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階下で、S子の声がする。
「あなたあ。お茶がはいりましたよう」
「おおい。わかった」
夫のМは、すぐにおりて行かない。
pcの前にすわりつづけている。
「あなたあ。聞こえないのう」
Мは、夢中で物語を描いている。
妻の声が、邪魔だなと思っている。
「あたしのこと無視するの。ご飯つくってあげないわよ」
痛いところをついてくる。
さすがは長年の付き合いだ。
Мは、おしまいのクリックを押した。
「あなたあ。これが最後のよびかけよう」
「はあい。今やめましたあ」
「あらそう。よかった。おりていらっしゃい」
どんどんどん。
どしんと、一階にМの両足が着いた。
S子は、居間でテレビを見ながらお茶を飲んでいる。
「はい、どうぞ」
「ありがと」
「あたしが最初に声をかけてから、どのくらい時間がたったでしょうねえ。あんたが降りてくるまで」
「ごめん、ごめん」
「お話を描いていたもので」
「まあいいけど」
「ありがとう。不思議なくらいだよ」
「何が」
「こんなにお話が描けるようになるなんてさ」
「この三カ月毎日がんばっていたものね」
「うん」
「あんたにはそんな才能が隠れていたのね」
「おれだってわかんなかったよ」
S子がお茶をつぎたした。
「ほんというとね。あたしさびしいのよ」
「ああっ、正直だね」
「今度あたしが呼んだらもっと早くおりてきてね」
「はい。わかりました。あなたさまのことを大切にいたします」
「わかったら、それでよろしい」
S子は、せんべいを二つに割った。
半分をМに渡した。
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