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 ジュリが目を覚ました。
 車の中にいることに気が付くまでに、時間
がかかった。
 胸や下腹が、妙に涼しかった。
 ブラとパンティが、座席に無造作に散らばっ
ている。 
 男のごつごつした手で、乳房や秘所をいじ
られた感触があった。
 覚悟は出来ていたものの、思わず涙が出た。
 「この野郎、ばかこけすっとこどっこい。眠っ
ているうちにやるなんて。でれすけやろう」
 アンを見た。
 素っ裸だった。
 男の指は、アンの股の間の裂け目を開いて、
 入れたり出したりしていた。
 ナイフを突き付けられて、男のいいなりに
なっていた。 男の肉の棒をくわえさせられて
いるところだった。
 ジュリは、どんな時でも冷静でいるように、
病気で亡くなった父から諭されていた。何
とかして、逃げだす手立てを考えていた。
 後部座席に男がふたり、前にはネズミ顔の
男がひとりで運転していた。
 アンの行動を、バックミラーに映して、あざ笑
いながら見ていた。
 「次は、俺の番だぜ」
 にやりと笑った。
 どのくらい走っただろう。
 船の汽笛が聞こえた。
 人でにぎわう桟橋を通りすぎていく。
 閑散とした港のはずれに、車は停まった。
 荒れ果てた工場が見える。
 「おりろ」
 ネズミがいった。
 ふたりは、引きずられるように、工場に
連れ込まれた。
 ドアは、開け放たれたままだった。
 がらんとした空間が、目の前に広がった。
 ジュリは、思わず身をすくめた。
 コンテナくらいの大きさの事務所があった。
 「そこに入れ」
 男たちが二人を無理やり椅子にすわら
せ、油まみれになったロープでしばった。
 「じっとしてろよ。今にいい所に連れて行っ
てやるから」
 ネズミ顔の男が、ジュリのうなじにくちび
るをはわせながら、言った。
 
 
 まわりを男たちに囲まれて、ジュリとアンは、
改札口を抜けた。
 逃げるチャンスだった。
 ジュリが、アンに目配せした。
 アンは、分かったというように、わずかに
頭を下げた。
 様子がおかしいと思ったのか、ネズミ顔の
男が、「わきが甘いぞ」と、怒鳴った。
 ジュリが、
 「たすけてえ」
 と、叫ぼうとした。
 口を、黒いハンカチでふさがれた。
 甘い香りが鼻を刺激した。
 ぐったりした彼女の身体を、ハンカチを持
った男が背負った。
 中年の紳士が、
 「どうしましたか」
 と、心配そうに、かけ寄って来た。
 「連れなんです。ちょっと合コンの席で飲
みすぎました」と言いわけした。
 線路わきの高いビルの壁に、アンは押しつ
けられた。 
 「ちょっとでも声をあげてみろ。これがだまっ
ちゃいないぞ」
 背の低い、腹の出た男の背広の上着の内
ポケットの中で、ナイフがキラリと光った。
 二台の黒塗りの乗用車が停まった。
 「これに乗れ」
 先に、アン。
 続いて、ジュリが麻袋のように投げ込まれた。
 ネズミ顔が、運転だ。
 ビルの谷間を、疾走していく。
 田舎から出てきたアンには、初めて見る光
景だった。
 道路の広さ、車の量、建物の多さが田舎町
とは、まったく違った。
 別世界だった。
 こんな街。何にも分からないわ。
 まして、ここに住む人たちのココロといったら、
どんなものか、かいもく見当がつかない。
 まるで、エイリアンだわ。
 恨みを買った男たちに、これからどんなめに
あわされるか、想像がついた。
 丸裸にされ、かわるがわる男の相手をさせ
られ、あげくの果てには、どこかに売り飛ばさ
れる。
 突っ張ってはいたが、それはうわべだけの
ことで、内心は、子供じみたものだった。
 アンは、生きて彼らから逃れられないだろう
と、思った。 
 
 
 ホームで、ジュリはジーパンのポケットか
ら、ケイタイを取りだした。
 ルリとの待ち合わせ場所を確認するのだ。
 呼び出し画面が出た。
 一回、二回、三回と呼び出しが繰り返され
たが、ルリは、出なかった。
 連絡がつかないと、電車に乗るわけにもい
かない。
 椅子にすわって、待つことにした。
 男を真ん中にして、三人ですわった。
 「何か、冷たい物が飲みたいな」
 アンが、男の顔をのぞきこんで言った。
 男は、立ち上がって、ズボンのポケットか
ら札入れを取りだした。
 「コーラでいいですか」
 「ああ、いいよ」
 アンが、当たり前だというような顔で言
った。
 ジュリのケイタイが鳴った。
 「もしもし、ルリさん」
 「ジュリか。せっかく来てくれたんだけど、
今日は、会えないや」
 「どうしてですか」
 「サツが、アパートをかぎつけて、自由に
出入りができない状態なんだ。あちこち友
達と逃げまわっているんだ。当分エンコウは
無理だ。お前たちも、気をつけろな。適当に
遊んだら、田舎に帰ったほうがいいよ」
 「そうですか、わかりました」
 ルリは、必要なことだけ話すと、すぐに電
話を切った。
 アンに、ルリからの伝言を伝えた。
 「どうする」
 「田舎に帰った方がいいって、ルリが言う
んだ。ちょっと遊んだら、帰ることにしよう。
お金もないしさ」
 「そうだね」
 「それにしても、あいつ、遅いな」
 「どこまで行ったんだろう」
 椅子の後ろで、何人かの若い男の声がした。
 アンの首筋に固い櫛のような物がおかれた。
 ちらっと見た。
 キラッと光った。
 サバイバルナイフのようだ。
 青いハンカチに包まれていた。
 「俺の免許証を出してもらおうか」
 あいつの声だった。
 ダチを、連れて来たのだった。
 皆で、五人いる。
 前に四人まわった。
 椅子にふたりすわり、あとのふたりは、ジュ
リとアンの前に立った。
 ナイフを包んだハンカチで、アンの頬をポ
ンポンとたたいた。
 バッグから、免許証を取りだした。
 わきにいた男の一人が、すばやくそれを奪
った。
 ネズミ顔の男は、
 「ちょっと顔かしてもらおうか」
 と、言った。
 両脇をかためた男が、ジュリとアンの腕を取
った。
 
   
 ジュリとアンの間に、ひょろ長い背丈の男が
挟まれている。
 秋葉原の長いエレベーター。
 頭をきょろきょろ動かしている。
 何とかして逃げ出したいが、前と後ろをかた
められていた。
 降りた時がチャンスだ、と思っていた。
 「逃げようとしたら、こいつは痴漢ですって、
大声をだすからな」
 ジュリが、おどした。
 エレベーターを降りた。
 総武線のホームだ。
 土曜日だ。
 行きかう人で、あふれていた。
 男が、かけだした。
 ふたりが、あとを追う。
 「その男、痴漢です。捕まえてください」
 五、六歩、進むのが精いっぱいだった。
 人の壁に阻まれて、ホームにしゃがみこん
だ。 女たちに、にらみつけられた。
 「さあ、きょうだい」
 ジュリが、男をみおろして言った。
 「逃げようなんてしたって、無駄なこった」
 ジュリが男の身体を抱えあげた。
 左腕をとって、自分の右腕をからめた。
 アンは、男の右側についた。
 男は、しおれた花のように元気がない。
 「あんた、何も煮て食おうなんて言うんじゃ
ないんだ。あたしらの言うことを聞いてもらえ
ばいいことなんだよ」
 ジュリが慰めるように言った。
 「何やればいいんですかい」
 「ちょっとした手伝いさ」
 アンが、口を開いた。
 「おめえも、いい想いをしたんだろ。パン
ツを下げて、股間をまさぐったりしたろ。あ
たしに恥ずかしい想いをさせたんだ。それ
だけの責任は取ってもらうぜ」
 「済みませんでした。かっ、金を払います
から、勘弁して下さい」
 「もちろん、金はいただくさ。でもそれだ
けじゃ腹の虫が収まらないからな」
 男は、大変な連中に悪さをしたものだと
思い知らされた。
 ジュリが、付けくわえた。
 「おめえ、もしもここで放してほしけりゃ、
きている物を全部脱ぎな」
 「ええっ」 
 男は、猫に追い詰められたネズミのような
形相をした。
 「そうじゃないか。他人のパンツを、車内
で脱がせたんだ。みんなが見てるんだぞ。
おめえだって、そのくらいの恥ずかしい目に
あってもらわないと、割りにあわねえ」
 アンが、ズボンのベルトに手をかけた。
 「わっ、わっかりました。何でも言うことを
聞きますから。手を放して下さい。もう絶対
に逃げませんから」
 「おめえ、免許証を持ってるかい」
 「はい」
 「見せてみろ」
 後ろのポケットから、取り出して、アンに
渡した。
 「これは、しばらく預かっておく」
 「そっ、そんなあ」
 男が、あわてて取り返そうとしたが、アン
は、その手をたたいた。
 ジュリが、からめた腕を放した。
 男は、背中を丸めた。
 男の身体が、しぼんで小さくなったように
見えた。
 三人は、人に押されたり、ひっぱられたり
しながら、山手線のホームに着いた。
 
 
 アンは、しばらく、男を泳がせておいた。
 初めは、遠慮がちにさわっていたが、抵抗
しないと見るや、大胆になった。
 アンのパンツを下げはじめた。
 はあはあと、息遣いが聞こえる。
 電車の揺れに合わせて、前後にからだを動
かしている。
 男の行動は、さらにエスカレートした。
 日にちがたって黒くなりはじめたばななの
ような小さな肉の棒を、ズボンの中からつま
みだそうと、必死になっている。
 「いてて」
 と、小さく、うめいた。
 チャックに、皮がはさまったようだ。
 男の顔面が蒼白になった。
 車内は、混雑している。
 男の振る舞いが目だたない。
 近くの中年男が、痴漢行為に気づいた。
 ジュリは、目で合図を送ったが、男は視線を
はずした。
 意気地のない男ばかりだ。
 ジュリは、蹴飛ばしてやりたくなった。
 秋葉原は、もうすぐだ。
 ジュリは、ネズミのような顔をした男の左手を、
思い切ってつかんだ。
 男は、彼女の手を振りほどこうとして、右に
左に回した。
 右手で、彼女の手の甲をひっかいた。
 「ちぇ、この野郎」
 ジュリのひざ蹴りが、男のわき腹に入った。
 チャックから、しぼんだ肉棒がのぞいたま
まで、床に倒れた。
 電車が停止した。
 男は、転がるようにして、電車から降りた。
 身づくろいを終えたアンが、男の背中をはがいじ
めにした。
 ジュリが、往復ビンタをくらわした。
 「どうする。このまま公安に引き渡してもいいんだ
けど」
 男のからだが、震えだした。
 「それとも、ちょっとあたしたちとつき合ってくれる」
 男は、ジュリを見上げた。
 ジュリは、にっこり笑った。 
 「付き合います。付き合いますから、警察沙汰には
しないでください」
 男は、哀願した。

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