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マツノザイセンチュウの発見(参考『森と人間の文化史』只木良也氏著)
マツノザイセンチュウの発見いまだ松枯れの原因が判らぬ昭和43年初秋、被害木からの病原菌検出を続けていた農林省林業試験場九州支場の徳重陽山博士は、なにげなく眺めた病原菌培養のシャーレの中に、なにやらうごめく小動物を見つけた。マツノザイセンチュウの発見である。この線虫は、どの被害木からも検出され、また線虫を培養して注入したマツは、確実に松枯れの症状を呈することがその後の調査で明らかになった。松食い虫とは、その幼虫がマツの樹皮下を食害する甲虫の総称で、かつてはその食害のためにマツが枯れると考えられていた。しかしそれだけでは説明のつかないことが多すぎ、総合的な研究が行われていたのであったが、この線虫の発見以来、研究は急転回を見せ、驚くべき松枯れのメカニズムが明らかになったのである。
マツノザイセンチュウは体長1ミリくらいの線虫で、マツの樹体の中の樹脂道で大繁殖し、樹液の流動を止め、マツを衰弱枯死させる。枯れたマツにマツノマダラカミキリという甲虫が卵を生み、艀化した幼虫は樹皮下で冬越しして、翌年の晩春に成虫となってマツから飛び出すが、この時身体に線虫が沢山ついている。飛び出したカミキリは健全なマツの今年伸びた新梢を噛る(後食)が、噛られた傷口から線虫が侵入し、健全なマツの樹脂道で大繁殖して、マツを枯らしてしまう。したがって、それまで健全で青々としていたマツの葉が、夏から秋にかけて急に真っ赤に枯れるのがその特徴であるが、それはとくに温暖な地方で著しく、被害が寒冷地に及ぶにつれて、年を越して枯れる例も増えている。
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