|
タロウのからだを抱くと、道端に寄った。
黒い人影が前を通り過ぎて行く。
甘い香りが少年の鼻をくすぐった。
タロウが、歯をむきだしてうなった。
少年の胸で、からだを動かす。
どさりと地面に落ちると、勢いよくかけだした。
女は、きゃっと叫ぶと、走りだした。
タロウを止めなくては、と少年は思った。
チェーンを引っぱった。
タロウは、強情だ。
少年は、途中で引っぱるのをやめた。
おかしなことだが、タロウにまかせることにした。
女のあとを追いかけて行く格好になった。
いけないことをしている、と分かっている。
次第に、わけが分からなくなった。
しびれるような快感が少年を襲った。
石につまづいたのか、女がころんだ。
タロウが追いついた。
女のからだをかぎまわっている。
少年は首に巻いていたマフラーで、顔を隠すようにした。
「だれ、誰なの」
少年は、黙ったままだ。
チェーンを手から放した。
タロウがコートの裾にかみついた。
女は、両手で顔をおおい、
「お願い、助けて」
と何度も髪をふりみだした。
「ふん、ざまをみろ」
信じられない言葉が少年の口から出た。
女は、泣き出した。
少年は女の背後にまわると、両手で抱いた。
やわらかい肉体の感触がつたわって来た。
頭がくらくらした。
夜の闇が、少年を変えた。
今までおさえこんでいたものが、むっくりと立ちあがって
来るのを感じていた。
|
逃げるシリーズ
[ リスト ]



