Kim's Room

ご無沙汰しておりますが、元気にしております。 2011.04.08 kim

特集:高慢と偏見、オースティン

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おかげさまでジェイン・オースティン著『高慢と偏見』は終了しました。…が、『ペンバリー館』『リジーの庭』と、まだまだ続く高慢と偏見ワールド!!
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翌朝、エリザベスは階段を下りていくと、手紙を持って書斎から出てきた父親に出会った。
「じつは今朝、びっくりする手紙を受け取ったんだ。内容はおもにおまえに関係することだから、すぐに知らせたほうがいいと思ってね。娘がふたりも結婚間近だとは知らなかった。とにかくおめでたいことだから、おめでとうを言わせてもらおう」
これは、キャサリン夫人ではなくダーシー氏からの手紙だと思い、エリザベスの顔はみるみる赤くなった。
「察しがついたようだね。こういうことには、若い娘は勘が鋭い。でも、おまえがいくら賢くても、この手紙の主が誰か、ぜったいにわからん。じつは、コリンズ氏からの手紙だ」
「コリンズさん!あの人が、いったい何の用があるの?」
「もちろん、大事な用があるから手紙をくれたんだ。まず、ジェインの結婚にたいするお祝いの言葉で始まっている。おまえに関係あるのは、こういうことだ。

『ジェインさまにつづいてエリザベスさまもまた、遠からずベネット姓とお別れするとのこと、しかもそのお相手は、わが国でも指折りの名士のおひとりであるという、その噂についてであります』
リジー、そのお相手が誰だかわかるかね?
『その青年紳士は莫大な財産といい、名門の血筋といい、すばらしい後見人といい、人間が望みうるすべての幸せに恵まれた人物であります。しかし、このようなすばらしいお話ではありますが、貴殿ならびにエリザベスさまにひと言ご忠告申し上げます。この紳士から結婚の申し出があった場合、即座にご承諾なさりたいお気持ちはわかりますが、その早まったご承諾が、どのような不幸を招くことになるやもしれません。くれぐれもご用心なさるよう、重ねてご忠告申し上げます』
リジー、この青年紳士はだれかわかったかね?だが、すぐにわかる。
『ご忠告申し上げる理由はこうであります。その方の叔母上にあたるキャサリン・ド・バーグ夫人が、この縁組を好意的に見ていないと考えらえれるからであります』
つまり、その青年紳士はダーシー氏というわけだ!どうだ、リジー驚いたかね?この噂の出所は、コリンズ氏かルーカス夫妻かどっちか知らんが、なぜわざわざ、すぐに嘘とわかるような名前を選んだのかな?ダーシー氏は、女性を見ればアラ探しばかりしているし、おまえの顔などちゃんと見たことがないんじゃないかね?とにかくあきれた噂だ」

エリザベスは父親の冗談に調子を合わせようとしたが作り笑いをするのがせいぜいだった。父親の冗談がこれほどつまらなく聞こえたのははじめてだ。
「面白くないかね?」
「面白いわ。先を読んでください」
「『この結婚はありえないことではないと、昨夜キャサリン夫人に申し上げましたところ、夫人はいつものようにさっそくご意見を述べてくださり、この結婚はベネット家の側に問題があり、たいへんな身分違いの結婚だから、ぜったいに認められないともうされました。そこで、小生は、これを一刻も早くエリザベスさまにお知らせし、彼女とダーシー氏がご自分たちのしていることを自覚し、キャサリン夫人の承認を得られぬ結婚は思いとどまるようご忠告するのが、自分の義務と考えた次第であります』

リジー、コリンズ氏はさらにこんなことも言っている。
『また、リディアさまの悲しい事件が大事に至らずに一件落着したことを、小生は心から喜んでおります。ひとつ気がかりなのは、結婚前にふたりが同棲していたことが、世間に知れ渡っていないかという点であります。しかし噂によれば、貴殿は結婚式のあと新郎新婦をお宅に迎えられた由、この点につきましては、小生は聖職者の義務として、驚きを表明せずにはいられません。それはまさに悪徳の奨励であり、小生がロングボーン村の教区牧師であれば、断固反対したでありましょう。貴殿はキリスト教徒として、ふたりを許すべきではありますが、すぐにふたりをお宅に迎えたり、平然とふたりの名前を耳にすることなど、断じてすべきではありません』

どうだね、リジー、これがコリンズ氏の言うキリスト教的寛容だそうだ!このあとは、コリンズ夫人の近況が書かれている。いよいよ赤ん坊ができるそうだ。だがリジー、ずいぶん浮かない顔をしているじゃないか。まさか淑女ぶって、くだらない噂に怒ったふりをしているんじゃないだろうな。われわれは何のために生きているのかね?隣人に笑われたり、逆に彼らを笑ったり、それが人生じゃないのかね?」
「あら、とっても面白いわ」とエリザベスは言った。「でも、なんだか変な話ね」
「だから面白いんじゃないか。噂の人物がダーシー氏じゃなかったら、この話は面白くもなんともない。だが、彼はおまえにぜんぜん気がないし、おまえも彼が大嫌いだというのに、そのふたりが結婚するというんだから、こんな愉快な噂はないじゃないか。私は手紙を書くのは大嫌いだが、コリンズ氏との文通だけはぜひ続けたい。彼の手紙を読むと、ウィッカムより好きになってしまいそうだ。ウィッカムの厚顔無恥と偽善も捨てがたい魅力があるがね。それでリジー、この噂について、キャサリン夫人はなんて言ってたのかね?この結婚には反対だと、わざわざ言いにきたのかね?」
この質問に、エリザベスは笑って答えただけだった。父親はこの噂をまったく信じていないので、それ以上うるさく質問しなかった。エリザベスは、おかしくもないのにおかしそうな顔をするのがたいへんだった。ほんとは泣きたい気分なのに、笑わなければならないのだ。ダーシー氏は彼女にぜんぜん気がないという父親の言葉は、何よりも彼女を苦しめた。   つづく…

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ジェインの婚約が決まってから一週間後のことだった。馬車の音が聞こえたので、みんなで窓の方を見ると、四頭立ての四輪馬車がやってくるのが見えた。客にしては時間が早すぎるし、お供つきの立派な馬車なので、このあたりの隣人ではない。ベネット夫人とエリザベスとキティーは推測をつづけたが、満足な答えが出ないうちに、部屋のドアが開いて客が姿を現した。それはなんとキャサリン・ド・バーグ夫人だった。
キャサリン夫人はいつもよりいちだんと横柄な態度で部屋に入ってきて、エリザベスのあいさつにも軽くうなずいただけで、何も言わずに腰をおろした。エリザベスは夫人が入ってきたときに、紹介を頼まれたわけではないが、母親に夫人の名前を告げた。……
ベネット夫人はかしこまって、お飲み物でもいかがですかと聞いたが、キャサリン夫人は「何もいただきません」と失礼なほどきっぱり断って、突然立ち上がってエリザベスに言った。「ベネットさん、芝生の向こうに小さな森があるわね。ちょっと歩いてみたいので、案内してくださる?」

エリザベスは、いつもよりいちだんと横柄で感じの悪いキャサリン夫人に、自分からはぜったいに口をきくまいと決心した。
小さな森に入ると、キャサリン夫人はこう切り出した。
「ベネットさん、私がここへ来た理由は、もちろんおわかりね?自分の胸と良心に聞けば、わからないはずはありません」
エリザベスはびっくりして夫人を見た。
「何かの間違いじゃありません?わざわざお越しいただいた理由など、私にはさっぱりわかりません」
「ベネットさん!」怒りをあらわにしてキャサリン夫人が言った。「はっきり言いますが、私は人にばかにされるような女ではありません。2日前に、驚くべき噂が私の耳に入ったのです。あなたのお姉さんが玉の輿の結婚をするだけでなく、あなたも、私の甥のダーシーさんと結婚するらしいという、とんでもない噂です。とんでもないデタラメだということはわかってますし、そんな噂を信じて甥の名誉を傷つけるつもりはありません。でも、私の気持ちをあなたに伝えるために、こうしてとんできたのです」
「その噂がデタラメだとわかっているなら」驚きと軽蔑で顔を高潮させてエリザベスは言った。「なぜこんな遠くまでわざわざいらしたんですか。いったいどうするおつもりですか」
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「それじゃ、はっきり聞きます。あなたは彼と婚約しているの?」
キャサリン夫人を喜ばせることになるので、エリザベスは質問に答えたくなかったが、ちょっと考えてから、「いいえ、していません」と答えた。
キャサリン夫人はほっとしたように言った。
「それじゃ、これからもそんな婚約はしないと、約束してくださる?」
「そんな約束はできません」
「ベネットさん、あなたにはあきれました。もっと話のわかるお嬢さんだと思っていました。でも私が黙って引き下がると思ったら大間違いよ。彼と結婚しないとあなたが約束するまで、私はぜったいに帰りません」
「私も、そんな約束はぜったいに致しません。いくら脅されても、そんなばかな約束は致しません。奥様はダーシーさんとお嬢様の結婚を望んでいらっしゃいますが、私が彼と結婚しないと約束すれば、おふたりの結婚が実現するとお思いですか?もし彼が私を愛しているとしたら、私がお断りしたところで、彼がお嬢様と結婚するとお思いですか?失礼ですが、奥様、彼との結婚をあきらめなさいという奥様の申し出は、間違っていると同時にばかげています。私がそんな申し出に応じるとお思いでしたら、奥様は私という人間を誤解しています。ダーシーさんがご自分の結婚に関して、奥様の干渉をどの程度認めるかは存じませんが、奥様が私の結婚に干渉する権利はまったくございません。ですから、この問題でこれ以上私を悩ませるのはおやめください」
「まあ、そう急がないで、私の話はまだ終わっていません。私が彼とあなたの結婚に反対する理由は、もうひとつあります。あなたの妹さんのいまわしい駆け落ち事件のことも、私はちゃんと知っているんです。妹さんの結婚は、世間体を取りつくろうための結婚で、お父様と叔父様が苦労なさったということも、ちゃんと知ってるんです。そんなふしだらな娘が、私の甥の妹になるんですか。それに夫は、先代ダーシー氏の執事の息子ですね?そんな人が私の甥の弟になるんですか。まったく!あなたは何を考えてるの!あの静かなペンバリー屋敷を、そんなふうに汚すつもり!」
「それ以上おっしゃらなくてけっこうです!」エリザベスも憤然として言った。「あなたはもう十分私を侮辱なさいました。これで失礼します」

エリザベスは立ち上がり、キャサリン夫人も立ち上がり、ふたりは家のほうへ引き返した。夫人も激昂して言った。
「それじゃあなたは、私の甥の名誉も信用も、どうでもいいというのね!なんて恐ろしい、自分勝手な娘でしょ!あなたと結婚したら、彼がみんなの笑いものになるのがわからないの!」
「奥様、もう申し上げることはございません。私の気持ちは全部申し上げました」
「それじゃ、どうしても彼と結婚するつもり?」
「そんなことは言ってません。奥様や、私と何の関係もない人たちの指図は受けずに、私が幸せになれる道を進むつもりだと言ってるだけです」
「わかりました。どうしても私の言うことを聞けないというのね。義務も名誉も感謝も無視するというのね。彼が家族や親戚から見放されて、世間の笑いものになっても構わないというのね」
「この場合、義務も名誉も感謝も関係ありません。私がダーシーさんと結婚しても、義務も名誉も感謝も踏みにじることにはなりません。それに、彼が、私と結婚したために、彼の家族や親戚が怒ったとしても、私はまったく気にしませんし、世間は意外に分別がありますから、こんなことで彼を笑ったりしませんわ」
「それがあなたの本心ね!それがあなたの決意なのね!けっこうです。それならそれで、私の方針も決まりました。ベネットさん、あなたの野心が簡単に実現すると思ったら大間違いよ。私はあなたという人間を試しにきたのです。話せばわかる人かと思っていましたが、こうなった以上、私はぜったいに自分の思いどおりにします」

キャサリン夫人はこんな調子でしゃべりつづけ、ふたりが馬車のドアの前まで来ると、くるっと振り向いて言った。
「ベネットさん、あなたに別れのあいさつはしません。お母さまによろしくとも言いません。あなたたちはそんな心づかいに値しません。私はほんとに怒ってるんです」
エリザベスは返事をぜず、夫人に中へお入りくださいとも言わずに、ひとりで黙って家に入った。二階の階段を上がると、馬車が去る音が聞こえた。   つづく…

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リディアがいなくなると、ベネット夫人は数日間すっかり落ち込んでしまったが、あるニュースがひろまりだすと、ふさいだ気分もけろりと直り、ふたたび色めき立った。
ネザーフィールド屋敷の当主が数週間狩りをするためにお帰りになるので、迎えの準備をするように、女中頭が指示を受けたというのである。ベネット夫人は急にそわそわして落ち着かなくなり、ジェインの顔を見ては、にこにこしたり頭を振ったりした。

一年前に両親の間で激しく議論された問題が、またしても持ち出された。
ベネット夫人はビングリー氏を訪問するようにベネット氏に懇願したが、ベネット氏は結局ムダ骨だったあんなばかな使いは二度とごめんだと取り合わなかった。
とうとうビングリー氏が到着した。ベネット夫人は到着後何日目くらいにディナーの招待状を出すべきか計算していたが、三日目の朝、なんとビングリー氏がダーシー氏とやってきた。

ジェインにとってもエリザベスにとっても、非常に困った事態だった。ふたりともお互いの気持ちを心配し、もちろん自分のことも心配した。
ビングリーとダーシーが部屋に現れると、ジェインはちょっと顔を赤らめたが、とても自然な態度で、恨みがましい様子もなく、礼儀正しくふたりを迎えた。エリザベスも立ち上がって、失礼にならない程度に、言葉すくなにふたりにあいさつすると、また座って刺繍をはじめた。一度ちらっとダーシーを見ると彼はいつものように気難しい顔をしていた。ジェインとエリザベスは、母親のビングリーに対するばかていねいなあいさつを見て恥ずかしくなったが、とくに、ダーシーにたいする儀礼的なそっけないあいさつと比べると、あまりにも露骨な差別に、顔から火が出るほど恥ずかしかった。
ダーシーはエリザベスに、ガーディナー夫妻はお元気ですかと、エリザベスをあわてさせる質問をすると、あとはほとんど口をきくことはなく、何かひとりで考え込んでいるような様子だった。ビングリーは最初はあまりジェインに話しかけなかったが、五分ごとに思いが高まっているようだった。
やがてふたりが、そろそろ失礼しますと言って立ち上がると、ベネット夫人は、かねてからもくろんでいたディナーの招待をした。

ロングボーンのディナーはなかなか盛大だった。みんなが待ち焦がれていたビングリーとダーシーは狩猟家らしく、時間通りに到着した。エリザベスは、ビングリーがどこに座るか注目したが、どこに座ろうか迷っているビングリーにジェインがにっこり笑ったので一件落着し、ジェインの隣に座った。一方ダーシーは、エリザベスから一番離れたベネット夫人の隣の席だ。ダーシーに対する母親の失礼な態度を見ると、エリザベスはいっそのこと何もかも言ってしまおうかと思った。食事が済めば、ダーシーと話す機会ができるかもしれない。少しは実のある会話ができるかもしれない。エリザベスはそうなることを願ったが、ほとんど話す機会がないまま、ふたりの馬車がいの一番に命じられた。

それから数日後、ビングリー氏がひとりで訪ねてきた。ダーシー氏はその朝ロンドンへ出かけて、十日後に戻ってくるということだ。ビングリー氏は一時間以上みんなと過ごし、たいへん上機嫌だった。ベネット夫人は彼を食事に誘った。その日は先約があるとのことだったが、ご迷惑でなければ、近いうちに伺わせていただきますと言った。「それじゃ、明日はいかが?」ベネット夫人が言うと、「ええ、明日は約束がありません」彼はうれしそうに招待に応じた。
翌日、ビングリー氏はきっかり時間通りにやってきた。女たちはまだ誰も支度ができていなくて、ベネット夫人はジェインの部屋へとんでいった。だが、ジェインは、誰かといっしょでないと下へ行くのはいやだと言い出して、どうしてもひとりでは行かなかった。
ジェインとビングリー氏をふたりだけにしたいというベネット夫人の願いは、晩になっても露骨に示され、お茶が済むとエリザベスとキティにさかんに目配せを送った。ベネット夫人はそれから五分ほど我慢していたが、この機会を逃してなるものかと突然立ち上がり、キティを連れ出し、エリザベスにも用事があるからと呼び出した。
だが、この日のベネット夫人の画策は失敗に終わった。ビングリー氏は文句なくすばらしい客だったが、残念ながらジェインに愛の告白はしなかった。

ベネット夫人が勝手にベネット氏との狩猟の約束を交わしたので、翌朝、ビングリー氏は約束の時間にやってきて、午前中はベネット氏と狩猟を楽しんだ。ベネット氏は、彼が思っていたよりずっと楽しい人物だった。ビングリー氏はもちろん一緒にディナーに戻ってきた。食事が終わると、ジェインとビングリー氏をふたりだけにしようというベネット夫人の画策がまた始まった。エリザベスは手紙を書く用があったので、早々に引き上げた。みんながトランプを始めるというので、ジェインのそばにいる必要はないと思ったのである。
ところが、戻ってみると、驚いたことに母親が一枚上手だった。ドアを開けると、ジェインとビングリーがふたりだけでマントルピースにもたれて、何か真剣な話をしていた。それだけでは何でもないかもしれないが、ふたりが振り向いて、あわてて離れたときの顔が全てを物語っていた。ビングリーはジェインに何かささやいて、部屋をとびだしていった。
ジェインは、いちばん喜んでくれるはずのエリザベスにすぐに話さずにはいられず、彼女を抱きしめると、うれしさいっぱいの表情で、自分は世界一の幸せ者だと打ち明けた。
「幸せすぎるわ!ほんとに幸せすぎる!私にはもったいないわ。世界中の人が私みたいに幸せになってほしい」
エリザベスは心をこめて、うれしさいっぱいに祝福の言葉を述べたが、言葉ではとても言い表せるものではなかった。しばらくすると、ビングリーが客間に戻ってきた。ベネット氏との話は簡単にすんだようだ。
ベネット氏はビングリー氏が帰ると、待ちかねたようにジェインに言った。
「ジェイン、おめでとう、きっと幸せになれるよ。おまえたちはきっとうまくいく。性格もよく似てるし。ふたりとも協調性が豊かだから、二人では何も決まらんだろうし、ふたりとも人がいいから、召使にだまされるだろうし、ふたりとも気前がいいから、家計はいつも赤字だろう」

「とってもうれしいことを聞いたの」ある晩ジェインが言った。「私が春にロンドンにいたことを、ビングリーさんは知らなかったんですって!当然知ってると思ってたのに」
「私はそうだろうと思っていたわ」とエリザベスは答えた。「でも、ビングリーさんはどう説明したの?」
「きっとミス・ビングリーのしわざね」とジェインが言った。「リジー、信じてくれる?ビングリーさんは、去年の十一月にロンドンへ行ったとき、ほんとに私を愛していたの。だから、誰かが彼に、私は彼に気がないなんて言わなかったら、あのときロングボーンへ戻ってきたはずなの」
「つまり、ビングリーさんは思い違いをしたわけね。でも、そういう控えめなところが彼のいいところね」
ジェインはすぐに賛成し、ビングリーの思慮深い性格と、自分の美点を自慢しない奥床しい性格をほめあげた。
彼がダーシーの干渉について何も話していないとわかって、エリザベスはほっとした。ジェインは世界一寛大な心の持ち主だが、あの話を聞いたら、ダーシーに偏見をもつにちがいないからだ。

ベネット夫人は、リディアとウィッカムのことはすっかり忘れてしまった。今はジェインがいちばんかわいい娘であり、ほかの娘はどうでもよかった。
ベネット家の長女ジェインの結婚の噂は、あっというまにひろまった。ベネット夫人は親の当然の権利を行使して、妹のフィリップス夫人にささやき、そしてフィリップス夫人は誰の許可もなく、メリトンじゅうの知り合いにささやいてまわったのである。
たちまちベネット家は、世界一幸運な一家ということになった。つい、ニ、三週間前にリディアが駆け落ちしたときは、世界一不幸な一家だとささやかれていたのだが。   つづく…

 
うれしいことに、叔母の返事はすぐに届いた。

愛するリジー
たったいまお手紙を拝見しました。正直言って、あなたからこういう手紙を頂いてびっくりしました。あなたは当然このことを知っているはずだと、わたしは思っていたのです。主人も私と同じようにびっくりしています。あなたも関係者の一人だと思ったからこそ、主人はあのように一役買って出たのです。でも、あなたがほんとうに何も知らないのなら、はっきり説明しなくてはなりません。

私がロングボーンから帰宅した日に、思いがけない人が主人を訪ねてきました。それはなんとダーシーさんで、ふたりは部屋にこもって何時間も話していました。……ダーシーさんは主人にこう言ったのです。つまり、リディアとウィッカムさんの居所を突き止めて、二人に会って(リディアとは一度、ウィッカムさんとは何度も)話をしたというのです。私の推測では、ダーシーさんは私たちより一日遅れてダービシャー州を発って、ふたりの居所を突き止めるためにロンドンへ来たのです。なぜそんなことをしたかというと、この駆け落ち事件は自分にも責任があると思ったからだそうです。つまり、ウィッカムがひどい人間だということを、自分がみんなに話していたら、ちゃんとしたお嬢さんがウィッカムを好きになったり、駆け落ちしたりするはずはないから、自分にも責任があるというのです。……

ダーシーさんはロンドンへ来て数日後に、二人の居所を突き止めました。ヤング夫人という女性が手がかりになったようです。以前ミス・ダーシーの家庭教師をしていた女性で、何か落ち度があって解雇されたのだそうです。実際ウィッカムは、ロンドンに着くとすぐにヤング夫人を訪ねてきたそうで、空き部屋があったら、ふたりはヤング夫人の下宿屋に落ち着くつもりだったようです。ダーシーさんはまずウィッカムに会い、それから、ぜひリディアに会わせてほしいと頼みました。リディアを説得して一刻も早く家族のもとへ帰らせるつもりでした。ところが会ってみると、リディアはそこを動くつもりはなく、家族などどうでもいいし、援助も必要ないし、ぜったいにウィッカムと別れるつもりはないし、いつかはきっと結婚するし、いつになってもかまわないとリディアは言ったそうです。そこまで気持ちがはっきりしているなら、すぐにふたりを結婚させるほかないと、ダーシーさんは考えましたが、困ったことに、ウィッカムと最初に会ったときの話で、彼に結婚の意志がないこともわかっていました。ウィッカムは、賭博の借金のために連隊をやめざるをえなくなったのだと白状し、いっしょについてきたリディアがどうなろうと、それは本人が悪いのだと、はっきり言ったそうです。……それで、ダーシーさんは、ウィッカムと何度も話し合い、ウィッカムはいろいろ勝手な要求をだしてきたそうですが、妥当なところで話し合いがつきました。

ウィッカムとの話し合いがつくと、ダーシーさんのつぎの行動は、リディアの叔父つまり主人にそれを知らせることでした。……ダーシーさんは、この問題はあなたのお父様には相談せずに事を進めたほうがいいと判断し、お父様がロングボーンへお帰りになってから、ふたたび主人を訪ねてきました。ふたりは長い時間話し合いました。そして、話が決まるとロングボーンへ早馬の速達便が送られました。

それにしても、ダーシーさんはものすごい頑固者です。あの頑固なところが、彼のほんとうの欠点じゃないかしら。とにかく全部自分でやらないと気がすまないのです。結局うちの主人が譲歩して、ダーシーさんの希望通り、お金は全部ダーシーさんが出して、主人は名誉だけを担うことになりました。主人はお金を出していないのに、出したみたいに思われるわけで、すごく不本意だったと思います。ですから、今朝のあなたの手紙を見て、主人はほっとしたと思います。でも、このことは誰にも話さないでください。

リディアとウィッカムのためにどんな処置が取られたか、それはあなたもご存知だと思います。ウィッカムの借金は千ポンドを超えていたと思いますが、それを全部ダーシーさんが支払い、さらにリディアの持参金千ポンドと、ウィッカムの将校の地位を買うお金も、全部ダーシーさんが出すことになったのです。ダーシーさんがなぜそこまでなさるのか、それはすでに説明したとおりです。それも一理あるかもしれませんが、ダーシーさんがウィッカムのことを黙っていたからといって、今回の事件に責任があるなんて私は思いません。それに、リジー、これだけは確かですから言っておきますが、いくらダーシーさんがそうおっしゃっても、それでは主人は譲歩しなかったと思います。ダーシーさんがリディアのためにそこまでするのは、ほかにも理由があると、主人は思ったからこそ、今回は譲歩して彼に花を持たせたのです。……
そういうふうに話が決まると、ダーシーさんは、まだみなさんがいらっしゃるペンバリー屋敷へお帰りになり、結婚式のときにもう一度ロンドンへ来て、そのときにお金のことも全部片付けることにしました。

これですべてお話ししたと思います。びっくりしたでしょうが、すくなくとも不愉快ではないと思います。……
ダーシーさんは約束どおりダービシャー州から戻ってきて、リディアが言ったように、結婚式にも出席してくださいました。リジー、いままで言い出す勇気がなかったのですが、私はダーシーさんが大好きです。私たちに対する彼の態度は、ダービシャー州で親切にしてくださったときのままでした。頭の良さにも、物の考え方にも、ほんとうに感心します。あえて難点をいえば、ちょっと明るさに欠ける、ということかしら。でも、いい奥さんをもらえば、それは奥さまが直してくれます。彼はとっても秘密主義です。あなたの名前を一度も口にしませんでした。……
私をペンバリー屋敷から仲間はずれにしないでください。もう一度行って、あの広大なお庭全部見せていただけたら、本当に幸せです。すてきな仔馬に引かせた低い四輪馬車に乗ってお庭めぐりをしたら、最高でしょうね。……
                                                           M・ガーディナー

手紙を読み終えると、エリザベスは体が震えるほどどきどきし、喜びと苦痛とどちらが大きいか自分でもわからなかった。
それにしても、何のお返しも出来ないダーシー氏に、ベネット家がこれだけの恩義をこうむるというのは、なんとしても心苦しい。リディアを連れ戻して、名誉を救ってくれて、そのうえお金まで出してくれたのだ。それなのに、自分はこのあいだまで彼をあんなに毛嫌いし、あんなに無礼な言葉を浴びせてきたのだ。エリザベスは自分が恥ずかしくなり、彼をすばらしい人間だと思った。同情と名誉のために自分に打ち克つことができる彼を、ほんとうにすばらしい人間だと思った。   つづく…

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リディアの結婚が決まって、ベネット夫人は二週間ぶりに階下へ降りてきた。駆け落ち事件という不名誉もなんのその、彼女の頭の中も、口から出る言葉も、すべてはひとつ、豪華な結婚式の列席者や、美しいモスリンの花嫁衣裳や、新しい馬車のことだった。
召使たちがいるあいだは、ベネット氏は黙って彼女にしゃべらせていたが、召使たちが出て行くと口論になった。
ベネット氏は、リディアの花嫁衣裳代として一ギニーも出す気はないし、この結婚式に愛情のしるしを示す気はまったくないというのである。ベネット夫人には何がなんだかわからなかった。ベネット夫人にとっては、娘が駆け落ちして、結婚前に二週間同棲生活を送ったことよりも、娘が花嫁衣裳もなしに結婚式を行うことの方が、はるかに由々しきことであり、はるかに恥ずかしいことだったからだ。

エリザベスはジェインの手紙で錯乱状態のときにダーシー氏に会ったために、彼に全てを話してしまったが、いまはそれを深く後悔していた。
だが、リディアの結婚がなんの不名誉も無く立派に行われたとしても、ダーシー氏はベネット家と縁続きになるつもりはないだろう。欠点だらけのベネット家に、さらにまた、彼のもっとも軽蔑する男が近親者として加わるのだから。ダーシー氏が自分との結婚をあきらめるのは当然だとエリザベスは思った。そして、彼に会うことはもう二度となさそうなのに、彼とならきっと幸せになれるだろうと思った。

まもなくガーディナー氏から、またベネット氏に手紙が届いた。金銭的援助に関するベネット氏のお礼の言葉にたいしては、ご家族の幸せのためにできるだけのことをしたいと思っています、と簡単に答え、この問題にはもう二度と触れないで欲しいと書かれていた。手紙の趣旨は、ウィッカムが国民軍をやめる決心をしたことを知らせるものだった。彼の昔の友人の力添えで、イングランド北部に駐屯中の連隊に入隊する予定だということだった。そして、リディアは、できれば赴任の前にもう一度家族に会いたいと言っているとのことだった。
ベネット氏と娘たちは、ガーディナー氏と同様に喜んだが、ベネット夫人だけは、ウィッカム夫人となったリディアと過ごす日々を楽しみにしていたので、大変な失望だった。
北部地方へ発つ前に、もう一度ベネット家の敷居をまたぎたいというリディアの願いを、ベネット氏は最初は頑として認めなかった。だがジェインとエリザベスはリディアの気持ちと将来を考えて、この結婚が両親から祝福されたほうがいいと思ったので、懸命に父親を説得した。

いよいよリディアの結婚式の日がやってきた。ジェインとエリザベスは、ふたりが到着するのが恐ろしかった。とくにジェインは、もし自分が駆け落ち犯人だったらどんな気持ちだろうと想像し、リディアも同じ気持ちだろうと思い、さぞかしつらいだろうと胸がふさがる思いだった。
ついに馬車が到着し、リディアの声が玄関ホールに響いたかと思うと、朝食室のドアが勢いよく開いて彼女がとびこんできた。ベネット夫人がリディアを抱きしめ、嬉しさいっぱいに迎え、つづいて入ってきたウィッカムにも、愛情たっぷりにほほえんで手を差し出し、ふたりの幸せをつゆ疑わぬ様子で、弾んだ声でおめでとうを言った。
だが、新郎新婦が父親のほうへ向き直ると、あまり温かい歓迎ぶりではなかった。厳しい表情がいっそうきびしくなって、ほとんど口もきかない。反省の色が全く無いふたりの態度が我慢ならないのだ。ふたりの態度にはエリザベスもむかついたし、ジェインでさえショックを受けた。ウィッカムはいつも人当たりのいい態度なのだが、リディアと同様、反省の色は全く無かった。

リディアとウィッカムは十日ほどロングボーンに滞在する予定だった。ウィッカムはロンドンを発つ前に辞令をもらっていて、二週間後には連隊に入らなければならないからだ。ふたりの滞在が短すぎると残念がるのはベネット夫人だけだった。だが夫人は、その短い滞在期間を最大限に利用し、リディアを連れて知り合いじゅうを訪ねてまわり、家でも毎日のようにパーティーを開いた。
ふたりが来て数日後、リディアはジェインとエリザベスと散歩をしているときに言った。
「リジー、私の結婚式の話し、あなたにはまだしてないわね。お母さまやみんなに話たとき、あなたはいなかったもの。どんな結婚式だったか知りたいでしょ?」
「いいえ」とエリザベスは答えた。「あなたの結婚式のことは、あまり人にはなさないほうがいいわ」
「あら、変なことを言うのね。でも、とにかく教えてあげる。……馬車が玄関に着いたとき、叔父様が何かの用で呼び出されたの。私はパニック状態になって、どうしていいかわからなかった。だって、結婚式で私を新郎に引き渡すのは叔父様の役で、正午を過ぎたら結婚式を挙げられないんですもの。でも幸い、十分ほどで叔父様がもどってきたので、やっとみんなで出かけたというわけ。でも、あとでよく考えたら、叔父様がいなくても結婚式は挙げれたの。ダーシーさんが代わりを勤めればいいんですもの」
「ダーシーさんが!」腰を抜かすほどびっくりしてエリザベスが言った。
「ええ、そうよ。ウィッカムといっしょに来ることになってたの。あら、大変!忘れてた!これは誰にも言っちゃいけないんだわ。ふたりに固く約束したの!彼に叱られちゃう。これはぜったいに秘密なの」

だが、こんな重大な問題を、こもまま知らずにいることは不可能だ。ダーシー氏がリディアの結婚式に出席したのだ!エリザベスは急いで紙をとりだすと、叔母のガーディナー夫人宛てに短い手紙を書き、リディアがもらした事実について、差し支えなければ説明してくれないかと頼んだ。   つづく…


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