猫瓶

8/20本日をもって、休止とさせていただきます<(_ _)> が、今日8/24みたいにうpすることも^^

天使の奥義書(開示)

[ リスト | 詳細 ]

記事検索
検索

全3ページ

[1] [2] [3]

[ 次のページ ]

12

男と天使ラファエルの不可思議な問答は続いた。
「トマスのように触れなくて」
「二人は私だと信じた。」
「しかし、トビアと私がした旅を一人は知らないのですが?」
「二人は福音によって私だと信じた。」
「ですが、一人は聖伝に因りませんが?」
「二人は福音によって私だと信じた。」
「天使や聖人の守護をまったく知らない一人なのですが?」
「それでも二人は福音によって私だと信じた。」
「ラファエルよ」
「はい、主よ。」
「接ぎ木されたぶどうの枝は、新しく枝を広げながら育っていく。」
「はい、主よ。」
「だれもその枝たちを、1本だけ残して打ち払ったりはしない。」
「はい。主よ。」
「そんなことをすればぶどうの木は枯れ、実も結ばない。」
「はい、主よ。」
「ラファエルよ。お前がしようとしているのはまさにそのことだ。」
「おお、主よ。・・・このしもべを憐れんでください。」

気付くと男や天使の姿はもうそこになかった。
エレムが慌ててあたりを見回すと、ぐったりしてるサキの姿が目に留まる。
駆け寄って呼びかけるエレムに、サキの目がうっすらと開いた。
「死ぬかと思った・・・」「うん。」


その2

休耕地にヒレルがやってきた。
あたりはひっそりとして誰もいない。
強い残照の中を
数日前に見た立派なぶどうの台木を見に行く。
台木は・・・あれ、台木は・・・。
ここにあったんだが、、、
数日前、確かにこの場所で見たはずのあの台木が、すっかり無くなっていた。
ヒレルは夕日に顔を晒しながら目を細めていろいろなことを想像してみる。
たとえば、あの天使が・・・なにか事情があってわしの畑の恵みを取り上げたのかもしれない。
でなきゃ、時々見かけるノツリのあの若僧らが、わしのことをバカにしてあの台木を持ち去ったのか。
いずれにせよ、惜しいことをした。
あれで良いぶどうを収穫して、儲けられたものを・・・。
ヒレルは心の中で神に語りかけた。
「アドナイ。一体どうなさったんで?わしの気をもたせておきながら、ぱっと恵みを取り上げる
  なんて。アドナイ、ははあ、ひょっとしてわしをからかっておられるのじゃな。」
ヒレルはそうやって少し諦めがつくと、家路についた。
・・・アドナイよ。これであんたには貸しができたわけだ。よろしく頼みますよ。

11

「エレムさん。わたしが今日あなたに言ったのはこのことだったんです。」
天使はエレムに話しかけた。
サキがその様子を傍で見ていた。
「ここにいるサキさんが、あなたの案内人なんです。」
エレムは、そういえば仲間たちと会う前に天使が、案内人がどう、とか言ってたのを思い出した。
「へぇー。」
「そして、このぶどうの台木が『あなたの枝に合う良い木』なのです。」
エレムは天使ラファエルを見た。自分には彼が何を言おうとしているのか、まだ真意が
つかめてなかった。
「それって、単純に、はいこれっ、て、もらったぶどうの枝をここに接ぎ木しろ、っていう
  意味なの?」
「まさか・・・いいですか、わたしはあなたの『守護の天使』なんですよ。無意味にあなたを
  こき使うわけがありません。」
ラファエルは笑った。
「まあ、見ててください。」
エレムとサキを少し遠ざけると、ラファエルは台木のところに来てひざまずいた。
じっとうなだれる彼の前に突然一人の男が現れる。
ぶどうの台木はもうそこになかった。
ラファエルが膝立ちのまま顏を上げると、見下ろしている男になにかを話し始めた。
エレムは耳を澄ましてみる。
「・・・主に申し上げます。二人の『種を蒔かれた者たち』、一人はわたしに親しく任されましたが、
  もう一人はわたしのことすら知らされていませんでした。
  わたしはここに、二人をお連れしました。主のみこころのままに。」
サキもエレムがするように耳を澄ましてみた。
「・・・主に申し上げます。二人の『種を蒔かれた者たち』、わたしのことを知らない彼も、
  みことばを頂いた者の一人なのです。わたしはここに、二人をお連れしました。
  主のみこころのままに。」
ラファエルは、実はたった一つのことだけを言って、うなだれたのだった。
男は素の表情のままエレムとサキを見ると、二人に手の平を向けてみせる。
二人の目に、同じものが映った。
エレムもサキも、それを見て、男が何者なのかをすぐ理解した。
「主だ。」
「主だ。」
二人の言葉はほぼ同時で、つぶやきのように漏れた。
ラファエルはそれに感動して、男を見上げながら何かを言っているようだった。
エレムとサキは、目の前で起こっている出来事を心のページに写し取るように見ていた。

10

天使の奥義

「枝は良い木に接ぎ良い実を結ばせよ。」

・・・エレム!
呼び声にハッとなると、視界にはヒレルさんの休耕地が広がっていた。
サキがこっちをのぞき込むように見ている。足元には一株の台木が・・。
「エレム、これがあの台木だよ。良く手入れされてるだろう?」
サキが目で合図して、エレムを傍に来させる。
台木はしっかりしていて、潰すにはとても惜しいしろものだった。
「これを、あの天使が・・、ラファエルが面倒見てたっていうのか?」
エレムはサキの方を見ながら確認する。
ひょっとしたらこの瞬間にも、またあの天使が現れるかも、と内心では期待しながら。

「天使現れないね。」
午後の日が大きく傾きかけたひと時。エレムはサキと休耕地のただ中にしゃがみ込んでいた。
遠くの緑の山なみを鳥の群れが過ぎゆく。
静かな時間が流れる。
見慣れた景色に穏やか過ぎる時間。なにもかも普通過ぎていた。

エレムがサキと顔を見合わせる。
「今日は来ないんだろう。もう行こう。」
「そんなに焦ることないじゃないですか。」
「?」
ふと、声の方を見上げると、普通に男の人が佇んでいた。
「・・・」
「そう。こんにちは。ラファエルです。」
天使がいた。

9

エレムは天使が言ってたことを思い出してみる。
「ラファエルという天使は、最初会った時にたしか、俺の守護天使だって言ってたんだ。
俺の聖書には『トビト記』が載ってるからだとか・・・。」
「へぇー。でもなにそれ?その、守護天使とか、トビト記とか・・・。」
サキは歩きながら、けげんそうな目で見る。
「えっ!知らない?」
「うん。うちにも聖書あるけど、トビト記、っていうの?・・・そんなの載ってないよ。」
エレムは初めて耳にする話だった。
「・・・とにかくラファエルは俺に、持ってる聖書にトビト記が載ってるせいで俺の守護天使に
なったって言ってたんだ。」
「へぇー。守護天使ねぇ。」
エレムはサキに振り向く。
「サキのときは?天使はどんなだったの?」
「うん。・・・気付いたらぶどうの台木の傍に立ってて、ラファエルって名乗っただけ
だったけど。それで自分は天使なんだって。」
「それだけ?」
エレムは、ラファエルからもらった枝の話もしようと思っていたが、どうやらサキと自分では、
天使の扱いになぜか違いがあったので、止めとくことにする。
・・・サキの話聞いてびっくりしたけど、天使はなぜ俺にばかり・・・いったいこれ、どういう
ことなんだろう・・・・
エレムの中に、天使がくれたぶどうの枝がよぎった。

8

サキは仲間からちょっと離れると、エレムのすぐ隣を歩きながら小声で話した。
「俺も見たんだ。・・・でもみんなはまだ、俺の話100パー信じたわけじゃないよ。
だからやつらの前で詳しく話すのはちょっと無理。
俺は、あの休耕地でほんとに、『ラファエル』という天使と遭っちゃった
んだ。」
エレムは彼の口から出たその名前を聞き逃さなかった。
「その天使・・・俺も遭ったよ。」
エレムはわざと声をくぐもらせて、仲間に聞こえないように言う。
「そう?エレムも?・・・あの休耕地で?」
「いやそれが・・・違うんだ。・・俺は皆と会う前に道の途中で・・・・」
二人が話し込んでいると、いつの間にか仲間たちは先に行ってしまっていて、もう見え
なくなっていた。
「ああ、みんな行っちゃった。しょうがない、このまま歩いて続き話そう。」
「うん。」
サキはエレムをちらっと伺いながら、確認するようにうなずいてみせた。
思わぬ体験を共有することになった二人は、お互い不思議な絆を感じ始めていた。

全3ページ

[1] [2] [3]

[ 次のページ ]


.
mentsh
mentsh
男性 / B型
人気度
Yahoo!ブログヘルプ - ブログ人気度について
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31

過去の記事一覧

よしもとブログランキング

もっと見る

[PR]お得情報

数量限定!イオンおまとめ企画
「無料お試しクーポン」か
「値引きクーポン」が必ず当たる!
CMで話題のふるさと納税サイトさとふる
毎日お礼品ランキング更新中!
2019年のふるさと納税は≪12/31まで≫

その他のキャンペーン


プライバシー -  利用規約 -  メディアステートメント -  ガイドライン -  順守事項 -  ご意見・ご要望 -  ヘルプ・お問い合わせ

Copyright (C) 2019 Yahoo Japan Corporation. All Rights Reserved.

みんなの更新記事