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8区、キング。9区、カケル。
私には最もリアリティの感じられるキングと、最もフィクショナルな存在に見えるカケル。(悪い意味ではなく!だってカケルは明らかに「特別」だしね)
10人の中で両極にいる二人が襷をリレーすることでつながるのも、この物語らしいと思う。
キングの自己分析が、自分にも刺さると思ったのは私だけじゃないだろう。
「表と裏で気持ちがずれまくって」「どうも俺だけ浮いてる気がする」「誰にも心を開いた気がしない…」「それじゃ誰も踏み込んでこねえよな」
そこまで分かっていて、でもどうしたらその寂しさをぬぐえるのかが分からない。
本当は、うまくやっているように見える周りの人々も、みんな同じ寂しさを抱えているかもしれないのだけれどね…。
一番リアルだと思うのは、「今さらこんな自分を変えようもねえし」というところ。
駅伝にチャレンジすることで、嫌でたまらなかった自分の性格が変わった!…というのではないのだ。
自分は変わらない。そう、そんなに簡単に人は変われない。
変わったのは、自分に対する見方だった。こんな自分こそが誰でもない本当の「自分」なんだ、と受け入れたこと。
どこかに自分を100%肯定してくれる存在がいるかもしれない、その人にさえ出会えれば…と願うことはいい。でも、まず、自分が自分を肯定できなかったら、一歩も踏み出せない。
キングはそのことに気づいた。
走るうちにキングの表情が、だんだんと確かなものになっていく。
遊行寺の坂を駆け上がる姿が力強い。今この瞬間、沿道のたくさんの人たちが、自分だけを見て応援してくれているのを感じるキング。
個性も考え方も異なる10人が一つのゴールを目指し、独りきりで立ち向かうしかない「走るという行為」を通してつながる競技、駅伝。
個のままでつながることが出来る。それを実感できたことこそが、キングにとっての「ゴール」だったのではないだろうか。
カケルに襷を届けた瞬間、見栄もなにも振り捨てて、くしゃくしゃになるキングの表情が何ともいえない。「頼んだ」と言える、「はい」と答えてくれる誰か。恃むことができる相手がいる心強さ。彼がそれを確かなものとして掴んだことが、やっぱり我がことのように嬉しかった。
覚めなければいいと思うほどのいい夢も終わりが来る。走り終われば、二度とこのチームで走ることはない。キングはキングのまま、「寂しさを抱きしめ」て、これからも生きていくしかない。
でも、彼の心の中の確かなものは絶対に消えないから、きっと大丈夫。
そう、思えた。
一方、走り終えた榊は、出走前のカケルと出くわす。自分の走りに満足できなかったのだろう彼は、「…でも認めない。寛政に未来なんてない」と吐き捨てるが、カケルはもう動揺しない。
「襷を届けたいだけだ。」「待ってるんだよ、みんなが」と、少し遠くを見ながら静かに言う。
これまでになかったカケルの反応に少しとまどう榊に、東体大のチームメイトたちが駆け寄ってくる。口々に「榊、やったよ!区間五位だって!」「やったな!」と喜んでくれているのだ。ようやく笑顔になる榊。
…この場面は、なんだか前回思ったことへの答えのように見えた。
榊にだって仲間がいる。彼さえそのことに気づけば、彼の目に映る世界は変わるかもしれない。彼にとっての、走る意味も。
カケルが到達した「榊は俺の『敵』じゃない」そして「榊にとっても俺は『敵』じゃない」という思いが、いつか伝わるといい、と思う。
走り出したカケルの内面は、とても静謐だ。さざ波ひとつ立たない湖面のよう。
ハイジがくれた「君は俺にとって、最高のランナーだ」という言葉、その信頼に支えられて彼は走る。
目に映るものには反応し、自分の体の状態とレース展開には意識が向くが、それ以外のことは一切削ぎ落とされ、極度に走りに集中している。
これまで走ってきたみんなが自分と対話していたこの時間は(モノローグがなく、心中はただ走り抜くことのみだっただろう神童は、他のメンバーと少し違うが)、カケルにとっては全く別の時間なのだ。
みんなの言葉や給水要員の言葉から、そのスピードが尋常でない速さなのだと分かるが、しかし「人じゃない」とまで言われると、ユキのように「あんまり遠くへ行くな」(21話)とも言いたくなる…
そして王子の言う「努力が空しい」という気持ちもよく分かる。
ハイジはそんな王子に「同じ道を走っても、辿り着くゴールはそれぞれにあるんだよ」と言ってやるが、多分、自分自身が同じ気持ちを抱き、何度も何度も考えてきた末の彼なりの答えなのだろう。
美しさ、強さ、ぎりぎりまで引き絞られた集中がもたらす緊張感、かすかな不安。しんとした描写が続くのに、なぜかわからないけど動悸が高まってくる不思議な感覚。
エンディングがはじまって、ずっとドキドキしていた自分に気づいた。
いつもあまり「説明」しない予告だが、最終回を前にした予告で見せたのはたったひとつのことだった。
…そして、ハイジの瞳には何が映るのか。
カケルの給水要員くん、ちゃんと水を渡せて良かったな〜あんなに必死にカケルのスピードに追いすがって、受け取ってもらえなかったらかわいそうだよな…とハラハラしました。藤岡の給水要員くんは、藤岡が好きすぎるやろ!(笑) ちらを笑みを浮かべてボトルを返す藤岡くんもほんとに「王者の風格」ですが。
さて、次で最終回。
折しも、外は春。ハイジたちが10人揃って走り始めた春ですね。 最後にどんな光景を見せてもらえるのか、ただ楽しみです。 |
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