猫瓶

8/20本日をもって、休止とさせていただきます<(_ _)> が、今日8/24みたいにうpすることも^^

たまご(ヒユの界2ndシーズン)

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たまご THE END

  レアが最後にエリと会ってから5日目の朝のことだった。イルメヤ少年が起きた時にはもうレアの姿はなく、かわりにテーブルの上には書置きが残されていた。
  はっとなって彼女の手紙を手にとる少年。
「わたしのイルメヤへ。私はエリさんの活動を真剣にサポートしていこうと思う。で、たぶん迷惑がかかる前に、ここを出ていくことに決めました。きみのことは、義兄のモシェに頼んであるから心配しなくていいよ。大丈夫だから。義兄はほんといい人です。なんでも相談してくれていいから。それじゃ……ごめんね急で」
  いきなりのことに、イルメヤはすっかり動揺して、書置きを何度も目で辿っていた。なんで……分からないよレア!
(そうだよ今さら、なにいってんの? レア)
(また置き去りなの? 僕)
(こんな星、レアが一緒にいてくれなきゃ意味ないのに……)
(レア――僕のこときらいになったの? ……ひょっとして、もう子供ができたから僕は男として用済みってこと?)

  そういえば、……「たまご」から孵ったあの子の姿も見えなかった。


「レアーっ!」










                                         (了)

たまご(15)

「いつも協力してくれて助かります!」
  依頼者のエリが何日ぶりかにレアのもとを訪れる。人なつっこそうに笑う彼女。初めてここを訪れた時とはだいぶ変わって見えた。とにかく打ち解けてきている。
「――すぐ生み捨てちゃうんですよ! 私たち『マルカー』の女たちったら……」
  向こうの部屋で、イルメヤ少年が小さい子を面倒見てる声がする。なんだか楽しそうだ。
「生みっぱなしでも勝手に孵るたまごだから、みんな捨てるのなんかなんとも思ってないみたいで」
  レアはテーブルにグラスを置きながらエリの前に来て座る。
「これどうぞ。……そうね、私たちには不思議なんだけどほんとに孵っちゃうからね。この前エリさんから預ったたまごも、2日前に孵ったばっかで。私たち何にもしなかったんだけど……」
  レアはそう言いかけて、向こうの部屋の方に視線を留める。
「そうですか……やっぱ、あの子も孵ったんですね……おめでたいんですよね、これって」
  そしてエリの目がレアの視線をたどって部屋の方に向けられた。
「問題は、『一人で生まれたって十分に生きられるもんだから』、あの子たち、愛なんて必要としないし、分かりもしないことなんです」
  エリの声が寂しげだった。


  『たまごから生まれる幼児』……赤ちゃんの時期をスキップして、いきなりしっかり歩けて食べられる状態で生まれてくる――ステーションコロニー・「マルカー」の生存者の子たちだった。

  その日もレアは、一人街中をめぐり歩いた。

  携帯端末で場所を確認しながら道を急ぐ。もう今日で何回目になるだろう。
  でも、彼女はそんなこと一向に気にならない様子だった。いや、むしろ回を重ねるごとに使命感が湧いてくる気がした。
  午後のまだ明るい時間。レアの足が商店街の脇を入った路地へと踏み込む。
  携帯端末に出る位置を確かめて、しばらく辺りをうかがう。レアの目は、かつて戦士だった頃のそれになっていた。
  まもなく、まばらな通行人に紛れて対象者が現れる。レアの目が鋭く光った。
  携帯端末のバイブ。依頼者のエリからだった。
「レアさん、今そこにいる子を保護してやってください。お願いします!」
  対象者は、ちっちゃな男の子だった。なんだか服装に汚れが目立つ。
  彼はこっちに向かって、レアには気づかない様子で歩いてきた。上着の値札が揺れている。
(かわいい、目ぇくりくりで! ……それどころじゃなかったんだ私)
  レアはもうすっかり慣れた調子で男の子を呼び寄せた。
「ほーら、おねーちゃんの愛の匂いだよ」
  彼女のチョーカーからフェロモン物質が出され、男の子が誘われるように、彼女のもとへ一直線に駆けてくる。
  身を屈めてしっかり抱き止めたレア。「こんなに汚れちゃったんだね――」
「でももうだいじょうぶだよ。……淋しかったでしょ? 一人で生まれて、今日まで自分の力でがんばってきたんだもんね」
  思わず声をかけていたレア。言葉が自然に口をついて出てきた。男の子の上着に付いた値札を目にしながら……。
  でもそのポケットには、かわいい女の子の絵が入ったカードが一枚押し込まれていて――。
(あのカード、誰かからの愛のプレゼントかな……)

たまご(13)

  エリがレアを訪れた日から2週間ほどが過ぎていた。
  彼女の置いていったクリーム色の球は、部屋の隅で随分膨張してきていた。
  初めピンポン玉ぐらいだった大きさは、もう西瓜ぐらいになっていた。
  レアが今朝も起きがけにその球をじっと眺める。殻はぷよぷよな感じで、グミのように弾力があるように見える。
  それに光が当たると、ぼんやり中が透けて見えた。
(これは……もう赤ちゃん通り越して幼児……じゃない!?)
  レアが、透けて見えている形に驚く。日に日に、中の子の成長が加速している気がした。
(そろそろこのたまご、孵るのかな……、そしたら)
  レアがそんなことを考えながら、目の前にあるたまごをなんとなく撫でてみる。
  ほんとにぷよぷよの感触だった。そして中に幼児の影が見える、なんだか不思議なたまご……。

たまご(12)

  キミちゃんが庭で、さっき会ったばっかりの小さな男の子と遊んでいた。
「はいこれ。あげる」
  キミちゃんの手にカードが一枚。男の子は無言でじっとカードを見ていた。
「ほら」
  キミちゃんがその子の手をとって、手のひらにカードを置く。なんだか恥ずかしそうな様子。
「これね、わたしの宝物だけどきみにあげるよ。……いいよ、無理にしゃべらなくても」
  なにか言おうとしてモジモジしてる男の子に、キミちゃんは優しく微笑んだ。
「あのさ、その服、かわいいね。でも(……なんか変)」
  キミちゃんは幼いながらも、男の子に気を遣う。最後まで言うと、ぜったい傷付くと思ったからだった……。
  つまりその子の上着には、まだ値札が付いていたのだった……。

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