猫瓶

8/20本日をもって、休止とさせていただきます<(_ _)> が、今日8/24みたいにうpすることも^^

瓶ものがたり(降順)

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つばさあるく (完)

つばさは地面に座り込んで、口に広がる涙の味に茫然としていた。
彼の目に涙があふれて頬を伝い出す。
すると、今まで心がブロックしていたすべての感覚が完全に意識できるようになった。
途端につばさは身震いし出した。
意識にのぼるすべての感覚が悪夢だった。
つばさは心に、自分がしていた最後の封印が切られるのを感じながら、後悔に押し潰されていった。彼は自分のしてきたことを振り返って、寒気が止まらなくなった。


どれくらい時間が過ぎたのか。
銃声がもうしなくなって、つばさの横を仲間達が話しながら通りがかった。
「おい、あれ見ろよ。」
「おぅ。あれヤバいよ・・。目が、いっちゃってるよ。」
「どうする?オレらロボットの補修があるから連れてけないだろ、なぁ。」
「あぁ。じゃあ、救護班に連絡入れておこう。」
1人がつばさに近づいて、携帯で彼のID票をスキャンした。
「じゃ、行くぞ。」
「こんなやつ見たの今日でもう何度目だ?・・・俺もなるのかと思うと恐いよ。」
座り込んだまま動かないつばさを置いて、仲間達が去って行った。


つばさの心に虚しさと罪悪感があふれて堰を切ったようになった。
そんなとき心にあの老人の声がした。

・・・私が周りから賢者ともてはやされてるわけを教えてやろう。
それは、私が「現実」だからだ。
お前は自分で小瓶を開けて、大事な意識を取り返せた。
次にお前がやることは、私を通って行くことだ。
私を通らなければ、誰だって生きていくことはできない。
私を通って、お前は気持ちが求めている人のところに帰れるよう、準備すればいい。
お前に何かがあっても、求める気持ちは残って伝わるものだから、まずは現実を通って
生きてゆけ。

つばさは老人の言葉に、無性にむかついてきて怒鳴った。
ジジイ!何様のつもりだよ!!

その瞬間、つばさは、はっと我に返って、周りを見回しながら小瓶を手にして立った。ちょうど
そこに、救護班の車が現われた。
つばさは衛生兵に連れられて車の中に入っていった。

つばさの目にはっきりと景色が表われた。
廃虚の中を、前方に軍用ロボットが走る。ある英語圏の国のロボットで、つばさはその後ろに
ついて走っていた。
腕には銃を抱えて、飛び交う変な英語を聞きながら死んだような目でひたすら走り続ける。
心には不思議と何も感じなかった。
ずっしりとした銃の感触も、どこかで聞こえてる叫び声も、異臭も、口に込み上がって来る
胃液の味も、ほんとうは全部してるはずなのに心が感じさせなかった。
目の前を行く軍用ロボットがセンサーに映る敵兵を淡々と撃ち殺して進む。つばさは聞こえてくる
指示に耳を澄ませながら、後方からロボットを援護して進む。
つばさが走りながら銃を向けて、壊れた壁から狙う敵兵を撃つ。倒れた体を横目に過ぎて、次の兵を
撃つ。つばさはそれをくり返した。
つばさの心で、ふと聞き覚えのある女の子の声がした。


つばさは悪くないよ。つばさは悪い夢を見てるんだ。つばさは悪くないよ。


つばさは走りながら、心に浮かぶ声をわらって呟いた。
"Shut your silly mouth, hey chicken chick!"
つばさの心が鈍磨していった。

彼の前に、小瓶を手に持った民間人が倒れた。
たぶん瓶を危険物と判断されて軍用ロボットに撃たれたのだろう。
つばさの目に、握られた小瓶が映る。
彼は思わず倒れた男のところに寄って行って小瓶に触れた。

見知らぬ男は無言で小瓶をつばさに渡す。
男はまるで托すようにつばさの手を握るとそのまま息絶えた。
男の手はつばさを離れたが、その感触はつばさの心にはっきりと残った。

つばさは小瓶を近くに寄せて見た。

小瓶には、色とりどりの飴が入っていて、かわいいリボンがかけてあった。

・・・ 小さい娘へのプレゼントか何かか・・・。

つばさの視界が急にスロー再生のようになって、瓶の葢が自分の手の中でゆっくりと開けられていく
のが見える。
葢がはずれて、瓶の中の飴が見えた。
涙のような形のものもあるし、ハート型をしたものもある。
つばさは我を忘れて、すぐ目についた涙型の透明な飴をつまむと、口の方に持っていった。
飴のやさしい匂いがしてる。
つばさが飴を口に入れると、意外にしょっぱい味がした。

これって、涙の味じゃん。

そうだ涙の味・・

つばさゆらぐ

つばさがかりんと話していると、一瞬、脳裡に見覚えのある景色がよぎった。
でもそれが何なのか思い出せない。
薄暗い光の中に座るかりんが、そんなつばさの様子を見て心配そうに声をかける。
「つばさ、つばさ、こっちを見て。なにか見えてもそっちに気を取られないようにして。もう
悪い夢に戻ったらダメだよ。」
つばさが思い直したような顔でかりんを見る。
「分かったよ。」
かりんがつばさを見つめた。
「つばさ。気を紛らわすようになんか話そうよ。」
「えっ、でも何を。」
「何でもいいじゃん。・・・じゃあ、そうだな、つばさが私と初めて遭ったときのこと。
おぼえてる?」
かりんの目が輝く。
つばさは半年前のことを思い出した。
心にちょっと甘い思いがした出来事だった。
「うん。おぼえてる。かりんがお店でバイトしてて、俺が何気なく雑貨を見てたんだ。そしたら
棚に小さな瓶があって、」
かりんがうれしそうに後を続けた。
「その小瓶のことを、つばさが通りがかった私に聞いたんだ。これ何の入れ物ですかって。」
つばさは心にその場面を描きながらかりんに頷いた。
「そうだったね。で、かりんはキャンディーを入れる瓶だって教えてくれたんだ。きれいな装飾の
付いたかわいい瓶だった。」
つばさの心が親切に教えてくれたかりんを思い描いた。
「つばさはなにげなく聞いただけだったんだよね。私、あの時ていねいに言いすぎたよ。」
かりんはつばさが楽しそうにしてるのを見て笑った。つばさも笑った。
「それからだよ。私、つばさとつきあい出したの。」
つばさは顔を上げて、それからのかりんとの思い出をいろいろ思い浮かべた。
彼女の思い出がつばさの心を温めた。つばさの心はキャンディーのように思い出に溶かされて、
甘く彼の体じゅうに広がっていった。
彼はかりんと顔を見合って、2人の思い出を重ねた。
かりんはつばさの心をしっかりつかんで、彼がどこかに気を取られないように守っていた。
つばさにはそのことが分かってなかった。ただ、かりんと話せてほんとに幸せな気分だった。
つばさがかりんと笑い合いながら、面白かったことを話していると、彼の脳裡に再びよぎる
ものがあった。
「heed and go,,,shoot, run and run and run! shoot,,,,run!」
つばさの体が号令のような響きとともに、さっきより鮮明にイメージを体感してる。よぎった
イメージの中で、彼は勢いに任せてどこかの廃虚をひたすら走ってる感じがした、腕に何か
ずっしりとしたものを抱えながら・・・。


つばさ、夢に戻っちゃダメ、だめだってば!

つばさまどう

かりんは、つばさに向かって心配そうな目をしながら、気づかうように言った。
「つばさは悪くないよ。つばさは、そう、悪い夢から覚めたんだよ。今は私を見て。
悪い夢には戻らないで。」
かりんの目に涙があふれた。
つばさは、彼女の近くに寄って手を取りながら尋ねた。
「なんのこと?分かるように言ってよ。俺は今、とんでもない夢の中にいるんだ。
夢から覚めたんじゃないよ。その逆だよ。だってこうして・・・。」
つばさが言いかけて、かりんの手の感触が自分に感じられるのに気付く。
「だって・・・あれ、感触がある。」
驚いて顔を上げたつばさに、かりんのやさしい匂いがした。
「俺は今、夢の中じゃないのか。」
かりんの腕が彼の首に回って、つばさの頬がかりんの頬に合う。かりんの体が涙に
むせんで小さく震えているのが伝わってくる。
「なんだよ、かりん・・・。」
つばさの声が声にならない。かりんの涙が頬の温もりとともにつばさに伝わって、
顔を動かしたつばさの唇にかりんの涙がにじむ。涙の味がする。

俺、夢なんか見てないんじゃん。何だよ、さっきのジジイっ!

つばさの顔が、かりんから離れて彼女と向き合った。
「かりん、これは夢じゃないんだって分かったよ。」
かりんは涙を手でふきながら、つばさを慰めるように言った。
「そうだよ。つばさは悪い夢を見てて今覚めたんだ。つばさが悪いんじゃないよ。」
つばさは彼女の言葉にうなずきながら、さっきと変わらない場所で、薄暗い照明のなかに
かりんを見ていることを不審に思った。
「かりん、俺、何だかまだよく分かんないけど・・、お願いだからこのままでいて。」
かりんは表情を和らげて、つばさにうなずいた。

つばささまよう

つばさがふと目を開くと1人の老人がぼんやりと見えた。
「おじいさん、誰?」
老人は静かにこっちを見ながら気の良さそうな笑顔になった。
「周りから賢者ともてはやされてる者だ。」
つばさの目がだんだんと慣れてきて老人の姿や周囲の様子がはっきりしてきた。
老人はゆったりとした服をまとっていて、照明の薄暗い中に座っていた。
周りは見たことがない場所で、音がしてなかった。
つばさは夢の中にいるのを実感して、心に夢から覚めろと念じた。
老人はそんな彼を見通しているかのような口ぶりで言った。
「焦ったところで所詮、無理だ。今はここにお前の意識を閉じ込めてあるのだから。」
老人はそう言いながら手のひらに乗せた小さなキャンディーの瓶を見せた。
つばさはそんな老人の態度にむかついて、さっと上半身を起こすと瓶に手を伸ばそうとした。
「マジかよ。(これも夢なんだ、)返せよ、その中のもの!」
老人はあいかわらず小さな瓶を見せながら笑っているが、もう少しという距離でつばさの手は
届かない。
「この中のものは今返さない方がいいだろう。このタイミングにお前の意識を返せば、お前は
きっと後悔する。」
老人は手を引っ込めた。つばさは夢の中のことだからと自分に言い聞かせながら、老人への怒りが
治まらずにスクっと立ち上がった。
「早く返せよ!瓶のもの。」
老人の手の瓶につばさの指が触れた。感触がなくてやっぱり夢にいるのが分かる。
「と、取れねぇ。」
つばさが焦って老人を見ると、いたずらっぽい笑顔になって落ち着いたトーンで話した。
「無理だと分かっていてなんで取ろうとする?お前は夢にいるから手に感触が伝わらない。音も
周囲の音がしないのに気付いてる。そうだ、お前にこれをやろう。」
老人は瓶の葢を開けて、きれいな飴を1つ手に出した。そのまま立ち上がって、つばさの鼻先に
飴をかざす。
「匂うか。匂うまい。」
つばさに匂いの感覚はなかった。
老人が飴を摘んでつばさの口にくわえさせた。
「味わえるか。味わえまい。」
つばさは老人の言うように味覚がなかった。
唇に触れたはずの飴は感覚にすらなかった。
つばさは心に変な夢から覚めろと必死で念じながら老人をきっと睨んだ。
老人は低く笑いながら、元の場所に座った。
「今はここにおれ。お前の意識はきちんとこの瓶にあるから大丈夫だ。今は夢から覚めるな。
これは忠告じゃ。」
つばさは心に念じることに疲れて、くずれるように座った。
老人はそんなつばさを見て微笑みながら、思いついたような顔で言った。
「お前がここで退屈するのはかわいそうだから、お前の会いたい人に変わってやろう。さぁ、
念じてみるがよい。」
つばさは不快そうに舌打ちしながらも、老人の勧めに何となく乗って、彼女のことを思い浮かべてみた。
・・ こんなわけの分かんないジジイなんかより、かりんといた方がいい。・・
つばさの気持ちが素直に心を打つと、目の前にいつの間にか、かりんが座っていた。
「・・・かりん。」
「つばさ。私ここにいるよ。だいじょうぶだから。」

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