|
襖が開いた。
一美がお盆をもって現われた。
「ようこそ、いらっしゃいました」
と、立ったまま、言った。
一郎は、だまっている。
「どうしたの」
湯呑茶碗を、一郎の前においた。
お茶の香りがただよった。
「今、きみのご先祖さまのことを考えていた
のさ」
「まあ、うれしいわ。ありがとう」
「お父さんに似てるね、一美は」
「小さい頃からそう言われていたわ」
「娘は父に似るって、世間で言うけど、その
とおりだ」
「妹がいるけどね。あの子は母に似てるし。
どう、わたし、おじいさんに、似てないかしら」
一郎は、もう一度遺影を見つめた。
「ううん。そっくりだ。お父さんより、おじいさん
に似たんだね」
「隔世遺伝って、怖いほどよ。父方の先祖は、
昔、山梨の方からこちらに来たらしいわ」
「へえ。武田信玄公の末裔かな。ルーツを求
める番組がはやったことがあるけど、とても面
白かったよね。どんな方がいて、どんな生涯を
送ったんだろう。興味がつきないね」
「ねえ、お勉強は、そこまでにしない。おなか
すいたでしょ」
一郎は、右手でおなかをさすった、
「そういえば、コンビニに寄って、サンドイッチを
一切れ食べたきりだったね」
「母が鯉料理をごちそうしようと頑張っている
のよ」
「鯉こくを食べたことがある。病人に食べさ
せるほどに、栄養があるからね」
「食べてくれるよね」
「うん。もちろんさ」
「ああ、良かった。嫌いだったらどうしようか
って、思ってたわ」
一美は、いそいそと台所へもどって行った。
|
全体表示
[ リスト ]




細かい所をよく書いていますね。
本と上手いね。。ポチ
2011/11/15(火) 午後 6:22 [ kotuko ]
こんばんは。いつもありがとう。
外に出ると星が煌めいています。今夜は寒くなりそうです。あたたかくして休んでください。
2011/11/15(火) 午後 8:53 [ けっさん ]