怪奇小説

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さびしい その17

 赤子の眼はとろんとしている。
 マリが騒ぐたびに、からだをびくっと動かす。
 「かあちゃ」
 S子の耳元で、マリモの声が聞こえた。
 薄青い霧が内ポケットから漂っている。
 異変を感じて、S子は猫のからだをつかんだ。
 廊下におろした。
 みゃあああ。
 見上げたままで、マリは立ち去ろうとしない。
 「しっ」
 S子は怒った。
 マリはシッポをふって、ふきげんを露わにした。
 S子は、左の手でこぶしを作り、
 「向こうへ行きな」
 と言った。
 S子は胸元をのぞいた。
 ルビーが陽を受けて、きらきら光る。
 手に取ってみた。
 何か変だった。
 「あなた」
 テレビを見ているAを呼んだ。
 「なんだい」
 「これ見てよ」
 「最初の色と違うみたいだ」
 「どうしたんでしょうね」
 「店の人が言ってたんだけど」
 「なんて」
 「ルビーの色が変わった時は、気をつけてくださいって」
 「へえ。不思議ねえ。そんなパワーがあるんだ」
 Aは眉をひそめた。
 「何か変わったこと、なかったかい」
 S子は考えをめぐらす。
 あっと、思った。
 内ポケットを左手でさわった。
 何も入っていない。
 S子はあわてた。
 確かにマリモを入れたのだ。
 

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