逃げるシリーズ

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乱れる その2

 タロウのからだを抱くと、道端に寄った。
 黒い人影が前を通り過ぎて行く。
 甘い香りが少年の鼻をくすぐった。
 タロウが、歯をむきだしてうなった。
 少年の胸で、からだを動かす。
 どさりと地面に落ちると、勢いよくかけだした。
 女は、きゃっと叫ぶと、走りだした。
 タロウを止めなくては、と少年は思った。
 チェーンを引っぱった。
 タロウは、強情だ。
 少年は、途中で引っぱるのをやめた。
 おかしなことだが、タロウにまかせることにした。
 女のあとを追いかけて行く格好になった。
 いけないことをしている、と分かっている。
 次第に、わけが分からなくなった。
 しびれるような快感が少年を襲った。
 石につまづいたのか、女がころんだ。
 タロウが追いついた。
 女のからだをかぎまわっている。
 少年は首に巻いていたマフラーで、顔を隠すようにした。
 「だれ、誰なの」
 少年は、黙ったままだ。
 チェーンを手から放した。
 タロウがコートの裾にかみついた。
 女は、両手で顔をおおい、
 「お願い、助けて」
 と何度も髪をふりみだした。
 「ふん、ざまをみろ」
 信じられない言葉が少年の口から出た。
 女は、泣き出した。
 少年は女の背後にまわると、両手で抱いた。
 やわらかい肉体の感触がつたわって来た。
 頭がくらくらした。
 夜の闇が、少年を変えた。
 今までおさえこんでいたものが、むっくりと立ちあがって
来るのを感じていた。
 
 
 
 
 

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