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最近、無性に聴きたくなった曲について書いてみます。
数年前、富山でツィマーマンというピアニストのリサイタルを聴きに行った時、アンコールとして弾かれたのが、ショパンのピアノソナタ第3番の第三楽章でした。
クラシックファンの間では、それほどマイナーな曲でもないのですが、僕はショパンのCDをあまり持っていなかったので、この曲を聴いたのはこれが初めてでした。
この第三楽章の演奏は、2つの意味でとても印象的なものでした。
一つは、今まで知らなかった美しいピアノ曲と出会えたこと。
もう一つは、自分が今まで実演で聴いた中で最も美しいと感じたピアノ演奏だったことでした。
美しい曲の絶美の演奏に、聴きながら文字通り夢見心地になりました。
それ以来、この楽章はショパンの曲の中で僕の一番好きな音楽です。
僕はショパンの夜想曲集が大好きなのですが、この楽章はそのロマンティックな夜想曲と似ていて、それでいてソナタという形式を重視する曲種らしく甘くなりすぎないバランスが、何度聴いても飽きさせません。
この楽章の構成は三部形式になっています。
(三部形式:A1・B・A2 :主部であるA1、A2と、中間部のBでは異なる旋律を基に音楽が展開されます。)
この楽章には短い序奏があって、暗く厳しい響きで開始されますが、すぐに本編を予告するような淡く美しい旋律が弾かれます。
主部の基本となる旋律やリズムには、どこか民族音楽的なものを感じます。
この主部を聴いていると、静かな暗闇の中で天上からの優しい光に照らし出されるような視覚的なイメージが浮かびます。その光の中で、優しさや、憧れ、諦め、悲しみといった様々な感情が移り変わってゆきます。
長大な中間部は螺旋を描きながら心の内側に沈んでいくような音楽です。
過去を振り返り、悲しみと孤独が深くなってゆきますが、あくまで音楽は美しさを失いません。
中間部から再び主部へ戻るとき、元の場所へ帰ってきた懐かしさを覚えます。
(三部形式の特にこのような叙情的な音楽の場合、そんな感じがします。)
この後半は、前半とは気分がやや変わっていて、心の中に何か結論を出して、前へ進み始めるような気持ちが感じられます。その少しの変化がとても感動的です。
※今回は第三楽章だけ取り上げましたが、この曲は4楽章の曲で全曲通して充実した名曲だと思います。
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