猫瓶

8/20本日をもって、休止とさせていただきます<(_ _)> が、今日8/24みたいにうpすることも^^

開栓

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2006年6月開始〜11月までの分の連載ものです。
(単発の書庫の作品も含まれていたりします)
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紗英が突っかかる。

綾は紗英とその日遅くまで話し合った。
「歌詞に乗せて、コードを散らせていけばメロディーができるんでしょ。」
綾は歌づくりの認識を紗英にぶつけてみた。
「だから詞がなきゃ歌にならないんじゃん。」
紗英はそんな綾に頷きながら言い返す。
「わかるけど・・・。そういう説明しなくても、無意識にメロディーって
出て来るもんじゃない?」
紗英の言い分は、音楽に詞はいらない、ということだった。
詞を挟むと、心が理性にかけられて、素直な表現ができなくなるという。
「吉崎さんは詞に捕われる癖のせいで、いつも自分の気持ちを音にしきれてないんだよ。」
綾は紗英の厳しい言葉の真意を計れずに、戸惑った。
「三浦さんさぁ、さっきギター断わったの、まだ気にしてたりする?」
紗英の顔が呆れて、話題をそらすように壁の時計を見る。
「もう遅いね・・・。寝に行っていい?」

試してる?

夜の9時ごろ、紗英が綾の家に来る。
明日から学園祭で休講なので、綾の家に泊まりに来たようだった。
紗英は暖かい床に座って低いテーブルを前にする。
「床暖房入るんだ。吉崎さんとこ、いいね。」
綾は、くつろいでる紗英に飲み物を出す。
「三浦さん、夕飯まだ?まだだったら軽く作るよ。」
「いいよ、夜は外で食べないようにしてるから。大丈夫だよ心配しなくて。」
紗英が綾を見上げた。
「じゃ、分かった。」綾は紗英の横に来て座った。
「吉崎さんさ、今日大学の帰りに別れてからどうしてたの?」
紗英の横顔が綾の目に映る。
「うん。プライベートの用事があって。三浦さんは?」
紗英の顔は横を向いたままだった。
「ギター、うまくできるようになった?」
紗英は綾の質問には答えないで、いきなり話題を変えてきた。
彼女の顔が振り向いて、いたずらっぽい笑顔をみせる。
綾はちょっと不審になりながらギターの進み具合を話した。
「・・・もうそれくらい弾けるんだ。早いじゃん。上達するの。」
「三浦さんが、初めにギターを教えてくれたおかげだよ。あの時の楽しそうな三浦さんの姿が
ギターを親しめるものにしてくれてる気がする。」
紗英は綾の言葉が本心かどうか確かめるためにきく。
「私のギター、今聞きたい?」
綾は少し戸惑った顔になった。
「今?今はいいよ・・・。」
「なんで?この前音しぼって弾いたじゃん。ここ、防音なってるんでしょ。」
紗英の目が、一瞬刺すような視線になる。
綾は思わず顔をそむけてしまった。
・・・このひと、なに。私のこと、なんか試してんの?・・・

楽譜が教えた。

綾は部屋で座って考え事をしていた。
今日スタジオで、帰りがけにコウから言われたことだった。
彼にとって、ギターをやる仲間が増えるのはいいことだけど、綾がコウのために
弾くなら嬉しくないということだった。
綾はふと目を上げて、本棚の楽譜を見る。前にコウとコラボするために作った歌だった。
コウは綾の歌声を聞いてるのが好きだと言ってた。歌声の運ぶメロディーに、自分はギター
で答える。そんなかかわり方がいいということだった。
綾は立って本棚のとこに歩いて行くと、楽譜を手に取ってみた。
夏頃の、素敵なコラボの思い出がよみがえってきた。

そうだった。コウは私の歌声を認めてくれた初めての人だったんだ。

綾は今の自分を少し後悔していた。

コウの気持ち、ほんとは考えてなかった・・・ 相手の気持ち、音楽する心に大切なんだ。

綾の楽器

綾がスタジオに来て、いつもの部屋にコウと入る。
コウの目がギターを手にする綾を捉えていた。
彼女のはにかむ笑顔のあとに、演奏が始まる。
コウは椅子にかけて前で弾く彼女を見つめる。
綾は左手の動きにまだ余裕がない感じだったが、それでも短い間にかなり弾けるようになっていた。
コウはふと、歌わない綾は初めてなのに気が付いた。
綾のせつなげな高い歌声は則ち彼女の音、そんなイメージがコウの中にできあがっていた。
コウにとって綾の歌は、その詞よりも声が大事だった。
コウの耳には、綾の歌声がいつも1つの楽器として響いていた。
そんな彼女が歌わずにギターを弾いて表現してる。コウには正直、ギターだと、急に自分の内面に立ち
入られたような違和感が起こって、素直になれなかった。
綾の表情はきちんと演奏することで頭がいっぱいという感じで、それは無理もないことだけど、コウは
音を楽しんでる彼女が見たいと思った。
綾が演奏を終わる。
達成感に浸る彼女の目に、表情がぱっとしないコウが映っていた。

コウをめぐって

紗英はダイニングに来て1人食事につく。母はパートからまだ帰ってなかった。
1人で食べてると自然にいろんなことが思い出される。
・・・こまちゃん、そういえば言ってたなぁ。友達なめるなって。なめてるんじゃないんだけど。
これは吉崎さんへの思いやりだよ。彼氏のコウのこと、ほんとは色々知ってるんだけど黙ってて
あげてる。
コウはこの前、ギターのセッションで楽しそうだったな。高校の時はレベルが違くていつも彼の
世話になってた。でもコウは優しかったな・・。
コウとは今も音で分かり合える。吉崎さんは歌でコウとつながってるつもりみたいだけど。

食器を片付けて部屋に行く。
紗英は椅子にかけて、好きな曲を携帯音楽プレーヤーで聞きながら、立てかけてあるエレキを
なんとなく見た。
・・・音は詞みたいにごまかせないんだよ。・・・

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