|
ある日の土曜日の午後。
百合子は、校門の外にいた。
陽一の想いを、悠子に伝えるためだった。
女は女同士だ。
女の気持ちは、女でなくてはわからないところがある。
悠子が、校門を通り過ぎるのを、待った。
私服姿である。
三年生は、部活動が、夏休みをさかいにして終わっていた。
校門の道の向こうに、川が流れている。
川岸にたたずんで、百合子は、色づきはじめた山を眺めていた。
お山はこんなにきれいなのに。どうして人は、人をいじめるのかしら。
人の心って、一体どうなってるのだろう。
百合子の脳裏に、ものがなしい旋律が浮かんできた。
悠子が、自転車に乗ってやってきた。
校門を通りすぎたところで、右に曲がった。
百合子が、大きな声をかけた。
「なかつさあん。ゆうこさあん」
悠子は、自転車をとめた。
あたりを見まわしている。
百合子をみとめたが、今までに話したことがない。
先輩でもあった。
返事をするのを、ためらった。
「ゆうこさんでしょ」
近づいて来た百合子に、思わずうなずいた。
「そうですが、先輩、私に何かご用でしょうか」
「話があるのよ。ちょっとこっちへ来てちょうだい」
ピアノのじょうずな人だとは、知っている。
ほかのことは何も知らないが、優しそうに感じた。
悠子は、美知たちにつけまわされて、うんざりする毎日を過ごしてきた。
とても不愉快な気持ちでいた。
そのせいで、人を見る目が養われてきた。
土手の草の上に、ならんですわった。
「呼びとめて、ごめんね。ちょっとお話したいことがあって」
「何でしょう」
悠子は、不安な表情になった。
長い髪を、手でいじっている。
「すてきなことだから、心配しないで。ほら、見て。紅葉が始まったわ」
「ほんとですね。ちっとも気づきませんでした」
「ねえ、あたし、いじめられて、すごく落ち込んだことがあるの」
「先輩が、ですか」
「ええ。ほら、ピアノをみんなの前で弾いたりするでしょ。それが気にいらない人がいるってわけ」
「なるほど。わかります」
「私もです。最近、廊下を歩いていると、邪魔をされたりするんですよ。理由はよくわからない
んですが」
「知ってるのよ、その訳を。私、ある人から聞いたの」
「ええっ。そうなんですか」
「その訳を知りたいと思わないこと」
「はい。知りたいです。とっても」
女生徒の一団が、校門からでてきた。
何かの話をしては、きゃあきゃあ叫んでいる。
美知が先頭だった。
「あっ、悠子ちゃん。ちょっとこっちへ来て」
木陰に場所を移した。
悠子も美知がどんな先輩かを、知っているようだった。
彼女たちが通りすぎるのを待った。
「なんだか面白いわね。わたしたち」
「ええ。仲間みたいですね」
ふたりで顔を見合わせて、微笑んだ。
|

- >
- エンターテインメント
- >
- 超常現象
- >
- 都市伝説



