愛の物語

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いやしの姫 その23

 悠子は、ジャージを着た子が気になって
しかたがない。
 「先輩、ほんと、その子。誰なんですか」
 悠子が前に顔をだすと、後ろにひっこむ
素振りを見せた。
 笑顔をたやさない。
 見ているだけで、心が暖まる。
 身体は大きいが、まるで三歳児のようだ。
 「しかたないわね。教えてあげる。ちょっと
耳をかして」
 百合子の口元に、右の耳を近づけた。
 「実はね、・・・・・・」
 「ええっ。ほんとですか。さっきのお人形さん」
 「世の中には、時々、信じられないことが起
こるものよ」
 「小さい頃から、いっぱい人形をだいてきま
した。たまには、怒って振り回したり、放り投
げたりしたことがありました。その度に、母に
叱られました。お人形、痛いって言ってるわよ、
って。大きくなるにつれて、どの人形にも、作っ
た人の気持ちがこもっていると思って、大事に
あつかうようになりました」
 「私だって、同じようだったわ」
 放送室のケースに入った人形。
 髪が長く、着物を身に付けていた。
 今にも、口をききそうに思えた。
 怖いくらいに、よく出来ていたのを、悠子は
思いだした。
 「こ・ん・に・ち・は」
 百合子の口がこわばり、言葉がたどたどし
くなった。
 驚いた表情で、悠子は次の言葉を待った。
 「よういちくん、かわいそう」
 少しなめらかな口調になってきた。
 「ええ」
 と、言わずにはいられなかった。
 「かんがえてあげてね。どんなにじゃまされ、
いじめられても、あなたのことを、おもいつづ
けているの」
 ひとつひとつの言葉に、心がこもっているのが
わかった。
 言霊がとりついていた。
 「よくわかりました」
 と、悠子は答えた。
 
 
 

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