。

富久 その2

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久兵衛さん!久兵衛さん!!

あい・・・?
ダメです・・・。
もう呑めません・・・。

おい!久兵衛さん!!起きとくれよ!!

はい??
なんだ、夢か・・・。
誰だろうね、こんな時間に・・・。
はい、はい。いま開けますよ。

おおっ、久兵衛さん。

誰かと思えば、向かいの熊さんじゃありませんか。
こんな夜分にどうしたんです?

大変だよ!火事だよ!!

えっ!火事!!
そりゃ、大変だ!!

おいおい、そんなところで、フン詰まりのチンみたいに
グルグル廻ってても、しょうがないじゃないか。
いいかい?火事はここじゃないんだよ。

えっ!ここじゃないんですか?
な〜んだ。

な〜んだじゃないよ。
たしかお前さん、芝にいつも贔屓にしてもらっている、確か田丸屋さんの旦那がいて、
先日、その田丸屋さんを、酒でしくじったって落ちこんでいたじゃないか。え〜?
どうやら、その芝で火事が起きてるみたいなんだよ。
今からいって、旦那が心配でやって飛んできましたって言えば、
出入り止めが許されて、また贔屓にしてもらえるかもしれないよ。
早くいっておいで。

あっ、ありがとうございます!!
さっ、早速行って参ります。


『芝 田丸屋』


どうも旦那!!
ご騒々しいこってございます!
旦那!!

うん?誰だい?
おや??久兵衛じゃないか!
おまえ!どうして??

阿部川町から駆けつけてまいりました。
上がれた義理じゃありませんが、ひとつ働かせてください!

嬉しい奴だな、お前は。
いや〜、よく来てくれた。
よし、今までのことは許してやる。
明日っから、出入りをしろよ!

ありがとうございます!
それが、こっちのねらいだ・・・。

何だい?

いえいえ、こっちのことでございます。
こうなったら、アッシね一生懸命働かせていただきます。
あ〜っ!その葛籠(つづら)、それ私が背負わせていただきますよ。
大丈夫、大丈夫でございますよ。
運び出させていただきますからね。
何を、おっしゃいます。
芸人をしておりましても、何でございます、
こういうときは、力が出るものでございます。

いいんだ、いいんだ、お前はな、無理に働くことは無いよ。
芸人なんだから、なまじ怪我をしたら大変だ。
邪魔にならないように、脇へ寄って・・・。

何をおっしゃいます、旦那。
なんてったって、この葛籠がね、私に背負って下さいって
そう言ってますからね。
大丈夫、大丈夫ですよ。
これだけじゃなんですから、そこにある火鉢。
それも乗せちゃってくださいよ。ありがとうございます。
それと、そこにあるコテとかヒョウタンとか、それも
乗せちゃって、中に突っ込んじゃってくださいよ。
それじゃ、参りますよ。
何をおっしゃいます。お家の大事と聞いたからには、
思わぬ力が・・・。
う〜ん・・・・!!!
はあ、はあ、はあ・・・。
ちょっと、乗せすぎたな・・・・。
すいません、ヒョウタン降ろしてヒョウタン。

ヒョウタン降ろしたって、大して変わらないんじゃないかい?

何をおしゃる、なにを?
こういうもんは、気のもんです。
ええ。何か1つ降りたなって思うと、これが不思議に
ひょいと、上がるもんなんですよ。
降ろしましたか?降ろしたらいってくださいよ。
こっちはわかりませんからね。
それでは、軽くなったところで・・・。
よっ・・・!!
う〜〜ん・・・!!
はあ、はあ、はあ・・・。
ちょいと、コテを降ろしてもらえませんかね?
おろしました?どうも、お手数をおかけしまして・・・。
う〜〜ん・・・!!
はあ、はあ、はあ・・・。
ダメだなこりゃ。
すいません、火鉢を降ろして・・・。

なんだよ。何にもなりゃしない・・・。

おかしいなあ?
誰か?押さえつけてやしませんか?
悪いシャレですよ。押さえつけちゃいけませんよ・・・。
う〜〜ん・・・!!
はあ、はあ、はあ・・・。
う〜〜ん・・・!!
う〜〜ん・・・!!
はあ、はあ、はあ・・・。
ダメだぁ〜。
あの〜、すいません。
ちょっと、その蓋を開けて葛籠の中の物を出して・・・。

おいおい、何にもなりゃしないよう。
何をやってんだい。
あっ!はい、はい。
えっ!なんです?
そ〜うですか?
湿った(消火した)?
あ〜良かった、湿りましたか。
いや〜よろしゅうございました。
お互いさまに、どうもおめでとうございます。
わざわざ、ありがとう存じます。
おいおい、火事が湿ったそうだよ。
頭、もう運び出すことはないよ。火事が湿ったてさ。

おい、久兵衛!
お前そこで何をやってんだい?
火事は消えたよ。

えっ!あ〜よかった・・・。
あ〜くたびれた。

何を言ってんだい。何にもしちゃいないじゃないか。
あっ、どうも。早々と、ありがとう存じます。
よろしゅうございましたな。
ありがとう存じます。後ほど、こちらから御挨拶に伺います。
あ〜、これはこれは、どうも。
いいあんばいに風が変わりましてな、ありがとう存じます。
お宅へよろしくどうぞ。
おお、久兵衛。
お前、そっちに居ないでこっちに来てな、
ああやって、お見舞いにいていただく方がおいでになるから
お前はここで、帳面の係だ。
あとで、お礼に伺わなければならないから、
お前は顔が広いからな。落ち度のないようにな。帳面をつけておくれよ。

ええ、よろしゅうございます。
ええ、わかりました。
それじゃ、私。ここに陣取らせていただきまして。
私は、何でございますよ。私は、力より筆でございますから。
ひとつ、筆でもって、お手伝いをさせていただきますよ。
あっ、ありがとう存じます。
いいあんばいで・・・。ありがとう存じます。
え〜、今のかたは?町内の、八百定さん。
前にいらっしゃった方は?岡元屋さんに和泉屋さん。そうですか。
あの・・・、旦那、御本家から、ちょうだい物でございましてな。
お重膳を2つと、酒を2本ちょうだい致しました。

それじゃあ、そっちへやっときな。

酒の方なんでございますがね、かたっぽは、冷やなんですが、
かたっぽは、どうやらお燗をしてまいったようなんですが・・・。

だから、そっちへやっときな。

このお燗をした方なんですが、どうも冷めちまうと
せっかくのものが、味が落ちちまいますが・・・。
それと、私、ちょっと喉が渇いておりまして・・・。

しょうがないね、お前は。
おまえは、酒で、しくじってんだぞ。
呑むなじゃないがな、呑むなじゃないんだが、
気を付けて呑みなさい。

わかっております。
ちゃんと、心得ております。
ちょうだい出来た義理じゃないんですが
駆けつけてきた時は、ポッポッとしてたんですが
今頃になって急に冷えてきましたんで。
え〜、お清さん。
湯呑茶碗を。あっ、どうもありがとう存じます。
こういうのは、湯呑に限りますからね。
では、私がまず、その、味見を・・・。
失礼をして、頂戴をいたします。
・・・・ぷはぁ。
いや〜、旨いなあ。
ええ、ええ。今日ですか?
そうなんでございますよ。私がちょうど、うとうとってしたときに
半鐘が鳴ったもんでね、火元は?って聞くと芝だっていうもんですから、
田丸屋さんの旦那のところだ!って思いましてね。
慌てて旦那のお店まで駈け出してきたんですよ。
そうしましたら、お出入りも許されましてねぇ〜。
どうも、ありがたい火事で・・・。

おいおい、ダメだよ。火事を有難がっちゃ。
それとな、久兵衛。
今日はな、もういいから。あとは、うちのもんにやらせるから・・・。

何を言ってるんですよ。旦那。
アッシも・・・。

おいおい、そんなにフラフラしてたんじゃ危ないじゃないか。
お前はな、先に奥に行って休みな。
今日は、もういいから。

そうですか?それじゃ、お言葉に甘えまして。
お先に失礼をいたします。



久兵衛さん、疲れで酔いがまわり寝ちまいます。
しばらくすると、またどこからか半鐘の音が・・・。
つづく。

富久 その1

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【はじめに】

主人公の久兵衛さん。
腕のいい芸人で、座持ちもいいと評判なのですが、
酒癖が悪いのが、たまにキズ。
酔っては、あちら、こちらのお座敷で、贔屓の旦那を怒らせてしまい、
出入り止めを喰らってしまい、とうとう贔屓の旦那がひとりもいなくなってしまいました。

久兵衛さんの職業は、太鼓持ちという芸人さんで、
別名を男芸者ともいい、贔屓の旦那さんについて、
お座敷遊びの盛り上げ役などを行う芸人さんです。

久兵衛さんの住んでいる浅草阿部川町は、現在の台東区元浅草
ちょうど、合羽橋道具街の近辺です。



おい、そこ行くの久さんじゃないか?

おや?文さんじゃありませんか?
どうしました?

見ての通りだよ。
人んちの軒下を借りてね、床店ってやつだよ。
富の札、売ってんだよ。

あなたがぁ?へえ〜。お店どうしました?

せがれに譲っちまってね。隠居の身だよ。
だけど、まあ遊んでるわけにもいかないんでね、
道楽がてら、こんなもの売ってるんだよ。
どうだい?買わないかい?

わたくしが?
けっこうでございますな。
でも、あなたいいですね。あなたこれ、柄ですよ。
富の札売るなんてな。第一この御顔が福々しいや。
福相だものねえ。なりもいいや、粋だもの。

おいおい、相変わらず世辞もんだな。
どうだい?運だめしによう。買ってみないか?

わたくしが?
え〜、そうですか、どうも。
え〜、どちらの富ですか?

深川の八幡さまの富でな、今回は大きいよ、大富が千両だ。
2番富が五百両だ。三百、二百、十といろいろある、どうだい?

千両ねえ・・・。夢のようですね、どうも。
それ確かに当たるんでしょう?

そりゃあ当たるよ、お上がやってるこったい。
ねえ、そりゃ、もらえるよ。

そうですか、それじゃあ、あの1枚いただきましょうか?

おっ、本当かい?大丈夫かい?

大丈夫ですよ、あなた。
何をおっしゃてるんですよ。
芸人、太鼓持ちをしてましてもね、古川、水絶えずってやつでしてね。
1分でござんしょ?わかってございますよ。
ちょいとお待ちください。
え〜と、確かに・・・、ここにね・・・。
1分・・・、1分・・・。
あっ、これだ。
大事にしてた1分ですよ。
とっときの1分なんです。
親とも兄弟とも替え難い1分なんですよ。

何言ってんだよ。お前。
未練なんじゃないかい?

未練ですよ、だってあなたこれ、
1分ってぇのは、大金ですからねぇ。
その代りね、文さん。あの、当たるやつお願いしますよ。

おいおい、私が突く訳じゃないんだよ。
こういうものは、運否天賦だよ。

そうは、おっしゃってもねえ、商売人なんですから、
商売人の勘ってものがあるでしょ?
こういう札が良く当たるって、あるんじゃないですか?

うまいこと言ったなぁ。おい。
いやいや、実はあるには、あるんだよ。
なんなら私が1枚もらっておいても、いいなあってぇのがね、
大変気になってる、別にしてあるんだ。
え〜と・・・。
これだ、これだ。
「松の百十番」
こういう、素気ないような、すうっとした番号ってぇのは、
案外出るもんだよ。
それじゃ、これお前さんに売っちゃおうか?

えっ?さようですか?
どうも、ありがとう存じます。
なるほどねえ、札が輝いてみえますねえ。
「松の百十番」と。
それじゃ、これ千両当たりますな?

わからないよ・・・。

わからないって、あなた。
当たるんなら当たるって言ってくださいよ。
当たらないなら、お前さんが立て替える・・・。

おいおい何を言ってるだい。そんな訳にいくかな?
くれぐれも札、無くさないように。いいかい。
こっちにも点けとくからね。
わかったね。

ありがとう存じます。
わたくしね、これから2,3、寄るところがございますから、
またどこかでお目にかかります。ごめんください。



やっこさん、家へ帰って参りますと、大神宮さまのお宮の中へ
この富の札を入れます。
近所の酒屋でもって、一升借りてくるってぇと、まずは御神酒をあげます。
そして、お下がりってぇんで、これを茶碗酒でいただいちまいます。
そして、たちまち一升空けちまいます。
上機嫌でございます。



え〜、お大神宮様。
そういう訳でございましてね、ご相伴にあずかりましたら
いい心持ちになりまして、え〜、くどいようですがね、
是非とも私にね、運を授けていただきたい。
その・・・、アッシは何ですよ。千両とはいいません。
そんな、ずうずうしい事はいいません。
ごく控えめな人間でございます。
ご〜く控えめに・・・。
五百両・・・。
二番富をね、授けていただきたい。
アッシ、五百両当たりましたらね。
芸人やめます。
太鼓持ち辞めちゃってね、堅気になろうと。
表通りのね、小間物屋がね品物がそっくりついて二百三十両。
アッシはね、この・・・、三十両を値切りましてね、
値切った三十両でね。暮れですからね、
アッシも方々に借金がありますから、これをきれいサッパリと
払いましてね。その残りで、お宮を立派に致しますんで。
え〜、なんとかひとつ、運を授けていただきまして・・・
ZZZ・・・。



奴さん、ひとりもんですから、そのまま寝込んじまいます。
夜中に遠くから半鐘の鳴る音で目を覚ましますが・・・。
ここで事件が勃発します。
次回へ、つづく。

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