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1・はじめに
   大都市圏に比べて、山陰など人口の少ない地方での選挙における一票の価値が高いことが、問題視されており、従来から多くの訴訟が起こされ、違憲や違憲状態などの判決も出されています。しかし、一票の格差は本当に憲法違反なのでしょうか?

   結論からいうと、実は一票の格差は憲法違反ではないと考えられるのです。一票の格差が発生するのにはもっともな理由があり、裁判所はその発生原因についてじゅうぶんな検討を行わずに判決を出しています。

   一票の格差は、日本の社会に存在するある不文法(慣習法)が原因で生じており、日本でこの問題がなかなか解決しないのには理由があります。そしてこの不文法は、われわれの社会を円滑に機能させるために、重要な役割を担っていると考えられます。そこで本稿では、一票の格差が発生する原因と、なぜ一票の格差を人為的に縮小させるべきでないのかについて説明したいと思います。

2・なぜ一票の格差が生じるのか?
   むかしから中国地方など人口の少ない地方からは、総理大臣など有力者が多数出ていることが知られています。そして、人口の少ない地方に有力者が多いため、彼らが反対するから、一票の格差を縮小させる運動が妨げられているということが、従来から指摘されています。しかし、実はその有力者たちは、われわれの社会に存在するある不文法に従って反対をしています。

   たとえば、大学生が会社などに就職するとき、過去に有力者を多数輩出した名門大学は、多くの卒業生を重要な職に就職させることができ、そのことを社会は容認しています。芸能人の七光りも同じ現象で、有名な芸能人の子弟は、それに適した性質を親から受けついでいることがよくあるので、子弟を重要なポストにつけても社会はそれを容認しています。

   つまり、われわれの社会には、「過去に多数の有力者を輩出したグループからは、後輩たちを重要なポストにおおぜい就職させるべきである」という不文法が存在します(目黒, 2013;Meguro, 2014)。

   この不文法は、一見すると不平等に見えるかもしれませんが、われわれの社会を円滑に機能させるのに大変重要な役目を果たしており、もちろん憲法の法の下の平等に違反しているわけではありません。

   そしてこの不文法は、選挙においても機能しています。日本の人口の少ない地方は、むかしから総理大臣など有力者を多く輩出しており、そのような「人材輩出の実績がある地方からは、人口が少なくても多くの国会議員を誕生させるべきである」という不文法がわれわれの社会には存在し、機能しています。つまり、

Ⅰ.日本では人材輩出の分布に偏りがあり、人口の少ない地方に有力者が多いこと、
Ⅱ.「多数の有力者を輩出した集団は、後輩たちを重要なポストにおおぜい就職させ
      るべきである」という不文法が、日本の社会に存在すること、

   この二つが組み合わさったことが原因で、日本で一票の格差問題が生じているのです。一票の格差の原因としては、「一人別枠方式」があげられることがよくありますが、ⅠとⅡが大本の原因であり、「一人別枠方式」は、そこから派生してできたものであることがわかると思います。

3・各地方が輩出した有力者の人数は、国会議員の議席数に影響を及ぼしている
   過去に輩出された有力者の人数が、国会議員の議席数に及ぼす影響を調べるため、各地方の総理大臣の輩出率[人口100万人当たり]と、参議院議員の議席数をもとにした一票の価値[人口100万人当たり]とを比較してみます。

   表1に各地方出身の総理大臣数を、表2に参議院議員の議席数を示し、それらの人数をもとにして、総理大臣輩出率(=総理大臣数÷各地方の人口)と、一票の価値(=参議院議員の議席数÷各地方の人口)を計算して表3に示しました。また、総理大臣1人あたりの議席数(=参議院議員の議席数÷総理大臣数)も表3に示しました。

イメージ 3
    (首相官邸のホームページより)

イメージ 4
   (参議院法制局のホームページより)

イメージ 2
(*人口は2010年の国勢調査より)

   表3から、中国、北陸、四国、九州の総理大臣輩出率が高く、それらの地方は、一票の価値も高いことがわかります。そして、関東、近畿、東海など人口が多い地方の総理大臣輩出率は低く、一票の価値も低いことがわかります。総理大臣輩出率と一票の価値の間の相関係数を計算すると、以下のようになります。

イメージ 5
イメージ 1
   総理大臣輩出率と一票の価値との間には、相関の傾向が見られ、この傾向は上記の「多数の有力者を輩出した集団は、後輩たちを重要なポストにおおぜい就職させるべきである」という不文法の作用によって生じていると考えられます。この相関から、一票の価値が高い地方から、偶然多くの有力者が輩出されていたのではなくて、各地方の有力者数に応じてその地方の議席数が増加していったことが考えられます。

   そして、表3の総理大臣あたりの議席数を見れば、都市部の議席数が多く、逆に中国、北陸、四国、九州など人口の少ない地方は、国政での貢献度が高いわりに議席数が少ないことがわかります。つまり、もし総理大臣数を貢献度の基準にすれば、これら人口の少ない地方の議席数は、減らすべきではなくむしろ、増やす方がつじつまが合っているという考えかたもできます。

4・一票の格差問題においては、選挙区より広い地域同士を比較するのが好ましい
 本稿では各地方の国政における貢献度を考えに入れることで、一票の格差問題を考察しましたが、国会議員が活動する際には、同じ県や近隣の県から選出された議員同士で互いに協力し合うことがあります。

 つまり、有力者の影響は選挙区の外に及ぶため、この問題を選挙区のような狭い範囲同士で比較するとわかりにくくなり、適切でないと考えられます。そこで、本稿では一票の価値を関東地方や中国地方のような、より広い地域同士の比較によって考察しました。

5・一票の格差は、われわれの社会が有力者を育成する機能の現われ
   有力な人材が常に輩出され続けるかどうかは、われわれの社会にとって切実な問題です。

   名門大学であれ、多くの有力議員を輩出した集団であれ、過去に有力者を多数出したことのある集団は、すぐれた人材を育成するための術を知っています。そんな実績のある集団から、優先的に多くのメンバーを重要なポストに就職させることは、一見すると不平等に見えますが、長い目で見れば社会に利益をもたらすことを、われわれは本能的に知っています。

 本能的に知っているから、上記の不文法が、われわれの社会に存在するのだと考えられます。一票の格差は、人材を育成し登用することによって、社会が自己を強化する機能のあらわれといえます。

6・おわりに
   日本の各地方には、それぞれ独自の風土が存在し、産業、交通などの立地条件や、地名(Meguro, 2011)など、場所が変われば土地柄も変わります。日本では有力者輩出の分布にも偏りが存在し、人口の少ない地方から多くの有力者が生まれています。

 将来、大都市圏から多くの有力者が輩出されるようになれば、都市部の発言力が強まり、議席数を容易に増減させられるようになるため、大きな困難をともなうこともなく、一票の格差は自然に縮小していくはずです。

   しかし、もし現時点で上記の不文法に逆らって、大都市圏の議席増と人口の少ない地方の議席減の方向に、制度を人為的に改変していったなら、有力者の輩出を妨げ、国政における機能低下をまねくおそれがあります。上記の不文法によって生じている一票の格差は、憲法には違反しておらず、われわれの社会が円滑に機能するため、重要な役割を果たしていると考えられます。

参考文献
Meguro, Kazuhide. (2011). "Gorgeously Named Cities Flourish and Poorly
Named Ones Decline". Journal of Linguistic and Cultural Studies, 36, 97-127.
Osaka: The Japan Association of Language and Culture (JALC).

目黒一英. (2013). "各地方の“政治的貢献度”が一票の格差に及ぼす影響について".
Journal of Linguistic and Cultural Studies, 41, 277-279. Osaka: The Japan
Association of Language and Culture (JALC).

Meguro, Kazuhide. (2014). "On the Reason Why the Disparity in the Value of a Vote Occurs". Journal of Linguistic and Cultural Studies, 43, 197-201.
Osaka: The Japan Association of Language and Culture (JALC).

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    はじめまして♪
    ブログは最近始めたので、色々見せて頂きました♪
    教えて頂きたいのですが、参考にしているサイトとかあるんでしょうか?
    宜しければお互いにブロ友になれたら嬉しいです♪ 削除

    [ ゆうこ ]

    2015/5/1(金) 午前 8:07

    返信する
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    はじめまして。
    コメントを下さってどうもありがとうございます。
    とくに参考にしているサイトや本などがあるわけではありません。
    一票の格差問題と有力者の分布とをむすびつけて
    研究している人は、あまりいないのではないかと思われます。

    この研究とはべつに、“人口が増加しやすい都市名”
    についての研究も行っていますが、これも研究している人は
    あまりいないのではないかと思われます。
    よろしくお願いいたします。

    [ kin**hsenn*n ]

    2015/5/3(日) 午後 4:03

    返信する
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    ブログクルーズ中です♪
    ブログは最近始めたので、色々見せて頂きました♪
    私とはタイプが違う書き方なので参考にさせて下さい(*^_^*)
    私のブログの「ここはイイね!」とか「これはダメ!」とか聞かせて下さい♪ 削除

    [ ゆうこ ]

    2015/5/7(木) 午後 7:46

    返信する
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    一票の格差なんて問題視するのが間違いでしょう。
    「モノの価値」とは、希少性によって具現するもの。
    モノが集まり過ぎたら、個々の価値は低下するのは必然。
    世界にある当然の摂理でしかないことを認識できないで、
    議席数の調整に人口を持ちだして調整することが誤り。

    [ bor*oi* ]

    2015/7/1(水) 午後 10:44

    返信する
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    やっぱりこのブログはお気に入りみたいです♪
    前も読ませて頂いたんですがやはりイイですね♪
    ブログはいつ書くとか決めて書いてますか?それともフィーリング?
    娘達と一緒にブログに遊びに来て頂けるのをお待ちして居ますネ(^^ゞ 削除

    [ ゆうこ ]

    2015/11/4(水) 午後 0:04

    返信する

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