娯楽小説

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 恵子は、タクシーに乗った。
 「ちょっと大きめの銭湯までお願いします」
 「はあ、銭湯ですか」
 「この辺りに慣れないものですから。タクシー
に乗ればわかるだろうと思いまして」
 「そうですか。わかりました。S温泉が一番
近いですね」
 「おまかせしますから」
 ビルの谷間を、車は走って行く。
 深夜なのに、車の量が多い。
 恵子にとっては、タクシーでお風呂に行くな
んて、はじめての経験だった。
 「お客さんは、東京じゃないですね」
 「わかりますか」
 「ええ。言葉がちょっとなまっている感じですね」
 「どこだと思いますか」
 「群馬県あたりかな」
 「しばらく草津にいたんです」
 「やっぱりそうですか」
 「私も、栃木から出稼ぎに来ているんですよ」
 「私はダンサーなんです。ほやほやの」
 「ほう、そうですか。何だっておんなじです。
なかなか厳しいでしょうが、頑張ってください」
 十分くらい走った。
 左側に、S温泉のネオンが見えてきた。
 「あのう」
 運転手が不安げに言った。
 「なんですか」
 「もしもお風呂に入れなかったら」
 「入れないってこと、あるんですか」
 「会員じゃないと、入場を断られることがあ
るんです」
 「ええ、そんなことって」
 「あるんです。私、玄関で待ってますから」
 四十くらいだろうか。
 誠実な運転手だと、恵子は思った。
 初めから、店のおばさんに聞いて出てくれ
ばこんなに苦労することはなかったんだがと、
恵子は、自分の失態を笑った。
 だけど、お店は営業中だったし。
 まあ、仕方ないか。何だって、勉強だ。
 玄関を入ると、フロントがあった。
 女の受付係に、会員制ですからと、やんわり
断られた。
 
 

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毎日たくさん書きますね、凄いね、私も色々考えますが難しいです、ポチ

2011/11/16(水) 午後 10:12 [ kotuko ]

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こんばんは。何度もありがとう。
イメージが浮かぶんですよ。それを書いておかないと、忘れてしまうような気持ちになるんです。

2011/11/16(水) 午後 10:21 [ けっさん ]


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