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そして、アンカーのハイジが遂にゴールにたどりつく10区。
10人がそれぞれに、自分なりの走る理由を胸に全力で走りきって、自分だけのゴールと、全員で夢見たゴールに同時にたどりついた。
これ以上のものは望めない、完璧な最終回でした…!
心に残る台詞を書きだそうとすると、結局ほぼ全編書いてしまいそうだし、自分の拙い語彙では感じたことの半分も言い表せない。それでもやっぱり見たものを言葉で留めておきたいという気持ちを押さえられない。
だから今回は逐語訳的に流れを追いながら、感じたことを記そうと思います。メモ的なものになりそうですが、今はこの形でしか書けないのです…
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藤岡は六道大を首位に押し上げ、さらに区間新記録をたたき出して9区をゴールした。しかし、向き合ったハイジが祝意を伝えつつ、彼を超える信頼をカケルに寄せていることを感じ取る。
「あるのか?この先に…ゴールなんて」 終わりがないことへの絶望を、ふと覗かせる藤岡だが、「でもやめられない。だろ?」と返すハイジ。その一言で切り替え、出走するハイジにエールを贈る藤岡。
ハイジには分かっている。カケルと藤岡は互いに競い合い、さらに強くなり、高みを目指すだろう。「なら、俺は」―そう、ハイジは?
出走が近づき、スタートラインに向かうハイジに、王子は思わず声をかける。みんなでここまで来れた。だからもう充分なのだ。ただ、無事に帰ってきて欲しい…しかし、本当に言いたい言葉は飲み込んで言う。「どうぞ好きなだけ、お走りなさい」
少しでもハイジにストップをかけるようなことは言うべきじゃない。ハイジに感謝するなら、彼の背中を押して彼の望みが叶うよう祈るだけだ。それが痛いほど分かっている王子。なんて繊細で、なんて男前なんだ…!
走り始めた頃、あれほど距離があった二人がこんなにも分かりあっている姿につい涙ぐんでしまう。
「ゾーン」と呼ばれる境地に至り、自分の意識さえ置き去りにして走るカケル。21話でユキが垣間見た、美しいけれど寂しい、独りきりのカケルの世界。
しかし、その瞳にハイジが映る。カケルを生きた人間の世界に繋ぎとめる大切な存在。
ここに至るまでの襷リレーの場面は、どの区も本当に感動的だった。
(私的にはやっぱりユキからニコチャンがベスト、王子のゴールが二番目ですが!あ、あとジョータからジョージへは唯一爆笑でしたが!)
自分に向かって駆け来る相手を呼ぶ声の頼もしさ。襷を渡す瞬間の、恃み恃まれるその思い。だけど、カケルとハイジにはもう言葉もいらない。カケルを待つハイジの表情が、思いをすべて表している。
カケルに初めて出会った時の衝撃、彼に見たのは「ついに届くことがなかった理想の姿」―と過去形で語るハイジの覚悟に胸が苦しくなる。
二人の襷リレーの瞬間があまりにもきれいで、時をとめてずっと見ていたいと思う。
カケルは藤岡の区間新記録を1秒更新した。アナウンサーの言葉に、「…終わるわけがない」と独りごちる藤岡。ハイジが言う通り、カケルの存在が藤岡を駆り立てる。そこにあるのは絶望ではなく、終わりがないからこその希望。
限界に挑む心がある限り、次がある。
ハイジの力強い走りはほんとうに美しい。一瞬も目が離せない。
走るとは何なのか、全部を賭けて問うてきて、いまここにいる幸せを体中で感じながら走るハイジ。もう二度と走れなくなってもいい。
「こんな幸福なことがあるか。嬉しい。涙が出そうだ。俺は本当に幸せだ。たとえ、もう二度と走れなくなったとしても、俺は走ることが大好きだ。」
ハイジ…。(…ただただ泣)
こんなにシリアスな展開なのに、大手町で合流した葉菜ちゃんに「双子のどっちが好きなのか聞け!」とムサに圧をかけるユキとニコチャンの顔にはやっぱり笑ってしまう。確かに今後のことを考えると大問題ではある。
シード権を争う東体大のペースが落ちているかも!と指摘する神童。確認する!とユキ。 荒くなる息遣い、表情、眩む視界、ブランコが軋るような音で、ハイジの右足の痛みが次第に増してきていることが表現される。(「痛い」とは一言も言わない。ハイジはたとえ心の中でも絶対に言わないだろう)
「悪いな、無茶を言って…」 右足を労うハイジ。この足を恨んだときもあっただろう。しかし今はすべて受け入れていることが分かる。
父に対しても、もうわだかまりはない。ただ、父が示したのとは違うやり方で、今の自分が掴んだ希望の形を見て欲しいと願う。
強くなり、もはや何のせいにもせず、すべて自分の責任で引き受ける覚悟を持ったハイジの、本当の自立。
一方遠い故郷で、今日くらい…と引き留める妻の言葉にも耳をかさず、いつも通り陸上部の練習に臨むハイジの父。しかし、イヤホンで箱根の実況を聞いている。
自分の知る最善の方法と信じてひたすら走らせた結果、ランナーとして致命的な故障を抱えた息子をどう思っていたのか、本当のところは分からない。
不器用そうな人なので、かける言葉が見つからなかったのかもしれない…と思う。
でも、息子の思いはちゃんと伝わった。ストップウォッチを握る手が震えている。
(10話で自分の記録より王子を気にかけ並走するカケルの姿を見て、ハイジに込み上げる感情が同じ形で表現されていたことを思い出す)
カントクとハイジの回想シーン。
「やっぱり走りたいです。ようやく分かりました。走っても走らなくても、同じだけ苦しいってことが。成し遂げられないとしても、この場所で、心が望むことをやり通したいです。」 竹青荘の看板に触れ、固く固く決意するハイジの顔。
「因果なもんだなあ。いつだってお前のいる場所が、お前の走るコースになる。」と返すカントク。
ハイジは藤岡の走る箱根駅伝を見て、たとえ叶わなくても心が望むことを希求しようと決めた。とすると、それは1年生の冬だったはず。ニコチャンに向かって自分は「弱い」と言った春から、いやもっと前、六道大の誘いを断り、寛政大に進むことを決めた時から、彼はずっと自分の進む道を手探りで探し続け、本当に長い間考え続けていたのだ。
「この10人で箱根に出る」という決意がどれだけの気持ちに支えられたものだったか、改めて思い知る。
まったくの昼行燈に見えたカントクを、ハイジが心から信頼している理由もわかった。私は今頃ようやく気付いたが、カントクは選手の自主性を重んじるハイジタイプの指導者だったのだ。
ほかのメンバーへの声かけは、基本的にハイジからの伝言を伝える形で彼の意思を尊重する。(神童の時だけは何も言えないハイジに代わり行動し、うつむきかけたハイジには自分のやるべきことを思い出させ、顔をあげさせた)
ハイジに対する声かけも、状況は的確に伝えるが決して煽らない。
(それに対して、東体大の監督が榊にかけた「もっといけるぞ榊!もっともっと!」は、仙台城西高校のあの監督とかぶる。ハイジにも、田崎カントクにも出会えなかった榊の不幸を思う)
ついに大手町に駆け込んできたハイジ。順位は5位。強いビル風に懸命に逆らって走る。
再び目を開いたとき、ずっとずっと夢見てきたゴールが見え、思わず「ああ…」と息をのむ。その瞳に映る、大きく手を振りゴールで待つカケルの姿。なつかしげな表情になるハイジ。
もう少し。その時、右足が大きく軋み、壊れた。
その瞬間の叫びはあくまで心象で誰にも気づかれず、ハイジの表情は変わらないが、カケルには何が起こったかわかる。
子どものように、心そのままの表情で涙を浮かべるカケル。
「あなたは言った。走るとは何なのか、それが知りたいとあなたは言った。その答えは、あなただ。あなたそのものだ。」
二人の魂が邂逅する。
このカケルの言葉は原作にはない。正確にはもう少し違う表現で語られる。物語を牽引してきた問いだけに最初は、あ、違う答えなんだ?と感じたが、よく考えるとそうではなくて、原作では「走るという行為」の意味が大きく深く広がっていくイメージだったのに対し、アニメでは「ハイジという存在」に凝縮することで強度を増したのではないかなと思うようになった。
なによりこの場面の二人には、この答え以外考えられない。
テープを切るハイジ。その頂点の姿。そのまままっすぐカケルに向かって走って行く。抱きとめるカケル。
右足は激しく痙攣しているがその顔に苦痛はない。ただ、すべてに打ち勝ち、望んだものを掴み取った満足と、望む場所に辿り着いた安らかさだけがある。
東体大を2秒上回り、シード権を獲得した寛政大学。
アオタケのメンバー、葉菜子や後援会みんなの号泣。(特にユキの号泣に胸を衝かれた…)
男泣きするカントクにハンカチを差し出す監督車のドライバーももらい泣きしている。(この人もずっと寛政大に並走して見ていてくれたのですね)
悔し泣きする榊。微笑む藤岡。空を見上げる父。
カケルに支えられ現れたハイジが閉じていた瞳を開くと、そこには自分を待っていた仲間がいる。何もかも洗い流したようなハイジの顔に、大きな、心からの笑みが浮かぶ。駆け寄るみんな。
その間もゴールを目指して必死に走る選手たち。そのひとりひとりにそこに賭けた思いと人生がある。
このカットと、エンディングの曲で、物語が一気に大きく広がった。
ハイジの声が響く。「どうだ、見えたか?頂点は!」
あれから3年後の春。建て替えが決まった竹青荘の庭での同窓会。
ニラ、男の子だったんだ…!アオタケってほんとに男所帯だったんだなあ。ニラにはパートナーが出来ていて、子犬がたくさん産まれている。
王子のスーツ姿が似合いすぎてて麗しい。ニコチャンは髪を切って長いモラトリアムから抜け出している。(いやーいいなあ。惚れ直しました
)ユキは順当に弁護士でしょう。ムサはダンディな大学院生。ムサに就職のアドバイスをしてやろうか?というキングも、じゃあちゃんと社会人になっているんだ。神童だけがちょっと謎。東京で就職したのか、地元に帰ったのか…彼は商学部だったから、経営を勉強して実家の農業をなんとかしようとしてるのかと思っていた。あのスタイルはそれで正解ってことかな?いやでも、遠くから来るなら逆にちゃんとした格好してきそうだし…。
そしてハイジは右足をひきずっているが、それ以外は何も変わっていない。新設の実業団のコーチとして迎えられるようだ。
あの時の大手町でのムサと葉菜ちゃんの回想シーン。双子のどっちが好きなのか問われ、照れる葉菜ちゃんの可愛いこと。こんなに素直に応援してあげたくなるヒロインいるかしら。二人だけの秘密!という葉菜ちゃんとの約束を守るムサ、紳士だ。
原作ではこの同窓会は4年後、カケルたちが卒業する春だったけど、その一年前に持ってきたことで、寛政大陸上部と葉菜ちゃんのその後も描くことができた。
ジョータがあれからも走り続けたのは、多分どう考えても葉菜ちゃんへの思いが大きかっただろう。ここで降りたら、葉菜ちゃんジョージにもってかれちゃうもんねえ。どうやら二人は話し合いの結果、卒業するまでの不可侵条約を取り決めたらしい。
たくさんの部員を率いてジョッグするカケルと双子。その前に、先輩たちの走る姿が見えている。10人の語り。
―風が強く吹いている
―逆らうように走り出す
―その先に探す答えがあると信じて
―強さとは
―走るとは
―生きるとは
―すべては風の向こう側
―希望はぼくらの胸の中
―道はほら、目の前にある
「だから今日も走るんだ。どこまでだって走るんだ。」
すべての発端だったハイジが、元気に幸せそうに生きている姿に、心の底から安堵する。
良かった。一番大切なものを投げ打ったけれど、それ以上のものをちゃんと受け取って幸せになっているんだね。
そして、彼からの襷を受け取ったカケルの声が響く。
「なあ、走るの好きか?」
あの合宿の夜のような、流れ星。
この作品自体が私にとって、二度と覚めて欲しくないと思うほどいい夢でした。こんなパーフェクトな最終回を見せられたら、本当に何も言えない。これを見届けられた幸運に感謝。
過ぎていく時の中ですべては変わっていくのかもしれない。でも怖くはない。その一瞬一瞬を全力で生ききれば、心の中に残る確かなものがきっとあるのだから。だから、勇気を持って生きなくちゃ!と思う。
いい歳をした自分でさえこんなに励まされるのだ。若い人はどんなにだろう…。
この美しく、強い物語を創り上げ、届けてくださったすべての方に、心からの労いと感謝の気持ちを捧げます。
原作者の三浦しをんさんも、ご自身のブログで「風つよ」が最終回を迎えてのメッセージを書いておられます。こちらも感動…!→ビロウな話で恐縮です日記
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)ユキは順当に弁護士でしょう。ムサはダンディな大学院生。ムサに就職のアドバイスをしてやろうか?というキングも、じゃあちゃんと社会人になっているんだ。



初めまして。何度となくお邪魔して、丁寧に読ませて頂きました。特に23話の感想、本当に同感です。ここまでアニメに夢中になった本当に久しぶりで、Twitterで他の方の感想を追いながら、また録画を見る、そんな日が続いております。その中で双葉さんの書き込みを拝見して、気持ちを交わしたいと思いつつ、公開されるの憚れると躊躇しながら、やはり同感を伝えることを選びました。
何かと批判が出ている往路最終区の表現について、是非、双葉さんのご感想を読んでみたいなと思いました。
突然舞い込んできて恐縮です。上記にかかわらず、何かまた風が強く吹いているについての書き込みをして頂けたらなと思います。
どうぞよろしくお願いいたします。
[ ぴんく ]
2019/5/31(金) 午後 2:15
ぴんくさん、コメントありがとうございます!!
私自身、知らない方へのコメントはハードルが高いし、いいなあと思っても気持ちを伝えるのは勇気がいります。だから余計にぴんくさんのお気持ちが嬉しくて…!
何度もご訪問いただき、記事を読んでいただいたとのこと、本当にありがとうございました!感激しております。
往路最終区といえば5区、20話の神童のことですよね?
私がひっかかった批判と、ぴんくさんが気にかけておられる批判が同じかどうかはわからないのですが、何度か加筆修正して、現在アップしている20話の感想が今のところの私なりの見方となります…
→「風が強く吹いている」20話 感想。
https://blogs.yahoo.co.jp/kina_and_momo/35535316.html
もしよろしければ是非ご覧になって、ご意見いただければと思いますm(__)m
(続く)
[ 双葉 ]
2019/5/31(金) 午後 9:27
>ぴんくさんへ。続きです。
また、もしこちらに来られたのがTwitter経由でしたらすでにご存じとは思うのですが、一応Twitter(@kina_and_momo)もしています。超がつく初心者です。ええ、風つよ記事を追いたい一心ではじめました…💦
もしそちらの方がリアクションしやすいようでしたら、そちらからでも!
風つよについてのぴんくさんの感想も、よければぜひお聞きしたいです!
本放送が終わって2ヶ月近く経つのに、なぜこんなに言いたいことが後から後から湧いてくるのか…風が強く吹いているって、本当に不思議な力を持った作品ですね…。
※投稿した返信を見たら、うまく記事へのリンクが貼れてないですね💦
ごめんなさい!!見られるかしら…
[ 双葉 ]
2019/5/31(金) 午後 9:31