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台風並みの熱風が、山あいの街で吹き荒れていた
山の木々は、葉裏を返してざわめいている。
軽い空気が谷間を通り過ぎ、渦巻いている。
不意を襲われた人々は、家のまわりの物を吹き飛ばされた。
物干しざおを取り込もうとした老女が、風にあおられた。
地面に転んで、頭をぶつけた。
自転車で通りかかった老人が、よろめいている。
生い茂ったこんにゃくの中で、うずくまっている人もいた。
丸太椅子にすわっていた正夫さんは、危うく難をのがれた。
隣の玄関わきの看板が、頭をかすめていった。
ガランガラン。
大きな音が、店の中まで聞こえた。
「あんたあ、大丈夫かい」
奥さんが、飛び出してきた。
「早く中へ入って。突風だよ」
正夫さんは、頭をかかえて、うずくまっている。
「どこもケガしてないかい」
「とっさによけたから助かったけどな。あんなのが、まともに当たったら、大けがしたな。俺、八十年、生きてるけ
ど、こんなの初めてだ」
「まったくだよ。まるでお天道様が、怒っていらっしゃるようだ」
店内から、ふたりは外を眺めている。
信号で停止した車のガラスに、飛んできた物が当たった。
洗濯物が飛んできて、玄関の窓ガラスにひっついている。
歩道のプランターが、次々に倒れた。
ちょうど下校時間だった。
玄関先で子供たちが四、五人、しゃがみこんでいた。
引率の若い女の先生が、子供たちをかばっている。
「おい。駄目だ。子供があぶない。俺は足が弱いから、おめえ、こっちに入るように言って来い」
「はい」
玄関のドアを少し開けた。
風圧で重い。
力をこめた。
「あんた、こっちへおいで」
声をかけて、手招きした。
泣き顔になっていた。
ぶるぶる震えている。
子供の手をとって、ひとりずつ中に入れた。
「早く、早く」
ほっとしたのか、泣き出す子もいる。
「どうもありがとうございます」
先生が頭を下げた。
「もう大丈夫だよ。泣かないでいいんだよ」
奥さんが慰めている。
「おじさん、おばさん、どうもありがとう」
声をそろえた。
足から血が出ている子がいた。
プランターが、ぶつかってきたと言う。
「救急箱を持ってこい」
奥さんに命じた。
戦争中を思い出していた。
正夫さんは、緊張した表情になっていた。
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夢椅子シリーズ
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こんばんは。
続きが気になります(^-^)
更新、楽しみにしてますね。
2011/7/22(金) 午後 8:26
こんばんは。コメントありがとう。
久しぶりに、正夫さんに登場していただきました。
ほんとに暑い七月でした。記事にあるような日が、二日くらいあったんですよ。谷川に入って、涼を求めました。
2011/7/22(金) 午後 8:56 [ けっさん ]