猫瓶

8/20本日をもって、休止とさせていただきます<(_ _)> が、今日8/24みたいにうpすることも^^

カホの剣

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  霊聞記の原作にあたるオリジナルです。もう一つのほうのブログで1年ぐらい前に公開済みですが、原作の雰囲気を比較できたらと思って^^;ここにもUPすることにしました。

  んで、プロットのほうは、といいますと…


カホの剣・・・・取ると王権が狙える。
カホの剣士・・・カホの剣を手にした男または女。
カホのしもべ・・カホの剣を手にした男または女で王権を狙う
野心を抱いた者。
カホの期限・・・カホの剣を手にしてから2週間。
カホの封印・・・カホの期限を過ぎた時点で行われる封印。
カホの隠者・・・カホの封印を行なう若者。
剣士清算・・・・カホの期限を過ぎた時点で、カホの剣士に
行われる清算。

ハル・・・・・・男、18歳
ハナン・・・・・男、23歳
カナ・・・・・・女、?歳
スウ・・・・・・女、?歳
その他

構想

カホの剣をめぐる人間模様。舞台はある恒星の惑星。
人間のような知的生命体。利用エネルギーの種類は不明。
文明は封建時代程度。王と諸候が領地をめぐってせめぎ合う。
宗教は不詳。ただし、剣にたいする伝承が各地に多数。
カホの剣はそのなかのひとつ。
舞台の国の王は現在空位。諸候が王位を狙って、しのぎを削る。
ハルはその国の少年。諸候の家柄ではなく平凡に暮らしている。
そんなハルはあるとき、一人の男に出会う。
男の名はハナン、ハナンは身の上を隠していたが、実はある諸候の血族で、カホの剣を無事に使いこなせる人物を探している。
ハナンはハルにその印を見い出し、彼には詳細を告げずに、ハルを半ば騙すようにしてカホの剣士にしてしまう。
カホの剣士となったハルはカホの剣の力に振り回されながら、いろいろな出会いを経て、王権の野心を抱くようになる。
そしてハルの破滅の冒険が、展開されていくことになる。
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カホの剣 ー完ー

  そして14日目……。

  ハルは今日も見知らぬ街中をさまよっていた。通りには多くの人が行き交っていたが、誰もハルのことなどに目を留める者はなかった。(いつもそうだ、こいつら俺のこと気づいてるくせに……どこの街に行ったって……)
  ハルはぼんやりとした意識の中で、通行人の姿を無感動にやりすごしていた。今彼にとって大事なのは……世間が自分をどう見ているかよりも……「カホの剣の霊」が伝えてくる意思を、確実に実行していくことだった。

  カナの姿はもう、イメージとして心に浮かんでくることはなかった。
  それでもハルは、自分を動かす意思……それはまぎれもなくカナだった……が存在してくれるだけで、満足だった。
  カホの剣の霊、カナは、あの日以来、ハルと存在が完全に一体化していたのだった……。

  通りを進んで行くと、向こうに大きな屋敷が見えてきた。
  もう何度も見てきた戦士の屋敷の特徴……。街の中心部に、広大な敷地を持って広がっている。
  そのときハルは、剣からの意思を感じた。
(……これからあの屋敷の当主を討ちに行くから。当主は戦士キンザム。今、王位に最も近いという実力者。……ハル、あなたはまだ『剣士清算』の前だけど、今のハルなら十分いけるよ。……ハル、わたしのためにやってくれるよね……)

  視界の中で午後の光が敷地を照らしていた。
  砂地の続く殺風景な場所に、長楕円体の機体がぽつんと待機している。
  すべてはハルにとって好都合だった。
  居並ぶ人たちから、簡単に当主の見分けが付く。
  それはハルもよく知っている、あの『戦士キンザム』のくったくない顔だった。
  そしてその手前には、以前同僚だったタナスや、一緒に研究室で働いた仲間たちの顔が見える。でも、更にその前の……(あれ、あそこに誰かいるけど見えない……変だな……)



  屋敷の前に広がる敷地に、ハルが通りから折れて侵入してくる。
  彼はどんどん進んで、顔見知りの当主がいるほうに、まっすぐ近づいてくる。
  しかし当主の周りに控えていた戦士たちは、誰も剣を抜かず……。
  ハルは彼らが、自分を恐れてるんだろうと思って誇らしくなった。
(……何しろ俺は、カナと一体、最強の存在なんだから……)
  音がしていた。
  それは風がそよぐ音。
  居並ぶ人たちは、ずっと無言のままだった。
  ハルは彼らを、もうすぐの距離に見渡しながら、その向こうにメラフが置いてあるのが気になっていた。
(あれは、誰の? この家の戦士のかな? でもなんで一機だけがあんなふうに……)

  ふと、心に伝わってきたカナの意思。
(……いい? ハル。気をつけてね! そう、今見えてる女に注意するのよ。ぼんやりしか見えないと思うけど、あの娘は今のあなたにとって、一番危険な存在だから……)

「ハルぅ」
  声に振り向く。
「私よ、分かる? ジゼルだよ! ハル!!」
  すると近くから見慣れない男が彼女に叫ぶ。
「もっとはっきり呼んでっ! ジゼルさん! もうこのチャンスしかないんだよ!」
  ジゼルは男の言葉に押されるように、思いきってハルに走り寄った。
「ハル、お願い私の言うことを聞いて!!」
  ハルは途端に胸が悪くなった。
「うっ! やめろ! 黙れ!!」
  カナの意思がハルを覆い尽くしたようだった。
「ハル……だいじょうぶ?」

「今だっ!!」
  男の怒鳴り声とともに、ジゼルの手がハルを抱き止めた。
  そして居合わせた戦士たちの手で、ハルの腰からカホの剣が手早く抜き取られる。
  ハルは……止まった。思考の全てにいたるまで、なにからなにまで完全に……。
  一瞬の沈黙をおいて、すぐさま周りで喧騒が巻き起こる。
  ハルはジゼルに肩を貸してもらいながら、戦士に腕を引っ張られてメラフが待機するほうに連れていかれる。(ハル……苦しかったね。でももうだいじょうぶだよ。もうこれからはずっと……)

  カホの剣はハルの腰の鞘を離れて、抜き身のまま一人の戦士によって運ばれた。
  その優美さに思わず周囲がくぎづけになる。……カホの剣は、例えようのない美しさだった。
  戦士たちに伴われて、メラフの先端部にハルとジゼルが着く。ジゼルは戦士を引きさげると、肩でハルのことを懸命に支えながら、ぐったりしてる彼の横顔に優しく話しかけた。
「よくがんばったね、ハル。……私、ハルのこと愛してるんだ。だから人の命を奪い続けるようなまねはもうやめて、私の腕の中に帰ってきて……」
  ジゼルが話している横で、戦士の一人が来てメラフの先端にカホの剣を突き立てる。
  剣はすぐに機体の中へ入り込み、消えていく。
  そして今度は、ジゼルがハルをメラフの先端部に近づけて、へこみ始めた機体の縁に両手をかけさせる……。

  ハルはメラフの中に、すごい勢いで吸い込まれていった。


  ジゼルが、ゆっくり上昇するメラフに微笑む。(ハルが私の腕の中に帰ってくる……)


  当主や戦士たち、それにジゼルやアケシュらが見守る中で、空高く浮かんだメラフが何度も勝利の旋回をしてみせた。
(……ちょっと、はしゃぎすぎでしょ……)
  ジゼルはやさしい表情で、目を細めて空を見上げた。


  旋回が終わり、メラフが静かに着陸する。
  アケシュに背中を押されたジゼルは、うなずくと、緊張した顔でメラフの先端部まで来て、両手をそーっと差し出した……。

  それは誰もが始めて目にする光景だった。
  メラフの先端がくぼんで広がり、機体の中からびしょびしょに塗れたかわいい頭が
見えてくる……。そしてはり上げられる泣き声……。
  ジゼルは目をみはった。自分の腕に抱き止められた小さな小さな命……。
(ほら、私の腕の中に帰ってきたね。こんなに純で、ちっちゃくて。カワイイ)

  赤ちゃんはジゼルのぬくもりに泣き止んで、その胸に安らいだ。


(カワイイ)







  広大な敷地にメラフが牽引されてくる。13日目の日……。

  やわらかい質感の機体が、午前の光に照らされて反射する。まるで、何かの生き物を見ているような錯覚……。
  そんな光景を、敷地に立って見守っている人たち。
  この家の当主、戦士キンザムもまた、数人の部下を従えてメラフをじっと見つめていた。
  その顔には、煮えきらない何かがあった。
  キンザムは不機嫌そうに、手前でメラフを見守っている女性に視線を向ける。
  彼女は黙ってうなずくと、しっかりした口調で説明を始めた。
「こちらのメラフは、ご当家の女戦士、ミラさまが生前愛用されていたものです。ミラさまは、すでに皆様がご存知のとおり、つい2日前に、『カホの剣士ハル』の凶行によってお命を奪われました。そんなまだ悲しみのさめやらぬ中で、このたび私の身の程も顧みない不遜な要求をお受け入れくださって、まことにありがたく存じます」
  彼女の視線がキンザムのほうを向いて、深々と一礼した。
「そのことはもうよろしい。さあ、話を続けなさい」
  キンザムの表情は沈んだままだった。
「はい。わたくしジゼルは、今回のご当家の危機に備えるべく、『お互い』が最も満足する形で事態が収集するよう、最善を尽くさせていただきました」
  ジゼルの言葉に、すかさず当主キンザム自らが疑問を入れてくる。
「ちょっと、いいか?」
「はい、ご当主さま」
「『お互い』とは何の意味か? ハルという少年が、速やかにこの地方から取り除かれなければならないのは、彼が、次期王位に最も近いこの私の脅威になるからであろう? そんな単純な話に、少年とこの私のどちら側を指して言ってるのか知らんが、なぜ『お互い』などと云う、第3の利害者を持ち出そうとする言葉を使うのか、ちゃんと答えなさい」
  ジゼルは一瞬ためらってから、意を決したように話し始めた。
「恐れ多くも申し上げます。それが……。実は至極プライベートなことで恐縮なのですが、ハルという少年は、その……たしかにご当主さまから見れば『脅威』となりますが、彼は、彼は今はもうあんなかも知れませんが、私にとっては依然『愛する者』なのです。……私はそんな彼を、今の『破滅の只中』の状態から即、死に至らせるようなことはできません。せめて彼を……」
  ジゼルの声が涙にむせて途絶える。彼女の予想外の発言に、当主の後ろに控えていた戦士たちが、一斉に剣を引き抜いて構える。そして彼女に押し寄せようとしたそのとき、当主の声が彼らを制した。
「やめよ!!」
  あっけに取られて当主のほうをゆっくり振り向く戦士たち……。
「やめよ。剣を収めよ! ジゼル、お前の言い分は分かった。それに、お前がわざわざ女戦士の使っていたメラフを願い出たそのことの理由も今……お前は、『真の愛』を知る娘だ。誉めてやろう。誓って言うが、玉座の足台にいるこの私の権勢とて、お前の愛の大きさにはかなわない」
  当主であるキンザムはようやく笑顔になって、大声で思いっきり笑った。

  メラフが全員の前で、優しい女性的なフォルムを浮き立たせていた。

  すでに13日目だった……。
  ハルはあのことがあってから、自分の行動が完全にカナ任せになっているのに気づいていた。でも……彼は満ち足りていて……甘え、いや信頼だった……。
  カナはもう、単なるカホの剣の霊ではなく、彼の意思、いやそれ以上に自分に近い存在だった。
  この数日間、ハルはあの「幸せなヴィジョン」が心に浮かんでこなかった。
  剣を腰に下げて、眠らず、休むこともなく日夜ぶっ続けで街から街へとさまよう……。ハルのそんな姿は、まるで死者の霊にでもなったかのようだった。ちょうど、眠らず、休まず、飲食もせず……ただ「霊である現実」を忘れたいためだけに、過酷な労働に集中する彼らのように……。

  ハルはもう、何十人も「敵」を倒してきた。
  そのすべては、心に浮かんでくるカナとのはかない、甘いあのヴィジョンを繰り返すためだった。……ハルは必ずヒーローで、カナに立ちはだかる敵から彼女を救って抱き寄せる。すると彼女の脅えきった顔が、ハルの腕の中で安らぎへと変わっていく……ハルはそんなかわいい彼女と愛しあう、互いの想いがエクスタシーに上りつめるまでずっと……。それは自分が居る(要る)ことを証ししてくれる瞬間に思えた……。
  そして、そのあと続く現実……。決まってハルの前には、ヴィジョンに見た敵が死体で転がっていて……自分の手で命を奪ったという実感もないまま、カホの剣を下げてまたすぐ次の場所に向かう……地獄というものがあるなら、これがまさにそうなのかもしれない……でも、この惑星のハルたちには、死後の霊を資源として利用している現実が、地獄などという絵空ごとを許す余地もなく……。


  ハルはある街の中心部を歩いていた。
  今日も心にはなにも浮かんできていない。元カノのマヤが、目の前でカナに斬られたのを……そうだった気がする……見たあの日以来、カナとの甘くて幸せなヴィジョンはもう浮かんでこなかった。
  ただハルは、あの日からカホの剣が教えるままに進み、促すままに命を奪い、逃げ去ってきた、ひたすらそれの繰り返しだった。
(……俺は、これでもカホの『剣士』なのか?……)
(……じつは俺がカホの『剣』なんじゃないのか?……)
(……カナは俺を必要としてる。それは間違いない……)
(……俺に「存在する意味」を与えてくれてる。それもたしか……)
(……だから俺はこうやって……)

  ハルは気づくと通りで戦士の男を倒していた。見ていたのは甘いヴィジョンなんかじゃなくて、つぎからつぎに浮かんでくる不安、悩み、疑い……。
  慌てて走り出すハル。
……でもカナは俺に、こうやって「存在する意味」を与えてくれてるじゃんか……
  そう思うとハルは、心がすごくあったかいもので満たされてくる気がした。
(カナ、大切な君の代わりに俺が……いくらだって……)
  猛ダッシュで走り続けるハルの目に笑みがさした。

カホの剣 ー42ー

  午後になって、研究室に1人の男が現れた。
  彼は狡猾そうな光を目に浮かべて、ジゼルをぐいっ、と睨むと卑屈な笑いをしてみせた。
  彼は、仕事として各地の伝承を収集して回る「伝承収集家」と呼ばれる人だった。
  ジゼルは上からの指示で、この男を研究室に迎え入れた。失礼のないようにと、きつく言われていたが、どうもこの男は「生理的に無理」な感じだった。
  男は側にある椅子にちょこっと腰かけると、またあの「卑屈な笑顔」でジゼルを見た。
  彼女は構わず自分の感情が顔に出ないようにしながら応対する。
「『伝承収集家』のアケシュさま、今回はわたしくしどもの危機的状況に、有難くも御指導くださる、とのことで、深く御礼申し上げます。私は、ここの研究主事のジゼルと申す者でございます。どうぞよろしくお願いします。……それでは、さっそくですが……」
  すると彼女の話の続きを遮るように、アケシュがボソッとぼやく。
「そんなに、固くなんなくったっていいじゃん」
  ジゼルは急いで表情を作って返した。
「はい。ではご厚意に甘えさせていただきまして、普通に……。アケシュさんは、カホの剣の伝承に詳しいらしいですね」
  男の顔が自信たっぷりなものに変わる。
「うん。確かにね。それに、今回依頼されたカホの剣のことは、俺にも直接関係あるんだ」
  ジゼルは男の言葉に思わず疑いの目を向けてしまった。
  アケシュはそんな彼女を見て、また卑屈な笑いを浮かべる。
「ほんとだって。……間違いないよ。つか、今回問題になってるカホの剣は、俺が拾って、ある店に売り付けたもんなんだから」
「それ、信じてもいいんですか? ……あ、失礼致しました」
  ジゼルは思わず口について出た言葉にはっとなった。(そうだ、上から失礼ないようにって言われてるんだった……)
「いいよ、ねえちゃん……、べつにいつも言われることだから。そんなことより、ねえちゃんは『カホの剣』と『その霊』を、どうしようと思ってんの?」
  ジゼルは何も言わず、デスクのモニターに寄ってってタッチする。
  画面が表われ、彼女のタッチに従ってプロジェクトの概要が、つぎつぎ表示されていく。彼女は時々説明を加えた。
  アケシュはそれを、真面目にじっと見つめていた。

  表示が終わり、ジゼルの顔が彼のほうを向く。
  アケシュは何度も深くうなずきながら、彼女の案に感心した様子だった。
「ねえちゃん、いやジゼルさん……あんたスゴいね! こんなこと思いつくなんて……あんたと『カホの剣士のハル』ってもしかして……やっぱそう?」
「アケシュさん、……そうです。お察しされる通りです。わたしは……」
  ジゼルは言いかけて、思いつめた表情になった。
「わたし、彼のこと今でも愛してるんです。こんなことになっちゃったけど」
  するとアケシュは、さっきまでのあの卑屈な笑いとはうってかわって、真剣な顔になった。
「ジゼルさん、分かったよ、あんたの覚悟……。俺はこのプロジェクトに必要なあらゆる資料、情報を提供するよ」

カホの剣 ー41ー

  研究室のジゼルに指示書が回ってきた。
  「緊急」の但し書きが付いている。
  文章を目で追い始めるジゼル……。途中のとこまで来て、深くため息をついた。
  指示書をそばのデスクに投げやって、一点を凝視する。
  ジゼルはその内容に複雑な思いだった。
(……そっか、ハルは……『カホの剣士』になってたんだ……)
(それも『カホの剣のしもべ』を先取りする状態で……)
(そうだ、彼のこと探すよう頼んだ霊、まだ帰って来てなかった)
(……霊はきっと、ハルの『カホの剣の霊』に遭って消されたんだ。かわいそう)
(……ハル。カホの剣との相性のおかげで、彼が今、次期王位にもっとも近い「超危険人物」に指定されてるなんて)
(……そしてこの私は……それを阻止するプロジェクトを任されて……)

  ジゼルは指示書のほうに視線をやりながら、ぼんやりと、つい最近まで一緒だったハルのことを思い浮かべた。
(一番最後に会ったのは……3週間ぐらい前だったかな?)
(あのとき喧嘩した)
(やっぱ霊のことがきっかけだった)
(ハルは『霊を酷使するのは、命を粗末にするわけじゃないからいけないことなんかじゃない』って言い張ってた)
(その後は、いつもの理屈だった)
(たしか……霊を……自分が『死んで霊になってしまった』という絶望から気を逸らせてあげるためにも……苛酷な労働を霊たちにさせ続けて、考える余裕を与えないのは……彼らのためになってるんだ、ってゆう)
  ジゼルはその日、そんな感覚のハルとはもう限界だな、と思った。
  ハルは、自分の霊力の高さを鼻にかけて、彼女の意見なんかどうでもいいという感じの態度だった。
  地元の農民では、たぶんただ一人だけ、自由に霊と意思を交わせられて、また霊に体を与えたり、消去したりもできる……そんな自分に、農民として平均的な霊力しかないジゼルが口出しするなんて、とんでもないみたいに……。

  でも、ジゼルはまだハルのことが忘れられなかった。
  小さいころから一緒によく遊んでた二人。語り尽くせないいろんな思い出……。
  当然、彼の、他人が知らない部分も知ってて……。
  何よりジゼルは……ハルを愛していた。

  指示書はそんな彼女に、ハルのことを「完全無害化」した上で「殺処分」するよう命じていた……。

  ジゼルの手が再び指示書に伸びる。
  彼女の沈んだ色の瞳に、キラッと光が射す。
  そしてその頬には、はっきりと笑みが浮かんだ。

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