てつどう

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GR DIGITAL2 / ricoh


政財界から民俗伝承、古代史から近現代史に至るまで・・・
幅広い領域に及ぶ圧倒的な取材・研究をバックボーンに
巧みなストーリー展開と重厚な人間ドラマを織り交ぜ、
「社会派小説」という分野を確立した作家、故 松本清張

実は、【写真】の分野を題材に、カメラマンの倫理的問題を鋭く突いた作品も残しています。
『十万分の一の偶然』 という長編推理小説です。


交通事故や火災の現場に、報道カメラマンよりも早く駆けつけて事件現場の模様を収め、
新聞紙上での掲載回数や、そのインパクトを争う、一部の熱狂的なアマチュアカメラマン・・・
功名心から、巧妙な「ヤラセ写真」が投稿されることすらある。

そんな中、東名高速において、トラックや乗用車など6台が巻き込まれる多重衝突事故が発生する。
現場付近に偶然居合わせ、今まさに炎上している事故車を激写したアマチュア写真家・山鹿恭介の写真は、
新聞紙面で大きく取り上げられ、にわかに脚光を浴びる。

「事故は不慮の出来事」・・・として警察では処理されたが、
この事故で最愛の婚約者を奪われた男、沼井正平は、
事故現場の状況に幾つかの不審点を見出し、独力で真相の究明に乗り出す。

やがて沼井は、カメラマン・山鹿が、「ある方法」を用いることで、
意図的に事故を誘発したのではないか? ・・・という仮説に到達する。

そしてその背景には、「とにかくインパクトの強い投稿写真」を求めていた、
報道写真コンテストの審査委員長・古家庫之助の存在が浮かび上がる。

真実の糾明と、執念の復讐劇・・・沼井は、山鹿と古家を徐々に追いつめてゆく・・・



小生に、この小説のストーリーを思い起こさせたのは、
鉄道写真趣味をめぐる昨今の状況と、そして、
昨日、関西で起こってしまった、鉄道ファンによる列車往来妨害の件でした。



鉄道写真趣味の分野では、いくつかの専門雑誌が刊行されており、
珍しいイベント列車や、引退車両のサヨナラ運転、蒸気機関車の復活運転
あるいは、新型車両のデビューや、それに先立つ試運転・回送等の情報が
ほぼ毎号のように、記事として取り上げられます。

それらの記事に添えられる鉄道写真の多くは、
アマチュアカメラマンから寄せられる「投稿作品」なのです。
掲載写真には、「撮影者の氏名」が付記されるのが慣例になっています。

もちろん、雑誌に掲載されるほどの写真を撮影されるような方は
一定以上の経験と技量を備え、「撮影マナー・安全への配慮」という観点でも
相応の見識を有しておられると思います。

他方、雑誌を発行する出版社の側でも、
「ルール違反を犯して撮影されたと推測される写真は、受理しない」
・・・という自主規制を設けて、編集にあたっているはずです。

ですが、鉄道雑誌に作品が掲載されるような(模範的な)写真愛好家の周囲には、
やはり 同じ列車を収めようとしている多くの鉄道ファンがカメラを構えており、
彼らの中には、常識やモラルを著しく欠いた方も含まれている・・・
残念ながら、これは否定のできない現実のようです。

このような状況を鑑みるに、
「氏名入りの写真掲載」という慣習や、「特別な列車の情報掲載」が
一部の鉄道ファンの過激な(非常識な)撮影行動を煽り立て、不行跡の遠因になってはいないか?
関係者の間に、もし何の危機意識も無いとすれば、それこそ問題ではないかと思うのです。

もっとも、仮にその種の鉄道情報誌が休刊/廃刊になったとしても、
web上では 各種列車の運行情報が日々盛んに交換され、
誰もが自身の作品を、HPやブログという場で発表できるご時世ですから、
根本的な問題の解決にはつながらないでしょうけれど・・・


今までもそうだったかもしれませんが、今後、鉄道施設付近でカメラを構える人間は
鉄道関係者からは、「列車の安全運行を脅かす危険因子」として認識され、
鉄道利用客からは、「犯罪者の潜在的予備軍」と見做されることでしょう。
このことに関して、鉄道写真趣味で地道に実績を積み上げてこられたベテラン諸兄も、
また、小生のような経験の浅い者も、およそ分け隔てはないものと思われます。




https://blogs.yahoo.co.jp/IMG/ybi/1/15/e1/kiha58_1523/folder/924743/img_924743_10860670_1?1266227301

この写真は、昨年の夏、常磐線の銅像山踏切で目にした光景です。
機材の一部が、明らかに鉄道施設内に入り込んでいます。

このようなカメラポジションは、鉄道写真ファンの間では
"概ね許容範囲内" として、容認されているのかもしれません。

しかし、「他の人も侵入して撮っているなら、自分も許されるだろう」・・・という集団心理
或いは、「自分さえ事故を起こさなければ、問題にはなるまい」・・・という自己中心的な認識が、
昨日の「あすか」を巡る、一連の出来事の背景にあったことは、想像に難くありません。

そして、このような撮影者と同じ場所におりながら、
安全な位置まで退避するよう、諭すことが出来なかった小生自身の無力さを、白日の下に晒す・・・
そういう写真でもあります。


   *   *   *


鉄道情報誌の実情を取り上げ、敢えて、その責任について言及しましたが、
「鉄道という題材を扱ってきた媒体(メディア)」・・・という観点では、
拙ブログも同様に、責めを逃れることはできません。
今はただ、申し訳ない気持ちでいっぱいです。

.

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こんばんわ。同感です。悲しいし、申し訳ないと思いながらも、何故その行為に走ったのか・・不思議でなりません。
注意され説得されてもどかない・・。
不思議でなりません。

2010/2/15(月) 午後 8:19 ヒロ鉄道 返信する

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全く同じ事が風景写真でも起きてますね。立ち入り禁止のところに堂々と入っての撮影。「邪魔」といって対象以外の植物を切ったり折ったり、アングルを求めて私有地に無断で入ったり・・・。
山でもより綺麗な高嶺の花を撮るために、他の高山植物を踏みつけて植生を荒らしていたりします。
その旨注意をしたことは何度もあるのですが答えは決まってます。「おまえに何の権限があるんだ」
アマチュアのマナーが悪い風景写真家は権威主義が多いみたいです。 削除

2010/2/15(月) 午後 8:49 [ らちあに ] 返信する

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昨日の「あすか」の事件を聞いたとき、とても悲しくなりました おそらくkihaさんは、もっと複雑な心境ではないかと思います
昨日、私の良く行く植物公園では梅が見頃になっていましたが、カメラマンが梅園の柵の中に入り乱れていて、「あれ? 柵が無くなったのかな?」と一瞬戸惑いました
その後、柵の中の多くのカメラマンを見た子供が「僕も近くで見たい!」とぐずっているのを母親が無言で止めている光景を見て、ほとんど梅を撮らずに帰ってきました
残念なことです…

2010/2/15(月) 午後 10:57 [ km_better_half ] 返信する

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冒頭の小説、テレビドラマで見たことがあります。カメラマン役は泉谷しげる、事故で恋人を亡くしたヒロインが関根恵子さんだったと思います。随分昔のドラマですが。

本題に戻りますが、撮影中のモラル保って欲しいものですね。この3月には、[能登]と[北陸]がラストランを迎えます。最後まで事故無く、花道を飾ってあげたいと願います。

2010/2/15(月) 午後 11:04 kumasan 返信する

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ヒロ鉄道さん> 報道された内容だけでは、現場の状況はいまいち掴みきれないのですが
ひとつ確かに言えることは、仮に小生がその場に居合わせたとしても、
恐らく何も状況を変えられなかっただろう・・・つまりは、無力感です。

2010/2/16(火) 午前 1:14 kiha58_1523 返信する

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らちあにさん> 小生が経験したケースでは、全く逆の反応でした。
つまり、何を申し上げても・・・「無視」
対話のチャンネルを、設営することすらできませんでした。

山岳写真にしても、植物写真にしても、鉄道写真にしても
被写体に関する知識・理解が 作品の根底にあって然るべきだと思うのですが・・・
「写真さえ押さえればよい」という発想だとすれば、趣味としては非常に浅いと思います。

2010/2/16(火) 午前 1:17 kiha58_1523 返信する

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km better half さん > 小生は、皆さまの写真ブログを熱心に拝見しております。
その目的は、写真技術の研究や、カメラ製品の情報収集が第一ではあるのですが、
いまひとつの(隠れた)目的は、フォトグラファーが大勢出かけそうな場所・時期を事前に把握し、うっかり其処へ出向かないようにすることです。

「後段部分は、もちろん冗談です」・・・と言いたいところなのですが、
カメラが集まるような場所には、怖くて出かけられません。、

2010/2/16(火) 午前 1:18 kiha58_1523 返信する

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くまさん>テレビドラマになっているとは知りませんでした
松本清張という作家の凄さを小生が思い知らされたのは
「砂の器」でも、「ゼロの焦点」でも、「点と線」でもなく
この「十万分の一の偶然」でありました。

2010/2/16(火) 午前 1:18 kiha58_1523 返信する

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不便を楽しむ・・という事を捨てたから、このような事が起こるのだと思いますよ。

デジタルは道具さえ使えば何でもできます。 逆に安易に何でも出来るから、努力や工夫といったものが使われず枯れていくのですね。 そして、発想や想像といったものがどんどん欠如していく・・。 だから、撮れたら(他がどうなろうが)それでいい・・という輩が出現する訳です。

また、失敗は安易に消去され、『失敗から学ぶ』、『失敗せぬように考える』という学習も放棄されます。 となると、困難が立ちはばかった時に凍るだけで何も出来ない人間が出来上がってしまう訳です。 又はデジタルの如く、『ある』『なし』を『スキ』『キライ』に置き換える2進法的な考えの行動を取ってしまう訳です。 それが、今回の暴走でしょう。

デシタルカメラを使う人に言うのは悪いですが、デジタルカメラの出現はカメラ界において大いにマイナスな事なのですね。 人間の能力を根こそぎ奪うシステムなのだから・・。

続く・・ 削除

2010/2/17(水) 午前 0:09 [ 銀塩カメラ使い ] 返信する

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例えば、フラッシュの光を一部分に当てるだけで、画像解析と予測演算により全てにフラッシュ光が適切に当たったかのような画像が『造れる』のである。 こんなペテンが出来るシステム、それがデジタルのシステムなのである。 要するに、写真撮りのモラルを捨てた行為がいとも簡単に出来るわけです。

だから、少数(とは言い難いが)の不埒者が安易に暴走してしまう訳です。 それが前に述べたイベント列車へのフラッシュの嵐です。

不可能と判断したなら、別の手を考えます。 でも、デジタルは道具を使えば、このような不埒なマネが出来るのです。

不便を楽しむ。 創意工夫で、自分だけの別表現を想像する。 一歩下がって周囲を見渡し、そして考えるという事が、デジタルカメラの普及で壊滅的になくなりました。

邪魔なモノを入れたくないと考えるなら、一歩下がって考えればいい。 それをせずに安易に道具に頼り、そしてその道具に弄ばれた結果が今回の暴走だと考えます。

事実とはいえ、散々デジタルカメラのシステムを貶していますので、お気分を害されたのなら消去されても一向に構いません。 削除

2010/2/17(水) 午前 0:19 [ 銀塩カメラ使い ] 返信する

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個人的な意見ですが、キハさんが申し訳なく思う必要はないと思います。

新聞で、列車運行妨害のニュースは読みました。
その時に、まず思い浮かんだのは、鉄道ファンのマナーについて
常日頃から語っていらっしゃったキハさんのことでした。

私は完全に部外者ですから、そこまで苦言を呈するほどに
一部の鉄道ファンのマナーが悪いとは実感できなかったのですが、
残念ながら、キハさんの危惧は当たっていたのですね。

前にも言いましたが、“やった者勝ち”はあまり好きではありません。
“やった者勝ち”を貫き通せば、得をすることが多いんですけどね。
それでも、それをしなかった矜持を大切にしたいと思います。

小説の話…面白そうですね。
私は今回の記事を読んで、『アンブレイカブル』という洋画を思い出しました。

2010/2/17(水) 午前 8:12 けんいち 返信する

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銀塩カメラ使い さん > コメント有り難うございます。

小生は、4年ほど前からコンパクトデジカメから写真を始め、1年ほど前から、APS−C機を使っている者です。ほとんどデジタルカメラしか扱ったことがなく、しかも、その技術も未熟で、知識も限られています。

したがって、デジタルとフィルム・・・両者の差異を、経験を基づいて体系的に論じることはできませんし、その差異が撮影者の心理/行動にどのような影響を及ぼしてきたのかについて、客観的・俯瞰的に論じる資格はありません。

このことを、まず申し上げておきます。

2010/2/17(水) 午前 8:19 kiha58_1523 返信する

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さて、ここから本題に入らせていただきます。

>>例えば、フラッシュの光を一部分に当てるだけで、画像解析と予測演算により全てにフラッシュ光が適切に当たったかのような画像が『造れる』のである。 こんなペテンが出来るシステム、それがデジタルのシステムなのである。

・・・と述べておられますが、デジタル写真であっても、画角内の輝度差があまりに大きい場合は中間諧調はほぼ破綻し、「輪郭/形態が写っているだけ」のデータになってしまい、作品としては成立しません。デジタル写真を知悉しておられる方ほど、フラッシュは「百害あって一利なし」・・・すなわち、「ノーフラッシュ」は、マナーという観点だけでなく、良い作品を撮るための前提条件としても「常識」として捉えておられるはずです。

2010/2/17(水) 午前 8:20 kiha58_1523 返信する

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小生は RAWではなく専らJPEGでデータを扱っている関係上、レタッチで救済する余地はあまり大きくありません。また、デジタルカメラの液晶で、撮影後直ちに画像を確認できるとはいえ、イメージ通りの露出・諧調・色調が得られたか否か?・・・は、後刻パソコンのディスプレーで展開するまでは分りませんし、その画像をblog上に掲載し、閲覧してくださる方 其々の環境に於いてどのように提示され、最終的に、閲覧者がどのような印象を抱くか?・・・についても、コメント等の反響から推し量るしかありません。

撮影、現像、出力・・・そして効果的なプレゼンテーション
具体的な技法の内容は全く異なるとはいえ、
それぞれの工程で、try & error を余儀なくされること・・・
1枚の作品を表現するために、たゆまぬ研究や創意工夫を求められるのは
フィルムであっても、デジタルであっても、全く同じではないか?
ここ3年余りの間に、小生が至った考えです。

2010/2/17(水) 午前 8:21 kiha58_1523 返信する

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もちろん、安価で気軽に扱えるデジタルカメラが、ここ10年間で大量に市場へ供給されてきたことが、鉄道写真分野にとどまらず、様々な領域でのモラルハザードを惹き起していることは、すでに多くの方も指摘されています。【安易に道具に頼り、そしてその道具に弄ばれた結果】 とは、的確なご指摘だと思います。

ただ、機材の種類や写真歴に関係なく、狭視野で思慮浅薄、身勝手なフォトグラファーさんは、いらっしゃるのではないか?・・・「写真のデジタル化」だけでは説明できない問題もあるのではないか?・・・というのが、小生の(あくまでも主観的な)見解です。

ちなみに、本記事2枚目の添付写真・・・鉄道用地内に侵入した機材の所有者は
フィルム&デジタルの遣い手さんでありました。

2010/2/17(水) 午前 8:22 kiha58_1523 返信する

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けんいちさん> 鉄道写真歴の浅い小生ですが
これは、古くて新しい問題のようです。

「カメラマンは、カメラを持つ前に、まず人間であれ」

この小説において、松本清張は教え諭しているような気がしてなりません。

2010/2/17(水) 午前 8:25 kiha58_1523 返信する

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残念な事件でした。
今回の事件は,新技術により裾野が広がる時に起きる,典型的なモラルハザードですので,銀塩カメラ使いさんの指摘も一面では納得です。ただし,技術の定着により,マナーも定着することは,フィルムカメラの普及期のモラルハザードを振り返るまでもなく,銀塩カメラ使いさんも知って見えると思います。どんな技術も使うのは人ですし,技術後退もありえません。「カメラマンは、カメラを持つ前に、まず人間であれ」この言葉を胸に刻みたいと思います。

2010/2/17(水) 午後 11:23 クマ&ノコ 返信する

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クマ&ノコさん> もう30年以上も前に書かれた小説で
登場するカメラは、当然すべてフィルム式なのですが
今読んでも、全く古びた感じがしません。

問題の根源を突き詰めてゆけば、「ひと」に当たるのでしょう。

2010/2/18(木) 午後 4:20 kiha58_1523 返信する

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