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「何か用なの、こんなに朝早く。あわてて
おりて来ちゃったよ。こんな格好でごめん」
陽一は、スリッパをはいている。
パジャマのズボンの片方が、膝までめくれ
あがっていた。
「わたしこそ、急に来ちゃってごめんね」
それだけ言うと、ふたりはだまった。
悠子は、陽一の瞳をじっと見つめた。
何か言わなくてはと、陽一は必死に言葉を
さがした。
「あっあのさあ」
「思っていてくれたんだ、私のことを」
悠子の目に、涙がにじんだ。
陽一は、恥ずかしそうにうつむいた。
「ようちゃん、顔をあげて」
涙が、頬を伝って流れている。
陽一は、
「そうだよ。ゆうちゃんが好きなんだ」
と、男らしく答えた。
「邪魔されてたらしいわね」
「悠子に近づくなって、言われたこともある」
「まあ、ひどい。だれが言ったの」
「サチさ」
「なるほどね。これでわかったわ」
「ずいぶん色んなこと知ってるね。誰から
聞いたの」
「今は。言えないけど。そのうち教えるわ」
「誰だっていいけど、その人、キューピットだ」
悠子は微笑んで、
「ほんと、そうね」
と言った。
「とてもうれしいよ。まさか来てくれるなんて
夢にも思わなかったもの」
角を曲がって、陽一の母が自転車に乗って
現われた。
「あら、よういち。そこで何してるの」
と、声をかけた。
十メートルくらい離れている。
「じゃあ、あたし行くわね」
「うん、学校でね」
母が陽一のそばに来た。
「そんな恰好で。女の子としゃべってたんだ。
あの子、誰なの」
「クラスの友達」
「まあ、あんたもすみにおけないわね」
と、陽一の肩をぽんとたたいた。
了
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