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悠子は、次の日朝早く起き、ひとりで朝食を
すました。
台所にパンの焦げたにおいが、漂っている。
「どうしたの、ゆうこ。早すぎるんじゃない」
起きたばかりの母が言った。
悠子は、どきりとしたが、
「ちょっと用があるのよ、学校で」
と、言いつくろった。
「ふううん。めづらしいわね」
悠子の顔を、じろじろ見た。
「何よ、母さん。あたしだって、もう大人よ」
「あら、そうだったわね、ごめんなさい」
母は、歯ブラシを口にくわえて話していた。
声が聞き取りにくかった。
口をゆすごうと、洗面所に戻っていった。
悠子は、腕時計を見た。
早く家をでなくては、陽一に逢えなくなる。
夕べは、陽一のことを考えて、よく眠れな
かった。彼の気持ちがわかったからには、
なんとしても、自分の気持ちを早く伝えたい
と思った。
陽一は、最近休みが多い。
無理もない。
いじめられてばかりだからだ。
学校に来るかどうかわからないが、家の近
くまで、出かけることにした。
自転車をとばした。
五分後。
家のまわりに、人影はない。
物陰にかくれて、家の二階を見あげた。
二階が子供部屋だ、と思った。
窓のカーテンは、閉まっている。
十分だけ、待ってみることにした。
三毛猫が寄ってきて、足元にからみついた。
しゃがんで、猫を抱きあげようとすると、玄関で、
ガラガラと音がした。
買い物かごをさげた女の人が出てきた。
みゃあと鳴きながら、猫は走って行った。
彼女は、猫を抱きあげると、ほほずりした。
陽一のお母さんに、ちがいなかった。
自転車を乗りだして行く。
門をでて、路地を左にまがった。
ふいに、二階のカーテンが開いた。
よういちくん。ようちゃん。
心の中で、さけんでみた。
目が覚めたばかりのような陽一の顔が、
のぞいた。
悠子は、両手をふった。
陽一は、急に窓をしめた。
姿が、見えたはずだわ。
悠子は、心の中で言った。
何らかの意思表示をしてくれると思った。
十分が、とっくに過ぎていた。
急がないと、学校に遅れてしまう。
悠子は、がっかりした表情で自転車を押し
はじめた。
角をまがると、陽一が、パジャマ姿で、立っ
ていた。
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