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 台湾高座会帰国60周年記念大会において、私は「現在の日台関係に抱く私の危機感」というテーマで、次のような挨拶をさせてもらいました。

 「私と台湾との関係の中で、先月は大きなことが二つありました。一つは「台湾少年工との60年」というテーマで、NHKのラジオ放送番組、ラジオ深夜便「心の時代」に出演したことであり、他の一つは台湾で開催された李登輝学校合宿研修に参加したことです。

 ラジオ放送は連夜にわたり、延べ90分間、最近の公共放送が行った台湾関連の放送では最長のものと言われ、全国的に大きな反響がありましたが、本日は台湾李登輝学校で学習した成果を土台にして、私の考えをお話したいと思います。

 私は最近の日台関係に、ある種の危機感を抱いています。一つは、日本人、特に日本の政治家に、日本にとっての台湾の重要性について認識が不足していることです。台湾の周辺に、日本経済を支えるシーレーンが通っていることは、多くの人が知っています。しかし、それは極めて漠とした概念でしかありません。

 日本のシーレーンは、台湾の西側の台湾海峡と東側の太平洋側にあります。このシーレーンを一日約300隻の大型船が通過しています。それが日本経済の物流の70%を支えているのです。日本へ向う船と、日本から出て来る船がありますから、その比率を半々とすると、上りと下り昼夜を問わず約10分間隔で通過している勘定です。

 問題は、台湾とヒリッピンの間に横たわるバーシー海峡です。台湾海峡は万一の場合は避けることができますが、バーシー海峡の場合はそうはいきません。必ず通過しなければならないところです。現在この海峡の自由航行を保証しているのは、100%台湾の軍事力です。ヒリッピンには、稼動する軍用機は3機ぐらいしかありません。

 現在の台湾の体制が、今後も維持されるのなら全く問題はないのですが、もしも万一、台湾が一国二制度などの条件で中国と統一された場合は、どうなるでしょう。一国二制度は、香港やマカオの場合を見ても、中国軍が密かに進駐をしています。台湾がそうなった場合は、バーシー海峡は中国の領海となり、その管理権は中国海軍の手中に落ちるのです。

 そうなれば、中国は日本のシーレーンに必ず制約を加えてきます。日本への物流の10%が減少したら、日本経済の不況は長びき、20%なら構造的な不況、30%減少すれば、戦前の生活水準に落ちるというデータがあるそうです。正にバーシー海峡は日本の生命線であり、喉元なのです。これほど台湾は、日本にとって重要な場所なのに、どれだけの日本人が、特に日本の政治家が、この重要性を認識しているでしょうか。

 日台関係において、私の抱く第二の危機感は、台湾の現役世代の、台湾にとっての日本の重要性についての認識が欠如していることです。台湾の現役世代の関心は、ほとんどアメリカへ向いています。台湾にとってアメリカは大黒柱ですから当然ですが、このアメリカが、これまでのようなアメリカでないところに、台湾の悩みがあると私は思います。これまでのように、台湾が防共の砦として、あるいは自由陣営の一環として評価されていた時代とは、すこし様相が変ってきているのです。
 
 アメリカの台湾政策は、共和党と民主党によっても違いますし、同じ共和党政権でも、何を基準にして中国と台湾を秤量するかによっても違います。自由や人権を基準に見るときは、だんぜん台湾ですが、ビジネスになると中国大陸の比重が重くなってしまいます。これが増強を重ねている中国の軍事力となると、いかにアメリカとはいえ、腰が引けてきます。

 このように中国との比較秤量で、台湾だけでは、アメリカの圧倒的な支持を受けられないかも知れません。しかし台湾が日本との連帯を深めていくなら、そしてアメリカが中国と比較秤量するのが、日本プラス台湾なら、台湾の有利は決定的です。

 台湾にはいま、台湾高座会のみなさんが果たしてきた役割、李登輝先生や、ここに列席されている黄昭堂、羅福全、蔡焜燦各先生に代表される知日派、愛日派が果たしてきた役割を引き継ぐ人がいません。みなさんに続く知日派、愛日派の育成が、台湾の急務なのです。それが台湾生存の重要な条件であると私は思います。現在の知日派は、後継者が育成されるまで、引退するわけにはいかないのです。どうか台湾高座会の皆さん、あと10年、20年元気でいてください。そして、祖国台湾の為にがんばってください。

 最後に一つ報告することがあります。それは来る12月4日、靖国神社において、台湾戦没者2万8千柱の慰霊祭を、日本李登輝友の会・李登輝学校の研修生が中心になって行うことです。先の大戦で共に戦った台湾人のことを、日本人は決して忘れていません。そのことをご報告して、台湾高座会帰国60周年記念大会への、私のご挨拶といたします。ありがとうございました。」

閉じる コメント(13)

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1.kimさん、こんにちは。 2.貴方のご心配は、もっともですが、アメリカはバーシー海峡の戦略的な重要性を日本以上に、重視しています。 3.たとえ、日本が無策であろうと、アメリカ自身の「国益」のために空母を派遣するはずです。 4.今回の「米軍再編は完全に対中シフトを敷いています」。 5.しかし、中国もしたたかですから、徐々に軍備力の増強を図っており、アメリカ軍の出動をさせないような、細かい戦術を取ってくるでしょう。 6.この点では、やはり、日本による「自主的防衛」が不可欠です。 7.幸いなことに、麻生外務大臣は、「親台湾派」ですから、多少の希望は持てますが、肝心の首相が「全方位外交」と言う、非現実的な考えをもっていますから、油断は出来ません。 8.我々にできることは、限られていますが、拉致家族のように、アメリカ本土にまで行って、「協力を求めている、実行力」に見習うべきでしょう。

2005/11/23(水) 午後 2:27 [ watanabe5658 ]

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watanabeさん、アメリカが日本以上にバーシー海峡の戦略的重要性を重視していることは承知しています。私の懸念は、万が一、台湾が統一派に政権を握られ、その後一国二制度なるものが適用されて、台湾に中国の軍隊が駐留する事態になることです。バーシー海峡が中国の領海になるだけでなく、台湾の東側の海域は水深が深く、原潜の有力な基地になりうると軍事専門家が言っています。アメリカの空母はある程度の海域内(台湾の面積の2倍)に、敵の原子力潜水艦が潜って音を出さなくなったら、動けなくなると聞きました。

2005/11/23(水) 午後 10:52 [ kim**3hiro ]

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1.kimさん、私の軍事知識がウスッペラなことを、反省しています。 2.確かに、直近の懸念は、次回の「総統選挙で統一派の現在の台北市長が当選」することで、一気に中国化が進んでしまうことです。 3.日本の国民及び政治家は、この危機をあまり重視していませんが、台湾においても、経済界が、統一派を支持しているという、現実があります。 4.これらの重大問題を我々だけで、解決するのは、限界があるでしょう。 5.やはり、アメリカに直接交渉することを考えるべきだと思います。 6.そして、日本自身が、「自分の国益を守るため」にも各自ができることを即座に実行すべきだと思います。

2005/11/24(木) 午後 2:34 [ watanabe5658 ]

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watanabeさん、独裁国家に対抗していくのは、たいへん厄介なことですね。相手側には統一した戦略がある。こちら側は統一されていないだけでなく、戦略それ自体がない。常に仕掛けてくるのは、相手側です。台湾を見ても、つい15年前まで恐怖政治に苦しんでいたことを、もうすっかり忘れています。先日、ブッシュ大統領が中国の民主化を要求した。日本も台湾も相手に仕掛けていく姿勢がこれからは必要だと思います。環境問題も必要なテーマです。ハルピンでまた大規模な化学工場の爆発があり、汚染された水が海へ向っているのです。

2005/11/24(木) 午後 7:24 [ kim**3hiro ]

Kimさんこんばんは。国と国に挟まれている台湾の重みをズシンと感じた記事でした。まともなコメントできませんが、勉強になります。

2005/11/24(木) 午後 11:10 souko

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SOUKOさん、こんばんは。ご訪問に感謝します。独りよがりの点がありましたら、いやきっとあるでしょうから、遠慮なく批判してください。お互いに、脅したり脅されたりすることのない世界を作るため、微力でもがんばりましょう。小さな力でも、やがて大きな流れになることを信じて。

2005/11/24(木) 午後 11:25 [ kim**3hiro ]

台湾ご出身のWOO先生というかたと仕事場で良くお話をします。彼自身も難しい問題だといいます。答えが見つからない、とおっしゃっております。12月4日の件は知りませんでした。情報ありがとうございます。(ちなみに、台湾ご出身の脳外科医の李先生は私のブログの中で大車輪の活躍中です。)

2005/11/25(金) 午前 1:52 [ - ]

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私の危機感は現在の台湾人に現状維持派が多いことです。一般的に台湾には本土派と統一派に分かれると言われますが、実感としてはどっちつかずの現状維持派が多数を占めています。武力をちらつかせながら統一を迫る中国に対して、この現状は極めて深刻です。玉虫色の経済に目をくれることなく、誰よりも台湾人自身がが中国の真の姿に気づかなければいけないと思います。

2005/11/25(金) 午後 0:30 [ nag**wn ]

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浅野英司様 お忙しい身でありながらのコメント、ありがとうございます。答えが見つからないと言われるWOO先生の気持ちもよくわかります。台湾人にとっては、ある意味で命がけの問題ですから。台湾人の真価が問われる時だと、私は思います。

2005/11/25(金) 午後 3:44 [ kim**3hiro ]

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nagatwnさん、現状維持派とは日和見派というか、あまり政治には関心がない人たちのことだと思います。私も現状維持しながら、中共の崩壊を待てれば、それも一つの選択肢だと思います。ただそうは問屋が卸さないでしょう。アメリカから私のこのブログに、「同感だが台湾人はアメリカを向くというより、金儲けに気を向けすぎている」とのメールが届いています。金儲けだけで大陸を向いている日本人も多いので、台湾人を責めるわけにもいきませんが、困った問題ですね。またハルピンで環境汚染が発生しました。他人事ではありません。

2005/11/25(金) 午後 4:04 [ kim**3hiro ]

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1.kimさん、「現状維持派」は、台湾だけでなく、日本全体にもいえることです。特に経済関係者に多いと思います。そして、一般市民もトラブルは起こしたくないという、近視眼的な人がほとんどでしょう。 2.アメリカも本音は、同じでしょう。 3.その間隙をついてくる中国の「武力覇権」に対効するには、一国では限界があります。 4.この問題は、やはり「全世界に向かって問題提起」するべきでしょう。 5.また、王毅駐日大使が、外国人記者クラブで「靖国問題」を取り上げています。日本政府は、なぜ「反論」をしないのでしょう。 6.日本人として、いまの政府は「国益すらも主張できない、負け犬」です。 7.国内世論を、もっと高めて、「中台関係」にくさびを打ち込まねばなりません。 8.そして、「日本政府批判を、日本人が自ら、行なうときが来た」のです。

2005/11/25(金) 午後 6:13 [ watanabe5658 ]

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watanabeさん、中国に対して妙なコンプレックスがあり、相手に言われぱなしの日本政府には、あきれてものが言えません。日本も主張すべきです。中国が靖国問題が気になるなら、日本は中国の民主化の後れと、自然破壊が気になると、なぜ言わないのでしょう。

2005/11/25(金) 午後 11:17 [ kim**3hiro ]

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私のブログ「台湾春秋」へお立ち寄りいただき、ありがとうございます。 三日ばかり、また台湾へ出かけてきます。しばらく更新できませんが、よろしくお願いします。

2005/11/25(金) 午後 11:24 [ kim**3hiro ]

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