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李雪峰台湾高座会会長の一代記(その9)
 
 台湾高座会留日50周年歓迎大会は、台湾から1400名の参加者を迎え、盛大に開催することが出来た。この年の6月9日はちょうど皇太子と皇太子妃の結婚式の日であったが、大和市民を中心に歓迎する者も1800名に上り、計3200名の大集会となった。
 
 元台湾少年工の人たちからは、多くの感謝の言葉を聞くことが出来た。また、「私たちが台湾へ帰国するとき、日本のあらゆる都市は焼野原だった。それが見事に復興している。私も15歳まで日本人だったので、わが事のようにうれしい。」という人もいた。
 
 この歓迎大会を機会に、私たちの交流は益々密になっていった。毎年、春には台湾から私たちの会へ台湾からの代表団が、そして秋には私たちが台湾を訪問した。工員養成所の卒業証書問題もこういう交流の中で求められた。
 
 それと言うのも、彼らはみな孫を持つ年代になったが、自分たちが少年時代に日本本土へわたり戦闘機などを作っていたと言っても、信用されず、「またじいさんのホラ話が始まった」で終わってしまう。くやしいというのが発端だった。
 
 その話を聞き、何とかしようと思って中央官庁へ日参したが、なかなからちが開かない。調べてみると、「働きながら勉強すれば旧制工業中学校の卒業資格を与える」という条件で募集しておきながら、戦局の急迫から勉強はほとんどさせられなかったのである。
 
 役人は、「その事情はよく分かるが、卒業していないものを国家が卒業したと証明するわけにはいかない」と言う。それではせめて「厳しい状況の中、新鋭戦闘機製造のため、よくがんばった」というのはどうかと要請すると、「60年も前のことをいま国が評価できない」と言う。
 
 長い間、すったもんだしたあげく、評価の部分は神奈川県議会と大和市長にお願いし、事実関係だけ厚生労働省が行うことになった。莫大な事務処理だったが、何とか多くの人の協力で最低限の結果だけは出せて、留日60周年歓迎大会のハイライトになった。
 
 それからもう9年が経過しようとしている。来年の5月9日は、台湾少年工が日本本土に第一歩を印してから、満70年になる。おそらくこれが最後の歓迎大会になるだろう。それなら、後悔しないよう立派な大会にしなければならない。
 
 留日70周年歓迎大会を飾るにふさわしいのは、彼らの善戦健闘の記録を残しておくことではないのか。台湾少年工全体の記録はあるが、その中の個別具体的な記録はあまりないのだ。
 
 そして、その記録の最初に置かれるべきは、その指導者李雪峰さん自身の奮闘の記録であろう。そう考え台湾へ取材に飛んでまとめたのが、今回お読みいだだいた記録である。予想外に多くの収穫を得たと思う。知らないことがたくさんあった。
 
 多くの元台湾少年工が、先の戦争の中での自分たちの健闘に誇りをもっていることを知ったのは大きな収穫だった。私はまた、彼らと交流を重ねてきて、私たち日本人のもつ歴史観が歪んでいるのに気づかされた。
 
 台湾少年工は、非常に特異な歴史的体験をもつ人たちである。先の大戦中、彼らは航空機の生産に従事していたため、常に敵B29の標的であった。その意味でこの年代の日本人としては、いちばん勇敢に戦った人たちとも言える。しかし彼らは、8月15日を境に戦勝国民としての体験もしている。
 
 その意味で彼らの戦争に対する見方は、たいへん厳しい反面、公平である。戦後、日本人は、アメリカ占領軍によって彼らの戦争観を押し付けられてきた。そして、今もそれを何の疑いもなく抱きつづけ、周辺諸国へは謝り続けているが、台湾人、特に元台湾少年工の人たちは、こうした態度に極めて批判的だ。
 
 彼らは言う。勝者が100%正しくて、敗者が100%間違っていたなどいう戦争はあり得ない。先の戦争は日本が悪かったから負けたのではなく、弱かったから負けたのだ。それを一方的に悪かったという考えまで、押し付けられているという。
 
 その通りだと私も思う。アメリカは広島と長崎で、何の責任もない生まれたばかりの赤ん坊まで皆殺しにした。その虐殺の責任が問われないなどというのは、本来はあり得ないのだ。南京事件など、ヒロシマナガサキを覆い隠すためのでっちあげなのだ。台湾人は戦後、台湾に乗り込んできた国民党の軍隊の悪事を経験しているので、その辺の見方は実に公平である。
 
 さて、ここでの主役、李雪峰さんの話にもどろう。彼はいま、台湾高高座会の会長であると同時に、民主台湾建国の父と仰がれる李登輝元台湾総統を精神的バックボーンとする李登輝民主協会の常務理事でもある。
 
 李雪峰さんが、その波乱の人生から学んだことは、何よりも台湾が民主国家として自立していくことの必要である。台湾の民主国家としての自立こそ、李さんの願いなのだ。李さんは、それが愛してやまない日本のためにもなると固く信じている。李雪峰さんの益々の活躍と長寿を、台湾と日本のために祈りたい。 

閉じる コメント(8)

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はじめに、前回の書き込みで李雪峰と呼び捨てになっていることをお詫びします。

勝敗は兵家の常、といいます。
日本は米国の物量に負けたのであって日本の主義主張が道徳的にも物理的にも劣っていたわけではありません。
しかし米国は戦後日本が道徳的にも劣っていたかのような刷り込みを行い、その傍証として中韓で、南京大虐殺や慰安婦問題をでっちあげました。
本当に戦争には負けたくないものです。
戦後、60年以上経って、ようやく冷静に歴史を見ることができるようになり歴史の真実を語ることがタブーではなくなってきました。
台湾少年工の方々の功績も苦難とともに正当に評価出来るようになったことを心からうれしく思います。
また、kim123hiroさんがなさっておられるように、
次の世代に伝えて行くことが我々の使命だと思います。
ありがとうございました。

2012/2/25(土) 午前 10:10 [ heavylance ]

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本当に知らないことばかりでした。
ありがとうございます。歴史は勝者によって語られていく、そして作られていくのですね。もうこのへんで憲法を見直し、敗者からの呪縛をときたいものです。

2012/2/25(土) 午前 11:32 [ さくら ]

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heveylanceさん、コメントありがとう。全くご指摘のとおりです。今回の名古屋市長の南京事件発言に対する官房長官談話も、従来の踏襲で何の進歩もありません。日本政府の主張や考え方をがらりと変えるのはムリにしても、少しずつは変えていく問題意識をもってもらいたいものです。全くチエがありません。

2012/2/25(土) 午後 9:40 [ kim**3hiro ]

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さくらさん、コメントありがとう。また最後までお読みいただき光栄です。いくら歴史が勝者によって作られていくといっても、ここまでやるのは行き過ぎですね。戦後の日本はそれを唯唯諾諾と受け入れてきた。そこにこそ問題があると思います。マッカーサーが総司令官解任後、アメリカの議会で発言した、「日本の戦争は自衛のための戦争であった」という発言を、日本人がまたマスコミが、何の興味も示さなかったところに、大きな問題、民族の精神的退廃があると思います。

2012/2/25(土) 午後 9:47 [ kim**3hiro ]

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李雪峰台湾高座会会長の一代記全部読ませてもらいました
大変興味深かったです
高座の台湾少年工の存在は知っていたのですが色々なドラマがあったのですね
彼らから見た戦後台湾史を知りたいですね

2013/5/1(水) 午前 2:42 [ 大森 ]

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大森さん、コメントありがとう。色々のドラマがあったことを、私も今回初めて知りました。長い戒厳令の時代に台湾人は自らの歴史を語ることを自ら禁じていたのです。再び彼らの上に同様の歴史が繰り返されないことを、日本人は自らの問題として考えていかねばと思います。

2013/5/1(水) 午前 4:03 [ kim**3hiro ]

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涙で文字が霞みます。
一気に読ませていただきました。

言葉がありません。より多くの日本人が、この事実を知るべきですね。

早速、娘に教えます。

そして本当に感謝御礼申し上げますm(__)m

ますます台湾が好きになりました。
また行かせていただきます。

2013/5/2(木) 午前 7:21 [ ]

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鶯さん、コメントありがとう。過分なご評価いただき恐縮に存じます。この話は今度私の出版する「二つの祖国を生きた台湾少年工」並木書房に、その他の話とともに載せました。お読みいただければ幸いです。

2013/5/2(木) 午前 8:06 [ kim**3hiro ]


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