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祖母は、あれこれと、食事の世話をやいてくれている。
ふと、彼女の顔が、母のものと重なった。
勉は、目をこすった。
どうしてだろう。
考えをめぐらした。
母は、この人から生まれたんだ。
きっと、母だって、根は優しいんだ。
勉は、今日見つけた「写真」が気になって、どうしようもなくなった。
箸をおろした。
「ごちそうさまでした」
「どうしたんだい。まだ一杯目だろう。もっとおあがり」
祖母がやさしく言った。
「おなかが、いっぱいになっちゃった」
「これ、デザートだよ。部屋で食べなさい」
「ありがとう」
「もう、お行儀がわるいんだから」
詩織が、勉の我がままが出た、といった顔をしている。
机の上のスタンドのスイッチを入れる。
引き出しから写真を取り出した。
ライトを当てた。
幼いぼくを抱いた母の姿が浮かび上がった。
お正月に撮ったのだろう。
暖かい服装だ。
じっと見つめた。
こんな時も、あったんだ。
熱い物がこみあげてきた。
涙がひとつぶ、写真に落ちた。
あわてて、ハンカチでふいた。
若い母は、両親に孫を見せようと、盆や正月に松本を訪れたに違いない。
家では、ぼくは勉強の出来る兄と比べられてばかりだった。
父も母も、ぼくと兄を、成績だけで評価している。
ぼくは、そう思いこんでいた。
ぼくだって、学年ではトップレベルだった。
でも、兄は特別だった。
私立高校の御三家のひとつに入学した。
今、ぼくが考えている母さんは、本当の母さんじゃない。
ぼくが、頭の中で造り出したまぼろしだ。
そう考えることにしよう。
この写真の母さんこそが、本物だ。
勉強しなさいと口うるさいのも、ぼくに良くなってもらいたいからなんだ。
お前は、勉強が出来ないから、バカだ。
そう言っているわけではない。
ぼくの将来を、大人の目で、心配しているだけなんだ。
慣れない大都会で、暮らしはじめた母は、大変だったにちがいない。
戸惑っただろう。
長野県民は、教育に熱心だ。
でも、東京はもっとだ。
母も辛かったんだ。
お父さんだって、つき合いがある。
仕事が終わったから、はいさようならとばかりは、言えない。
みんな、必死で生きているんだ。
気分転換が、必要なんだ。
勉は、母の実家に来て良かった、とつくづく感じた。
冷静に、物事を見はじめていた。
詩織の存在が、大きかった。
辛い過去に負けずに、懸命に生きていた。
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こちらにあったのですね!!
チェックが遅れて申し訳ありません。
写真を使って勉の成長を描き、今後の
展開に幅を持たせた感じは流石です!!
リンク作っておきますね。
2011/7/10(日) 午後 11:52 [ 竜次 ]
おはようございます。竜次さん。
ありがとうございます。
皆さん、よろしくお願い致します。
2011/7/11(月) 午前 8:02 [ けっさん ]