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赤子の眼はとろんとしている。
マリが騒ぐたびに、からだをびくっと動かす。
「かあちゃ」
S子の耳元で、マリモの声が聞こえた。
薄青い霧が内ポケットから漂っている。
異変を感じて、S子は猫のからだをつかんだ。
廊下におろした。
みゃあああ。
見上げたままで、マリは立ち去ろうとしない。
「しっ」
S子は怒った。
マリはシッポをふって、ふきげんを露わにした。
S子は、左の手でこぶしを作り、
「向こうへ行きな」
と言った。
S子は胸元をのぞいた。
ルビーが陽を受けて、きらきら光る。
手に取ってみた。
何か変だった。
「あなた」
テレビを見ているAを呼んだ。
「なんだい」
「これ見てよ」
「最初の色と違うみたいだ」
「どうしたんでしょうね」
「店の人が言ってたんだけど」
「なんて」
「ルビーの色が変わった時は、気をつけてくださいって」
「へえ。不思議ねえ。そんなパワーがあるんだ」
Aは眉をひそめた。
「何か変わったこと、なかったかい」
S子は考えをめぐらす。
あっと、思った。
内ポケットを左手でさわった。
何も入っていない。
S子はあわてた。
確かにマリモを入れたのだ。
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