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6 千年前の星
「我々は、ひと月ごとにひとつ宇宙船を飛ばしています。つまりひと月置きの
データーが収集できるのです。」
「それ、見せてもらっていいですか。」
「どの星がいいですか。」
「もちろん、クジラ座τ(タウ)星と五つの惑星です。」
「あなただけにお見せしますね。」
「なにそれ、『あなただけ』というのは?」
「いや、その、我々は本人の意思を大切にしておりますので。」
「じゃ、私もみたい。ほかのみんなも同じ。」
「わかりました、意思の確認が済みましたので、あなた方にもお見せします。」
「ややっこし。」
「郷に入っては郷に従え、という事だ。」
「それって。」
「シー、その癖、たった今から廃止する。」
「すぐに復活する。」
「仲がいいですね、恋人どうしみたいです。」
「そんな、やだこんな男、それより見せてください。」
「わかりました。8Kの画像でどうぞ。第五惑星へ近づくところから・・・・」
「地球と似ている、しかし、白っぽい、」キミコが言った。
「少し太陽から、つまりタウ星から、離れているので氷の惑星に近いものです。
太陽系でいえば、エウロパみたいなものでしょう。第四惑星を見てみましょう。」
「地球とそっくり。もっと近くでみたい。」
「我々はこの惑星の衛星になり、表面の模様をくわしくとりました。これがそ
れです。」
「すごい、降りてみたい。」
「それは一切禁止しております。」
「どうして、もったいないじゃないの。」
「まんがいち、生命がいたりすると危険ですからね。」
「生命がいれば、大変な情報じゃない。」
「だめです、地球の命を見ればわかるように、命は他の命を襲い食べようとしま
す。あるいはウイルスの様に他の命に入り込み、体をのっとったり、自分に都合
のいいように改造したりします。最初から最後まで善人のような命は存在しませ
ん。」
「どうして命は命を食べようとするの?」
「それが命の宿命だからです。」
「宿命ね、いや、そんなの。」
「その宿命がなかったとしたら、あなたがた人間まで進化した生物は生まれませ
んでした。下等な生物が作り出す、さまざまな栄養源がなければ、あなた方の頭
脳も感覚器も生まれなかったのです。」
「そうね、私たちって進化の頂点にいるんですもんね。」
「宇宙の他の生命を持ち帰り、万が一それが地球上の生物に入り込んだりすれば、
大変なことになります。だから我々は衛星だけにとどめました。」
「たいへん、雲もある、あれって台風じゃない、」キミコが言った。
「人が住めそうですね、」ノリオが言った、「大気の色からして、酸素が多そう。」
「ま、実際に着陸してみないとなんともいえません。ところで、今見ている星は
千年前のものです。」
「それでも、超高速で戻ってきますね。」
「兄さん、千年もかかっているんだよ。何が超高速だ。ワープができれば、瞬時
に戻ってくる。」
「ああ、それはSFでの話、実際は不可能です。スピードに頼った飛行は光速とい
う絶対限界がある。しかし、現実には物を光速で飛行させることは不可能です。」
「ということだ、」マサルは得意そうに言った。
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