猫瓶

8/20本日をもって、休止とさせていただきます<(_ _)> が、今日8/24みたいにうpすることも^^

瀬渡り

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瀬渡り (了)

薗田の仲間の1人が、除夜の鐘にちなんで、ふと思い出したように呟いた。


  除夜の鐘って、

   108回鳴るうちの

    最後の1回だけは

    年が明けてから

   鳴らされるんだって。



「最後の1回で新しい年に 橋渡し されるんだな。」


薗田たちは、彼の言葉に何気なく顔を見合わせた。ほんの少し沈黙が流れて、また元のように、
楽しげにしゃべり出した。




   あと2分ぐらいで、新しい年になるところだった。







           ー了ー

その6

鈴木はあれからどうなったんだろうか。





鈴木のその後を知る者はないが、一つだけ確かなのは、彼のアパートにはまだ誰も帰って来てない、
ということだった。
アパートの周りは勿論、このあたりの地域全体にも何か異変が起こったようなところはなかった。
住宅街は静かで、しんしんと冷え込んでいた。夜空に雲はなく、聞こえて来る音といえば、
・・・どこかで鳴ってる除夜の鐘の音ぐらいだった。

その5

鈴木はすべての思考を停止させて、さっきのようにひたすら癒しに身を任せようとする。
流れは彼の気持ちに答えるかのように、同じ感触で彼の全身を包みながら、再び、抜けるような
爽快感を心にもたらしてくれる。彼の体は木の実のように、優しい流れにもてあそばれる。
鈴木は再び不安を感じなくなり、体を丸くして流れに安らぐ。
彼の理性を刺激していたものがなくなり、思考に付きまとっていた緊張が解けて、心の水面に
もう雫は落ちなくなる。
静まり返った水面。体を包みこむ緩やかな水流と癒し。
鈴木は植物のように、木の実のように、暗闇に白く描かれては消える小さな渦を幾つも見ながら、
大きな「流れ」に全身を委ねていた。


一方、

薗田は駅から続く参詣客の流れに混じって、仲間達とげらげら笑いながら、くだらない話をして歩く。
時間は11時45分すぎだろうか。深夜だし寒いわけだけど、参詣者の列に紛れてるとテンションが
上がって楽しい。
「今年もあと十数分じゃん。・・・あれ、なんか聞こえねぇ?」
薗田が仲間達と耳を澄ます。
単調な鐘の音が聞こえてくる。
「あれ、除夜の鐘。・・・」
「遠くの方だな。」
「うん。俺達が行く方じゃない。」
年の瀬を締めくくるように聞こえていた。

その4

鈴木が不安に駆られながら、ありったけの意識を詩に集中させる。
自分が置かれてる状況も分からないのに、どうしようかと戸惑う。
鈴木は流れに揺られ頭を抱えながら、心に自問してみる。
「っていうか、なんで俺こんな状態なの?」
すると心に浮かんでいた詩文が消えて、どこからか心音のような鼓動が聞こえ出した。

これ、何?意味分からねぇ。
鈴木は心に聞き返す。

心は暗く静止したままだった。

鈴木の不安が更に増し、より大きな雫ができて、心の水面に落ちる。
心は、広がる大きな波紋の波間に、返事を浮き立たせた。

一度生まれたとき 君を待ってた人がいただろう
暗闇に浮かんでいた君を
光の世界で望んでる人が居た
その人の刻む 命の音
君は再びこの瀬を渡り
君を待ってる人のとこへ 出て行きなさい

鈴木の不安は新たに理性を刺激し
心に浮かぶ不思議な詩を解釈しようと焦る

い、癒されない!さっきみたいに。
ほっといてくれないか、俺のことは。

その3

どれくらいの時間が経ったのだろうか。
鈴木の心は、まっさらになり、なんの心配も焦りも感じなかった。
状況を把握しようという気すら、起きて来なかった。

自分を取り巻くように流れている「もの」に、すべてを任せようとして、鈴木は立った姿勢から
流れに沿うように身を横たえてみる。
自分の視界がすーっと移動して、流れの「底」を捉えた。
漆黒の滑面に、小さな渦が白くできてはすぐに消えて行く。
鈴木は無意識に、流れの中で背を丸めた。両膝を抱えこむようにして、寒くもなく暑くもない
雄大な流れの中に身を置く。鈴木の体は大河に沈んで揺らぐ小さな木の実のように、どこまでも
流れに乗って行くかのようだった。


「・・・おっかしいなぁ。あいつ携帯つながらねぇ。」
薗田は仲間と店を出て、そろそろ初詣でに行こうとしているところだった。
11時8分か。うぅっ、寒ぃー。
薗田は鈴木を誘おうと思っていたが、きっと家に着くなり寝てしまったんだろうと思って諦める。
薗田たちは繁華街をぬって駅へと向かった。



・・・
どこまでも どこまでも
ころころ ころころ
小さな実
流されながら 瀬をさまよう

このままのほうが
いいかい?

流れに沿ってれば
もう心配も苦しみもない

だけど 君は
生まれなくちゃ

流れに逆らって
泳いで 河面に出て

この瀬を向こう岸に渡らなきゃ

苦しいだろうし 痛いだろうし 寒いだろうけど
それでも この瀬を渡って出なきゃ

君に光の世界を感じさせるのは
残念だけど、今回誰かの助けで出来ない

君はもう 一度生まれたんだ
今はだから 自分の力で
この瀬を渡って上がりなさい


鈴木の心に不快な詩が浮かんだ。詩は癒しの力でも消えなかった。

鈴木の心に不安の雫が落ちて 波紋を作り広がる

詩の文面が一層はっきりして揺れる

鈴木の不安が 理性を呼び覚ます

揺れる詩文を頭が理解しようとし出す

不安はますます強まって

理性の働きが 心の詩文を解釈しはじめる

まるで「不安」が「理性」のスイッチを入れたように

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