基本地クラブ

のんびりと歩くことが面白くなってきた

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003_トビラ

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「チカちゃん、映像をよく見ておくんだ、」ノリオはチカの耳元でささやいた。
「わかった。」

その像は、ニュース映像みたいだった。
「いいか、これは君たち自身がニュースで見た映像だ。目に触れないものもあ
るが。
―漁船が底引きの網を引き揚げ、いろんな魚やごみまでもがごちゃ交ぜになっ
ていた。漁師たちは、必要な魚をより分け、不要なものは海に放り投げた。
―引き揚げられる定置網の中でもがき苦しむ魚たち。その場でしめられるもの
も。
―屠殺場に運ばれてゆく、多くの動物たち。異常な居場所の密度の高さに不安
を感じ泣き叫ぶ。あつかいが動物から物へ変化してゆく。屠殺現場に近づくに
つれ異常な叫び声。
―そして半分は、屠殺現場。半分は、肉料理を楽しむ人々。シャブシャブを、
から揚げを・・・・・

「ちょっと、疲れた。これが何を意味しているか分かるね。君たちは、ナチス
がやったと同じようなことを動物たちにやっているのだ。路上のいっぴきの蟻
にも魂はある、それを無意味に踏みつぶすことは、許されない。こちらの国は
そういった国だ。わかってくれるね。」
「わかりました、」ノリオは反射的に答えた。「チカ、僕の言った事を繰り返
して!」ノリオはチカの耳元でささやいた。「今は、生きてここをでなくちゃ。」
「わかりません。漁師のおじさんたちは、魚をみんなに食べてもらいたくて、
とってくるんです。それを美味しく食べてどこが悪いんです。」
「ばか、ばか、死にたいのか!」ノリオはチカを小突いた。
「わかった、」黒い存在は言った、「正直でよろしい、君は鬼どもの今日の夕
ご飯のおかずだ。」
黒い影はそういうと、チカをノリオから引き離しにかかった。
「待ってください。チカちゃんより僕のほうがずっとおいしいです。がりがり
にやせた女の子より、豚みたいに太った僕のほうが食べ応えあります。」
「あーあ、友達思いのおぼっちゃまだ。しかし、おまえは言葉ではっきりと、
『わかりました』と言った。だからどんなにうまそうでも、おまえを食べるわ
けにはいかない。それがこの国の掟だ。それにおまえがいくらかばっても、本
人が『わかりました』といわなければ、帰すわけにはいかない。」
「チカちゃん、」ノリオは言った。「たのむ、嘘でもいい、『わかった』と言
ってくれ。」
「言えません、どうせここは、私たちの夢の中なんでしょう、覚めればなんと
いうことはない。」
「ちがう、時限か違う世界だ。夢なら帰れるけど、ここからは帰れない。半現
実の世界だ。死んでもいいのか。」
ノリオはすぐにあるイメージを浮かべ、管理人に言った。
ちょっとここのイメージシステムをお借りします。
「ええ、まったく・・・・いいだろう、使え。」
ノリオは、心を集中した、そしてイメージシステムの入力の中心へ座標をあわ
せた。まるで、衛星同士のドッキングみたいに。
そして少し未来をイメージした。
「よくみるんだ、チカ、君はこれから鬼たちによって生きながら解体される。
その時の痛みはトンカチで思い切って自分の指をひっぱたいた時より何十倍も
痛い。内臓がとりだされ、心臓が動いたまま取り出される。そして次に鬼たち
の食卓に上げるために、肉ははぎ取られ、骨髄が抜き取られ、残りはゴミ箱に
捨てられる。鬼どもの好物は、骨髄と君の脳みそだ。」
「やめて!なんて怖い事を考えるの、もう友達じゃない!」
「そして骨は、ウジ虫たちのえさになり、洗骨された骨は、あくる日、君のう
ちに宅急便で届けられる。」
「おい、おい、」黒い存在は言った、「なんという気味の悪いイメージを・・
・といっても、それが君の隣の女の子の真実の運命なのかな・・・・」
「やめて!わかった、ノリ畜生一生うらんでやる、」そういいながら、チカは
黒い存在に向かって言った、「わかりました。」

「そうか、そうか、それでいいのだ。帰りの切符は二人に与えよう。いつでも
遊びに来てくれ。」
『こんなところに二度と来るか!』とノリオは思った。
二人は扉から出て行った。

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