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■1DAYS 雨+記憶のWednesday
東京では梅雨入りしたというのに夏かと思う様な猛暑が2〜3日も続いていた先週。僕はそんな中、この暑さから少しでも解放出来るかの様な場所、軽井沢に撮影の為、車を走らせていた 久しぶりに、このアスファルトジャングルの様な街から避暑地の涼しい場所の仕事という事で、 心はどことなく観光気分で弾んでいたのだが、ひとつだけ気なる事と言えば一緒に同行するスタッフの2人が見た目からして暑苦しいという事だけだだろうか.......... 身長180センチに体重110キロの広瀬を筆頭に、そのアシスタントで付いてきた小暮も170センチの身長に108キロとまるで像の親子を乗っけてのアニマルツアーは今まさに始まろうとしていた。 行きの車の中、どことなく酸素が薄くなるような違和感を感じながら、エアコンの効いた車の中は 妙な熱気に包まれていた。僕は普段の食事の事や学生時代のスポーツの話しをしながら年齢とともに 増えていく微妙な体重の話しで盛り上がっていた 「モノクロさんは、部活、何やってました?」
「部活って.....うちの方は田舎で子供が少なかったからね」
「強いて言えば野球をやっていたかな......」考えてもみれば、町中の子供を集めても15人たらずという場所で、到底部活などと言える程のものは 存在しなかった。15人の子供たちは、それぞれが掛け持ちでいくつかのクラブ活動に参加して 隣町との試合となると2つも3つも違う競技に参加していた頃を思い出した。 「野球ですか〜! 僕は柔道でしたよ」
「広瀬さん、柔道ですか! 僕も柔道でしたよ!」
僕は、柔道話しで盛り上がる2人を横目に、「なるほど.....この身体は」と像の親子の意外な接点を見つけた様な気持になり一人自己満足の世界に酔いしれていた。 そんな話しをしている間にも、気が付けば景色は都会のビル群を抜け出し緑溢れる自然の空間へと 僕たちの車は引き込まれて行った。都会では味わえない山々の景色、その山達に包まれるかのように 佇む小さな街並。やはり週に1度はこんな景色を見ていたいものだと心の中で呟きながら僕は本来の 癒しの空間へと向かう気持に嬉しさを隠せなかった。 そして、高速を降りた頃だろうか思わぬ天候の変化にまた自然の不思議さをも感じていた 突然のぽつぽつと降り出した雨に、小暮はさっきまで晴れていた場所と雨になった場所の境目を探し 盛り上がり、そんな子供の様な疑問に真剣に考える広瀬。まだまだあどけなさが残る20代トリオの 会話はどことなく小学生の頃の自分の姿にも見えていた。 そして、さっきまでの暑さを和らげてくれるかのように涼しげな気分になった頃、僕は1つの小学校の校庭の前で車を止めた。 そこには、静かに降り続く雨の中、黙々と一人で鉄棒にしがみついている少年の姿があった 僕は、この場所の空気を肌で感じる為と休憩を兼ねてその少年のいる場所までスタッフと一緒に 行ってみた。 「僕、何年生?」
「3年生........」
「3年生か〜。雨が降ってるのに大丈夫?」
「............................................」
「お友達は?」
「............................................」
僕の問いかけには、応じる様子もなくただ単に怪しい人間に危機感を持っていたのだろうか.......。それは無理もないだろう髭をはやした僕を筆頭に、巨漢の二人........危機を感じても仕方ない状況が そこには揃っていたのだ。 そんな状況でも、黙々と鉄棒にしがみついている少年を見ながら僕は1つの事を思い出して聞いてみた 「僕? 逆上がり出来る?」
「...............................」
その瞬間、少年は鉄棒にしがみつきながら下を向いて小さく泣き出した僕は突然の行動に戸惑いながらも、1つの思惑が確信に変わった瞬間だった。それは逆上がりが出来なかった少年時代の僕が、まさにタイムスリップした様に目の前にいたのである。 少年は、泣きながらもクラスで逆上がりが出来ないのが自分だけだと言うことも、あした体育の 授業で逆上がりの検定試験がある事も伝えてくれた。 そして僕は、あの頃の自分とあの時逆上がりを教えてくれた近所の酒屋のおじさんの言葉を思い出して気が付けば少年のサポートをしていた。 「いい。腕にチカラを入れて思い切り地面を蹴ってごらん」
「自分が回るイメージを作るんだよ」
決して、力強く蹴り出すとは言えない少年を手で支えながら回転させる僕と何度も何度も、試すも青空へ半分も届かない足を掴んで回す広瀬と小暮。 思いがけない休憩時間が、1つの成功に向けて動き出していた 僕は、あの頃の自分の姿を自分自身で支える様に何度も何度も1センチ2センチと空に 近続く足の高さを目で追いかけていた。 そして、40分もした頃だろうか少年の足がどんよりとした空に真っすぐ伸びた瞬間 少年の身体が勢い良く今度は地面間がけて降りて来た 始めて少年が一本の鉄の棒を中心に回った瞬間だった 僕たち3人は、今までたまっていたものを吐き出す様な歓声をあげて少年を囃し立てた 1度、掴んだ感触はその後何度も何度も少年を鉄の棒に夢中にさせ、一人でも回れる姿がそこには あった。少年はさっきまでの泣き顔とまったく違う笑顔で軽く会釈をすると母親に逆上がりの出来た事を早く伝えたいと走ってその場から消えて行った。 鉄棒と少年が引き寄せてくれた1つの記憶................... 気が付けば雨もすっかりやんでその場所には達成感に満ちあふれた3人の大人と 何年もの間、逆上がりの出来ない子供たちを見守る鉄の棒が1本残されていた モノクロスタイル
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