貧乏神に負けない考え方(前編)2011.04.30
今、日本全体が、そうした〝貧乏神〟的な考え方に引っ張られている状態です。結局、質素倹約や貯蓄にまわる理由は、「先行きの見通しが悪くなると思っている」ということなのです。
「国の先行きが悪くなり、会社の先行きも個人的な家計も先行きが悪くなって、不測の事態がたくさん起きるのではないか」と思うようになると、やはり質素倹約・貯蓄型になってきます。江戸の三大改革なども、みな、それです。
ところが結果は残念ながら、そういう改革の結果はすべて不況が起きているのです。経済の原理は、必ずしも改革しようと思ったようにはなりません。
現在は本当を言うと、日本人の個人資産は合わせれば一千四、五百兆円あるので、お金がもう少し循環すると経済を大きくすることができるのですが、みんなが買い控えて、たんす預金にしている傾向が強いのです。
「デフレで物の値段が先行き下がっていくから、物を買わないで現金で持っていたほうが得だ」ということになって、現金のままで持っている。預金や、たんす預金などで隠している人がいて、このたんす預金をどうやって引っ張り出そうかと、政府が一生懸命考えている状況に近いかと思います。
先行きが悪くなるというのなら、どんな物にも投資する気が起きなくなるし、物を買ったって、来年買ったらもっと値段が下がるのであれば、買う気がしませんよね? 今年買ったら五千万円のマンションが、来年なら四千五百万になり、再来年なら四千万になるというように下がってくるなら、買っただけ損をします。
株だって、株を百万円買ったら、来年が八十万になって、再来年が六十万になって下がっていくなら、買ったら損するじゃないですか。結局みんな、動かなくなります。
不況の時こそ外車を買った松下幸之助氏ただ、世間全体を見ると、一方的に全部の会社や個人が上り坂ということもなければ、全部が下り坂ということもなく、いつの時代でも、比率は代わりますが、上に向いているものと下に向いているものとが同時に存在しています。
ですから、大不況期にも儲けている人が世の中にはいるわけです。本当の大富豪になった人たちはみな、その大恐慌や大不況のさなかに、見事に投資を成功させた人たちなのです。世間一般に、不況とか恐慌とか――「百年に一度の恐慌」とかいう言葉は嘘だったようですが――そういう言葉が飛び交っているときに、見事に投資をピシッと決めた人が、実は、次の時代の富豪や財閥になってくるのです。
貧乏神を追い出して、福の神を味方に付けているかどうかは、まさしく、ここにかかっていると思わざるを得ません。そういう直感的判断にかかっていると思います。
戦前、一九二九年のニューヨーク発の世界恐慌で、日本にも大不況がやってきて、大卒の就職口がなく、東大法学部を出て就職できないという時代が来たことがあります。
そのときに松下幸之助氏が、無理してという言葉は当たらないかもしれませんが、高級外車をドーンと一台買ったことがありました。「こんなときこそ、お金を使わなければいかんのだ。こういうときにお金を使わないと使うときはないんだ」と言って、当時としてはかなり破格の、日本に五台ぐらいしかないような高級車を買ったようです。
それは本当は、車の代金だけが問題なのではありません。その車の代金だけで日本の経済が潤うわけではないのですが、本当は気持ちの問題なのだろうと思います。
「まだまだ世界が暗くなって、もう、どうにもならなくなる」と思うか、「まだまだ発展させるぞ」と思うかの気持ちの問題であって、それは経営者としての自分自身に対する、馬で言うと尻に当てるムチみたいなものだったかもしれないと思うのです。そのように、優秀な経営者で大不況期に外車を買ったりしたような人もいるのです。
バブル期にも先見の明で周囲と反対の判断また、逆にバブル期に土地がどんどん値上がりしていったとき、松下電器(現パナソニック)は反対の判断をしました。
松下電器は地方に工場を出していましたが、工場を建てたら必ず土地の値段は上がるのです。例えば、工場の敷地が五万坪必要だとしたら、十万坪ぐらい土地を買い占めておいて、そのうちの五万坪に工場に建て、残りの五万坪を持っていたら、だいたい地価が二倍になるので、地価が二倍になったところで残りの五万坪を売り飛ばしたら、工場の投資代金が全部回収できてしまいます。丸儲けですね。ただで工場を建てたのと同じ効果が出るわけです。
そういうことができたにもかかわらず、松下氏は、それをしなかったのです。「これは、本業でないから」と。「電器屋は電気製品をつくってコツコツと儲けるのが本業であるにもかかわらず、不動産投資で儲けたら、本業とは違うので、将来的には会社を潰す原因になる」と言って、必要な土地以外は買わないということをやりました。
必要な土地以上のものを買ったのは、例えば、ダイエーや、そごうなどです。どちらも経営危機を経験していますが、ダイエーなども広い土地を買って、店舗を建てたら必ず地価が上がるので、担保価値が上がる。担保価値が上がったらその土地を担保に借金をして、次の土地を買って、また建てる。そしてまた地価が上がり、それを担保にしてお金を借りて建てるというように、膨らませていく感じで財産を増やしていきました。
そごうも、やはり駅前に巨大旗艦店をボーンと建てて、そうしたら駅前だから必ず土地が値上がりします。グワーッと担保価値が上がるので、そうやって担保価値を上げて、銀行から借入金して次の店を駅前に出す。また土地代がガーッと上がる。それでまた次の店を出すという、借金を膨らませていくタイプの経営をやりました。
そういう経営をやったダイエーとそごうが両方、その後、いろんな店が閉鎖や撤退になったことがありますので、松下幸之助さんは先見の明がありました。
本業ではないところで稼ごうとしすぎたら、やはり失敗することもあるということです。一般法則が必ずしも当たるとは限らないのです。
節約における「自分なりの限度」を考えるですから、「こういう質素倹約をしておくのが安全だ」ということもあるとは思いますが、自分なりの限度を考えておけばいいでしょう。
例えば、三分法で考えることもできます。まず「防衛ラインとして、このぐらいのお金は確保しておかなければならない」という限度。それから中間帯で、どちらにでも裁量が効くようなところ。あと三分の一ぐらいは、好況であろうと不況であろうと、投資ないしは将来に役に立つもののために使っていかなければいけない部分として、考えてもいいと思います。
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