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峠まであと一息だ。
あたりは新緑におおわれている。
「ミキっぺ、いいか。しっかりつかまってろ」
竜夫のボデーにまわした美樹の両腕に、ぐっと力がこもる。
両側の景色が、急速に後ろに流れはじめた。
「すごい、すごい。もう最高」
美樹の甲高い声が、フルフェイスの中でくぐもって聞こえる。
気持ちがいいんだろな、ミキっぺ。
もちろん、竜夫にも、すごい快感であったが・・・・・・。
五歳年下の美樹のほうが、グレートだ。
まるでセックスのクライマックスにいるようだわ。
身体がふわりと飛んじゃう。
そう、何度も、野太い声でのたまった。
感極まって失神してしまわないか、と竜夫は恐れる。
ちょっとおおげさな奴だと判っているから、
うるさいほど声をかける。
苦い体験がある。
後ろに乗っていた女が両手を放したのだ。
ヘルをかぶらずに同乗していた。
いくら言っても、訊かなかった。
スイカのようにヘッドが割れた。
五年前のことだ。
すぐに、プンとふくれるところが可愛かった。
好きな女だっただけに、なかなか忘れられないでいる。
男の方が、女よりもずっと想いを引きずる。
バイクを乗りはじめて、十年。
今、二十八歳だ。
ちょっと遅すぎた感はあるが、仕方がない。
家族の反対にあったからだった。
十四、五歳で事故リ、帰らぬ竹馬の友がいる。
渋川から信州上田まで行く途中である。
もう二時間くらい走ったろうか。
長野原は過ぎた。
山道は、右に左にゆるやかに曲がりくねっている。
ひとつひとつのカーブを、竜夫は巧みなハンドルさばきで走りぬけていく。
時折、はるかかなたに浅間山の赤黒い山肌を見ることができる。
ここでハンドルを右に切らなけりゃ、即、鳥になっちゃうな。
左側にはガードレールがないし・・・・・・。
ずいぶん危ない場所だが、バイクドライバーにとっては腕試しに持ってこいである。
竜夫はぐっと歯をくいしばって、上半身を右に倒した。
バイクと路面が鋭角をつくった。
「美樹、じっとしてろな」
くどいほど注意する。
「うん、わかったわよ、ほら」
と、両手で後ろのパイプをつかんだ。
「このお、死んでもしらねえから」
ベアハッグをかけるように、美樹は竜夫のボデーを両手でつかんだ。
ゴムまりの胸が、竜夫の背中で押しつぶされた。
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この幸せそうな二人に
どんなドラマが訪れるのでしょうか。。
2012/5/24(木) 午後 8:32
こんばんは、ももさん。
物語がはじまりました。さて、どうなるのでしょうか。まだ、私にもわかりません。がんばりますので、楽しんでください。
2012/5/24(木) 午後 8:38 [ けっさん ]