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◆預金を差し押さえるには支店名を特定しなければならないのが通常
◆今後、一部の金融機関について支店名を特定しない差押えが認められる可能性 債権回収、保全のため債務者の預金の差押えを裁判所に申し立てる場合、法律 上、どの預金を差し押さえるのか特定しなければなりません。 これまで、差し押さえる預金を特定するためには、預金を管理している支店名 を明示する必要があるとされてきました。口座番号までは分からなくても支店 名を明らかにして裁判所に申し立てなければ、裁判所は預金の差押えを認めな いとされてきたのです。 しかし最近、支店名を特定しなくても預金の差押えが認められるかどうかが争 われた2つの事件が、東京高等裁判所の異なる裁判官によって審理され、異な る判断がなされました。 ひとつは三菱東京UFJ銀行、三井住友銀行、みずほ銀行にある預金の差押え が問題となったケースで、支店を特定しない預金の差押えが認められました( 平成23年3月30日東京高裁第12民事部決定)。 もうひとつは、みずほ銀行にある預金の差押えが問題とされたケースで、差押 えが認められませんでした(平成23年3月31日東京高裁第21民事部決定)。 通常、預金は支店ごとに管理されていますが、各金融機関には、顧客ごとに預 金がどの支店にいくらあるか検索するコンピュータシステムがあります。 差押えを認めるかどうかについて判断が分かれたのは、コンピュータシステム があることを前提に、金融機関にどの程度の負担がかかるかについて評価が異 なったためです。 差押えを認めた裁判官は、三菱東京UFJ銀行、三井住友銀行、みずほ銀行に は顧客ごとに預金がどの支店にいくらあるか検索するコンピュータシステムが ある以上、さほどの負担がかからないと考えています。 これに対し、差押えを認めなかった裁判官は、コンピュータシステムがあって もなお、金融機関がどの支店にいくらの預金があるか検索するのには、それな りの時間や手間といった負担がかかると考えています。 裁判官が差押えを認めるかどうか判断するにあたり、金融機関にかかる負担の 程度が考慮されたのは、法律上、差し押さえる預金を特定しなければならない ことと関わっています。 差し押さえる預金を特定することの目的は、差し押さえられた預金がどれなの か、金融機関が分かるようにすることにあります。 差し押さえられた預金を探すのに金融機関に多大な負担がかかるようでは、ど の預金が差し押さえられたか分かるようにするという目的が達成されたとはい えません。 そこで、差し押さえる預金が特定しているといえるかどうか判断するにあたり、 金融機関にかかる負担の程度が考慮されているのです。 金融機関内に顧客ごとに預金がどの支店にいくらあるか検索するコンピュータ システムがあることは分かっています。 しかしコンピュータシステムにどのような情報を入力すれば顧客ごとの情報が 検索できるのか、検索にかかる時間はどのくらいか、システムを扱うことので きる部署は限られているのか、といったことは各金融機関によって異なります。 各金融機関はこれらの内容を積極的には公表していません。機密情報だと考え て公表していないのかもしれません。 各金融機関の状況がはっきりしないことから、裁判官は、過去に全銀協が11 の金融機関を対象に行った、コンピュータシステムの整備状況や預金の検索に かかる時間等についてのアンケート結果を参照し、金融機関に対する負担の程 度を推測しています。 推測した内容が裁判官ごとに異なったため、さきほど紹介した2つの事件のど ちらにもみずほ銀行が含まれていたにもかかわらず、差押えを認めるかどうか について判断が分かれたのです。 今後、コンピュータシステムの整備状況や検索にかかる時間等がはっきりすれ ば、裁判官の判断は統一化されていくことでしょう。 |
債権回収
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支店名を特定しない預金の差押え
◆預金を差し押さえるには支店名を特定しなければならないのが通常
◆今後、一部の金融機関について支店名を特定しない差押えが認められる可能性 債権回収、保全のため債務者の預金の差押えを裁判所に申し立てる場合、法律 上、どの預金を差し押さえるのか特定しなければなりません。 これまで、差し押さえる預金を特定するためには、預金を管理している支店名 を明示する必要があるとされてきました。口座番号までは分からなくても支店 名を明らかにして裁判所に申し立てなければ、裁判所は預金の差押えを認めな いとされてきたのです。 しかし最近、支店名を特定しなくても預金の差押えが認められるかどうかが争 われた2つの事件が、東京高等裁判所の異なる裁判官によって審理され、異な る判断がなされました。 ひとつは三菱東京UFJ銀行、三井住友銀行、みずほ銀行にある預金の差押え が問題となったケースで、支店を特定しない預金の差押えが認められました( 平成23年3月30日東京高裁第12民事部決定)。 もうひとつは、みずほ銀行にある預金の差押えが問題とされたケースで、差押 えが認められませんでした(平成23年3月31日東京高裁第21民事部決定)。 通常、預金は支店ごとに管理されていますが、各金融機関には、顧客ごとに預 金がどの支店にいくらあるか検索するコンピュータシステムがあります。 差押えを認めるかどうかについて判断が分かれたのは、コンピュータシステム があることを前提に、金融機関にどの程度の負担がかかるかについて評価が異 なったためです。 差押えを認めた裁判官は、三菱東京UFJ銀行、三井住友銀行、みずほ銀行に は顧客ごとに預金がどの支店にいくらあるか検索するコンピュータシステムが ある以上、さほどの負担がかからないと考えています。 これに対し、差押えを認めなかった裁判官は、コンピュータシステムがあって もなお、金融機関がどの支店にいくらの預金があるか検索するのには、それな りの時間や手間といった負担がかかると考えています。 裁判官が差押えを認めるかどうか判断するにあたり、金融機関にかかる負担の 程度が考慮されたのは、法律上、差し押さえる預金を特定しなければならない ことと関わっています。 差し押さえる預金を特定することの目的は、差し押さえられた預金がどれなの か、金融機関が分かるようにすることにあります。 差し押さえられた預金を探すのに金融機関に多大な負担がかかるようでは、ど の預金が差し押さえられたか分かるようにするという目的が達成されたとはい えません。 そこで、差し押さえる預金が特定しているといえるかどうか判断するにあたり、 金融機関にかかる負担の程度が考慮されているのです。 金融機関内に顧客ごとに預金がどの支店にいくらあるか検索するコンピュータ システムがあることは分かっています。 しかしコンピュータシステムにどのような情報を入力すれば顧客ごとの情報が 検索できるのか、検索にかかる時間はどのくらいか、システムを扱うことので きる部署は限られているのか、といったことは各金融機関によって異なります。 各金融機関はこれらの内容を積極的には公表していません。機密情報だと考え て公表していないのかもしれません。 各金融機関の状況がはっきりしないことから、裁判官は、過去に全銀協が11 の金融機関を対象に行った、コンピュータシステムの整備状況や預金の検索に かかる時間等についてのアンケート結果を参照し、金融機関に対する負担の程 度を推測しています。 推測した内容が裁判官ごとに異なったため、さきほど紹介した2つの事件のど ちらにもみずほ銀行が含まれていたにもかかわらず、差押えを認めるかどうか について判断が分かれたのです。 今後、コンピュータシステムの整備状況や検索にかかる時間等がはっきりすれ ば、裁判官の判断は統一化されていくことでしょう。 |
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<ポイント>
◆長期の家賃未払いに対して連帯保証人の責任が限定される場合がある ◆家主は家賃未払いについて早期に連帯保証人に知らせる必要がある 賃貸物件を借りる際、多くのケースでは連帯保証人をつけるよう家主から求め られます。 連帯保証人になると、滞納賃料や原状回復費用について負担するよう家主から 請求されることがありえます。 しかし、例えば、賃借人が5年間賃料を支払わず、この間、家主もそのことを 連帯保証人に知らせないまま放置し、その後突然、家主が多額の未払賃料を請 求してきたという場合、請求を受けた連帯保証人は未払賃料をすべて支払わな ければならないのでしょうか。 結論としては、連帯保証人は、責任が一定期間分に限定されるか、場合によっ てはまったく責任を負わなくてよい場合がありえます。 なぜなら、賃料を払わない賃借人に責任があるのは当然のことながら、賃料の 長期間不払いを放置した家主にも責任が認められるからです。 家主が賃料の不払いを放置している間、連帯保証人がそれにまったく気づかず、 突然、家主が全額を保証人に請求できるとすれば、いわば家主の怠慢のツケを 連帯保証人に押し付ける形になり不公平な場合があるでしょう。 連帯保証人はある程度の家賃不払いや原状回復費用の負担の発生などは予想し ているでしょう。しかし、あまりに長期の家賃不払いが生じてしまっていると、 連帯保証人にとっては予想外の負担となる場合があります。 このような長期の賃料不払いと連帯保証人の責任の範囲の問題に関し、最高裁 は、「賃借人が継続的に賃料の支払いを怠っているにもかかわらず、賃貸人が、 保証人にその旨を連絡することもなく、いたずらに契約を更新しているなどの 場合に、保証債務の履行を請求することが信義則に反するとして否定されるこ とがあり得る」と判示しています(平成9年11月13日)。信義則は、信義、 公平と置き換えることができます。 この最高裁判決を受けて、各地の裁判所はケースバイケースで連帯保証人の責 任の範囲を判断しています。 家賃の滞納期間5年間の事例では、連帯保証人の責任が賃料約4年分に制限さ れた事例があります(東京地裁平成6年6月21日)。 そのほかにも、例えば10年間家賃の滞納があった事例で、この間滞納の事実 を家主が連帯保証人にまったく知らせていなかったことから、家主の連帯保証 人に対する訴訟提起自体が権利の濫用として許されないとした裁判例もありま す(広島地裁平成20年2月21日)。 一概に滞納期間だけの問題ともいえませんが、家主としては、せめて数ヶ月程 度の賃料不払い、あるいは敷金を超える賃料の不払いがあれば連帯保証人にそ の事実を知らせておく必要があるように思います。 連帯保証人としても、その程度の不払いの状態で事実を知ることができれば、 賃借人を退去させるなどの対応を取って損害の拡大を防ぐことができます。 |
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貸付先の信用状態が悪化した状況下での担保の設定は、後日、債権者取消権または否認権の行使を受けるおそれがあります。 まず、債権者取消権(詐害行為取消権、民法424条)とは、債務者が倒産の危機に陥ったときに、債権者を害する目的で行う悪意の財産減少行為をいい、この詐害行為を取り消すよう裁判所に請求することで、債務者の責任財産の保全を図ることが認められています。 詐害行為取消権が認められるための要件は、(1)債務者が債権者を害する法律行為を行ったこと(客観的要件)、(2)債務者、受益者(詐害行為によって利益を受けた者)または転得者(受益者よりさらに利益を転得した者)が詐害の事実を知っていること(主観的要件)が必要です。詐害行為取消権の目的は、債務者の責任財産の保全にあるため、これを行使できるのは、債務者の総財産が減少し、総債権額に満たない場合に限られます。 次に、債務者が、破産手続、民事再生手続、会社更生手続の開始決定を受けた場合には、否認権を行使されるおそれがあります。その性質は債権者取消権と類似しますが、適用範囲はより広く定められています。破産手続の場合、破産債権者を害する行為の否認(破産法160、相当の対価を得た財産処分行為の否認(同法161条)、特定の債権者に対する担保の供与等の否認(同法162条)があり、民事再生手続や会社更生手続においても同様です。 既存の貸出のために担保権を設定する場合について、判例は、一部の債権者のために担保権を設定することは、結果として他の債権者の共同担保を減少させるため詐害行為に該当するとしています。 なお、事業資金、子女教育費などの有用の資を得るための担保提供は、借入額と担保設定価格の間に合理的均衡が認められるなど害意がない場合には詐害行為に該当しないとされており、救済融資のために担保を設定する場合にも、借入目的が妥当であり、担保に合理的均衡があれば否認の対象とはならないとされています。 したがって、貸付先の信用状態が悪化した状況においては、詐害行為取消権または否認権の行使を受けるおそれがあることを覚悟した上で、担保設定をしなければならないことに注意が必要です。
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1 利益相反とは、当事者間において、利益が相反する内容になっている状態のことをいい、そのような場合は、それぞれの利益を守るため、一方が他方を代理したり、一人が双方を代理することは禁止されています。 2 法人の場合で、利益相反にあたるような具体的場合としては、取締役個人の債務のために、その取締役が法人を代表して法人の財産に担保権を設定する場合や、甲・乙双方の法人を代表する取締役が、甲法人の債務を担保するために、乙法人を代表してその法人の財産に担保権を設定する場合などが挙げられます。 3 このような利益相反行為に該当する場合には、取締役会の事前の承認を得る必要があります(会社法356条)。事後の追認では、認められませんので、注意が必要です。
また、実務上は、利益相反行為に該当するか否かについての判断が難しい場合が多いので、疑わし場合には、取締役会の事前の承認を得るようにするのが得策でしょう。 |




