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マリモは、S子の膝からとびおりた。
ふきのはやしをかきわけて行く。
すぐに後戻りしてきた。
頭だけ出して、にっこり笑った。
頭に赤いリボンをつけている。
髪の毛があるのに、S子は今まで気づかなかった。
「まあ、かわいいわね」
思わず言った。
「こんな所で何をしてるの。寒くない。おなかの子供は、大丈夫かい」
突然夫のAが、不安げな表情で声をかけた。
スーツを着たままである。
両手でマリを抱いていた。
S子がふりむいた。
「まあ、いつからそこにいたんですか。知らなかったわ」
「今、帰って来たばかりなんだ。家の中にいないから、探したんだよ」
「ごめんなさい。あら、そうそう。すみませんけど、マリを家の中に入れてくださる」
「いいけど。どうして」
「どうしても」
「変だな。今までそんなこと、言ったことないのに。まあ、いいや」
マリは、Aの胸の中であばれた。
外にいたいのだ。
それに、匂うのだ。
変なのがいるぞ。
マリは、みゃあみゃあ、と鳴いた。
Aは戸を少し開けると、マリの身体をそっと投げ入れた。
「おかしいな。マリがこんなにあばれるなんて」
と、Aは独り言を言った。
AはS子のところに戻りながら、両手をパンパンと鳴らした。
右手を内ポケットに入れる。
ふところから、きれいな紙で包まれた小さな箱を出した。
赤いバラの絵が、所々に見える。
S子にさしだした。
「ほら、開けてごらん」
ふたりは、石垣にならんですわった。
包装紙をきれいに開けると、紫色の入れ物があらわれた。
ネックレスに違いない、とS子は思った。
ふたを開けた。
きらっと光った。
金色のネックレスの先に、赤いルビーが付いている。
「まあ、素敵。こういうのが欲しかったのよ」
「よかった。喜んでくれて」
S子は、右手にそれを通すと、上にあげた。
ルビーが陽を受けて、きらきら光った。
マリモが驚いて、頭をかくしてしまった。
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