猫瓶

8/20本日をもって、休止とさせていただきます<(_ _)> が、今日8/24みたいにうpすることも^^

サンタと助手がやってくる

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サンタがソリで泣き声を上げているのを聞きつけて、近くに転がっていたサーフボードが慌てて
トナカイ達の姿に戻る。彼らは鳴きながら心配してサンタの周りに寄って来た。
トナカイに頭を舐められて、サンタは顔を上げる。自分のほうを見下ろしているつぶらな目が並んでいた。
「おお、心配して来てくれたんじゃな。優しい子らじゃのぅ。・・・わしはな、あのかたに意見して
おったんじゃ。クリスマスイブだというのに気付きもせんで。・・本当にわしは子供を独りよがりに
見ていた。自分の役目がどんなものなのか、きちんと考えたことがなかった。・・・だが、そんなわし
にも、思えば優しいお前達がついててくれる。・・子供の笑顔と、まごころと、近過ぎて見落していた愛、
わしは今日のクリスマスイブに、あのかたを助手に持ったことで、自分を支えるその3つに気付かされた。
・・・さぁ、お前達、おかげで元気が出てきたわい!!そろそろ冬の北半球に、戻るとするか!?」
トナカイ達はそんなサンタに、赤の上下と頭巾、ブーツをくわえて前に置いてあげる。
まもなく、サンタのソリはたくさんの子供達の笑顔を夢見て、北の方角に一気に加速して消えて行った。

少年が行ってしばらくすると、イェシュアのほうに声をかけながら愉快そうにサンタが戻って来る。
「イェシュア!おお、おるおる。気持ち良かったぞ。サーフィンは。効率も良いし。もう、ほとんど
の地域を回ってしまった。後は北半球の残りを回って、南半球の高緯度地方でおしまいじゃ。」
サンタはサーフボードをさすりながら満足そうにイェシュアを見た。
しかしサンタは、イェシュアの手に渡しておいた携帯ゲーム機がないのに気付く。
「なんじゃ、ゲーム機はどうしたんじゃ?・・・こんな形のはどうしたんじゃ?」
サンタはしきりに手でゲーム機をかたどりながら、イェシュアにくり返し尋ねた。
イェシュアは、サンタの言いたいことはすぐ分かったが、ゲーム機がない今は、もう
訳しようがなかった。
「・・・、まぁいいわい。ソリのどこかにまだ同じようなゲーム機があったはずだから。」
サンタはイェシュアを疑いたくなかったので、ソリによいしょっと乗り込むと、隅の方を
がたがた探して、同じソフトが入ったゲーム機を見つけ出した。
「わしは君に変な疑いをかけたくないからね。さてと。」
サンタは自分が気がかりな点をゲーム機で翻訳して、イェシュアに渡す。
イェシュアはすぐに返事を翻訳してサンタに見せた。
「なになに、・・・『あれは不憫な物売りの子にあげました。あなたが留守のときに来た子です。』」
サンタは表示を見ながらウーンと思わずうなってしまった。
「うーん。・・・イェシュア、君のやったことは感心しない。その子は多分ゲーム機を金に替える
じゃろうが、・・・大人は不審に思って通報するかも知れんし、親は子の金を見付けて取りあげる
ことじゃろう。・・イェシュア。サンタのわしがこんなことを言うのもなんじゃが、物売りの子供が
来たとき、買えないなら追い払えば良かったのじゃ。君が与えたのは愛じゃなくて、無神経な
『試練』じゃよ!子供が可哀そうじゃ!!」
サンタは翻訳してイェシュアにゲーム機を突きつけた。サンタの表情は珍しく険しかった。
イェシュアはサンタの言い分を理解した。
理解した上で、ひどく寂しげな眼差しをサンタに投げかけた。彼の静かな抗議だった。
サンタは言葉を失って、半袖シャツにパンツといった格好のまま、力なくソリに座り込んだ。

それからほんの数分が過ぎて、サンタが顔をふと上げると、ついさっきまでいたはずのイェシュア
がいなくなっていた。
サンタが辺りを見回しても、彼の姿はない。それどころか人気(ひとけ)のようなものはまったく感じ
られなかった。確かにイェシュアは居たはずなのに・・・。
「おや!?」
サンタの前に、魚とぶどう酒が入った盃とパンが一つずつ置かれてあった。
「いつの間に、・・・うーむ。こっ、これは!」
サンタはみるみる涙がこみあげて来て、3つのものがぼやけて見えなくなった。
そしてサンタは嗚咽(おえつ)しながら、我を忘れて激しく泣き崩れた。

少年のカレイ

物売りの少年は、まだ10歳ぐらいだった。
イェシュアがソリに1人座って、物思いにふけってるのを、彼は歩きながら怪訝そうに見ていたが、
通りすがりに彼を呼んで、顔を自分に向けさせる。
「ねぇ、大将! そうそう、こっち見なよ。あのさ、この魚、2,500でどう。安いだろ?」
少年はじっと見つめるイェシュアにバケツから出したカレイを見せる。浜辺にできた潮だまりで
捕まえてきたものらしかった。
イェシュアは、なんとなく勘で状況が読めたが、携帯ゲーム機を通して確認してみることにする。
イェシュアが翻訳した結果を少年に見せると、自分の理解できる言語を見付けて、たどたどしく
読み上げ始める。
「このー、・・・この、さ? 魚・・・この魚、いくらで、か?・・・買う?・・あ、分かった・・・
この魚いくらで買う?って訊いたと思ってんだな、このおやじ。」
少年は字がやっと読める感じだった。
彼はがっくりした様子で一呼吸置いてから、イェシュアに大きな声で怒鳴った。
「外国の旦那!!米ドルだったらあるでしょう!・・・特別2ドルでいいよ。」
イェシュアは少年の言葉が理解できなかった。少年は、しきりに指を2本立てて詰め寄るように
迫って来る。しかしそんな身ぶりも、イェシュアにはまったく理解不能だった。
「旦那!ふざけちゃいけないよ、こっちが子供だと思って。ドルだよド・ル!、分かるだろ。
この指見て、そんでドル!」
少年の手に揺れるバケツの中で、カレイたちがぐるぐる泳ぎまくっている。
少年はかなり食い下がったが、さすがにもう無理だと諦めたようで、うつむいてとぼとぼ歩き
出した。
イェシュアはそんな少年を不憫に思って、自分がサンタから渡されていた携帯ゲーム機を、彼に
あげることにする。
少年は夢のようなゲーム機を手にすると、大喜びしてぴょんぴょん飛び跳ねた。
イェシュアはそんな彼に、翻訳の機能も見せて、使い方を実演する。
「へぇー、これすごいや。・・・でも俺は、このゲーム機を高く売って、生活の足しにするよ。
本当は、きちんと読み書きできるようになりたいんだけど。でも学校行く余裕がないし、他に
どうすりゃ勉強できるのかな。・・・まぁ、いいや。」
少年はやっと子供らしい笑顔になって、イェシュアに笑いかけた。
イェシュアはそんな彼の頭を黙って優しくなでた。

早く日が暮れる冬の北半球を大体済ませて、サンタのソリは南半球のある場所に着く。
サンタはコートを脱ぎ捨て、薄い半袖シャツにパッツンパッツンのパンツ姿になる。と同時に、
イェシュアが羽織ってたガウンをしまって、彼に選ばせたコットンの長衣と腰帯を渡した。
サンタはパレスティナ地方の民族服を着たイェシュアを見ると、納得したように深く頷く。
「イェシュア、君は中東系ユダヤ人だったようじゃな。・・・涼しいじゃろ、その服。わしは
ちょっと恥ずかしいが、この格好でいいよ。・・・さてと。わしはいつものように、夏の南半球で、
日が暮れるまでサーフィンを楽しみながら移動するから。
・・・イェシュア、君にこれの使い方を教えとくよ。ここ押せば自分の言葉が翻訳できるんじゃよ。
一応、渡しとくから。」
サンタは助手のイェシュアに携帯ゲーム機を渡すと、トナカイ達をサーフボードに化けさせて、
さっさと浜辺のほうに行ってしまった。
イェシュアはソリに座って、傾きかける陽を遠くに見ていた。
浜辺を望む丘には、辺りに家が見当たらなかった。
イェシュアが静かな波音に、故郷の大きな湖の画を重ねて物思いにふけっていると、物売りをして歩く
子供がこっちにやって来るのが見えた。

なるほど、サンタと手をつないで行動していると、彼から言われたように、イェシュアも身軽に
家々を跳んで行けるようになった。

2人は、とある田舎の家々を次々に巡って、あっという間にほとんどのプレゼントを配り終える。
そしてあと数軒というところで、いきなりイェシュアが急ぐサンタを引き止めた。
「なんじゃ、イェシュア。もうちょっとで終わるというのに。疲れたか?」
サンタが翻訳に便利な携帯ゲーム機を出そうとポケットをまさぐっていると、イェシュアが何か
言いながら、しきりにある方向をさしてサンタに見るよう促す。
「うん?・・・ほう、確かに子供が涙を流して窓を見ているが・・・。あの子の依頼はなかったよ。」
イェシュアはそんなサンタを無理やり引っ張って、子供のもとに行く。
「サンタ?」
いつの間にか、前にサンタ達が現れると、その男の子は涙を拭いて不審そうな顔になった。
「メリークリスマス!坊や。頼まれてなかったけど、君の悲しそうな顔が気になったというこの助手
に引っ張られて、来てしまったんじゃ。・・・悪いことしたね。ごめんね。」
男の子は、助手のイェシュアを見ながら話し出した。
「僕、今クリスマスなんて気分じゃないんだ。・・・あのね・・・。」
本当のところ、イェシュアには男の子の言葉が理解できなかったが、彼が聞き上手なためからか、
男の子は何もためらうことなしに、自分の悩みを打ち明けることが出来た。
そしてすっかり話してしまった男の子は、それだけで気が楽になったようだった。
イェシュアはそんな彼の手を優しく握りながら、静かにその場を離れた。余計なアドバイスを
されるよりも、男の子にはそうされるほうが嬉しかった。
サンタはほんの2、3分のことだったが、その間イェシュアの不思議な才能に感心しながら、静かに
2人を見守っていた。
男の子はサンタに振り向いて言う。
「サンタさん。この人と来てくれてありがとう。物をくれるよりずっと嬉しかったよ。」
男の子の笑顔がサンタの目に光って見えた。
サンタの心は、思わぬプレゼントをもらえた感じがした。

窓から手を振る子供をあとに、サンタと助手は残りの家を回って、ソリに戻って来た。
サンタはイェシュアにつぶやいた。
「わしは今まで子供にしてあげる一方だと思っておったんじゃが、イェシュア、君のお陰で
気付いたよ。実はわしこそ子供たちから笑顔をもらってるって。わしはサンタとして彼らの
笑顔に支えられてるんだって・・・。」
サンタの顔が柄にもないことを言ってしまったという感じで、ちょっと照れ笑いを浮かべる。
イェシュアはそんなサンタの肩を、ボンボンと軽く叩いて微笑んだ。

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