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◆ 公営住宅の暴力団排除条項にかかる初の最高裁判断
◆ 暴力団員であることを理由として明渡しを請求できることは法の下の平等、 居住の自由の規定に違反しない 2015年3月27日、最高裁は、西宮市が暴力団員の入居者に対して建物の 明渡しを求めることができるとの同市条例の規定は合憲であるとの判断を示し ました。従来から、暴力団員という身分を有する者についてのみ契約締結を拒 否したり、契約を解約できるとすることは憲法上の問題があるのではないかと いう議論がありました。本判決は、地方公共団体という公権力が暴力団員に対 して不利益を課すものとして、憲法違反性が正面から争われた事案であり、公 営住宅の暴力団排除条項に関する初の最高裁判例とのことです。 (なお、民間対民間の問題としては、2013年7月15日号において、暴力 団であることを理由に金融機関が口座の開設を拒否できる規定を有効と判断と した大阪高裁の判断を紹介しています。) 西宮市営住宅条例は、入居者が暴力団員であることが判明した場合には市営住 宅の明渡しを請求できるとの規定を設けています。暴力団員である上告人は、 同規定は、合理的な理由のないまま暴力団員を不利に扱うものであるから、法 の下の平等を定める憲法第14条1項に違反し、かつ、居住の自由を定める第 22条1項にも違反すると主張しました。 これに対して、最高裁は、次のように理由を述べて、条例の規定は憲法に違反 しないと判断しました。 ・地方公共団体は、住宅が国民の健康で文化的な生活にとって不可欠な基盤で あることから、住宅の確保に特に配慮を要する者の居住の安定の確保が図られ ることを旨として、住宅の供給等に関する施策を策定し、実施する。そこで、 当該住宅に入居させ又は入居を継続させる者をどのようなものとするのかにつ いては、その性質上、地方公共団体に裁量がある。 ・暴力団員が市営住宅に入居し続ける場合、他の入居者の生活の平穏が害され るおそれがある。 ・暴力団員は、自らの意思により暴力団を脱退し、暴力団員でなくなることが 可能(前述の大阪高裁判断でも同様の指摘あり)。 ・暴力団員が市営住宅の明渡しをせざるを得ないとしても、それは当該市営住 宅に居住することができなくなるというにすぎず、当該市営住宅以外における 居住についてまで制限を受けるわけではない。 この最高裁の憲法判断により、民間同士の契約における暴力団排除条項の有効 性(一当事者の事業の公共性を理由に、憲法に違反する契約内容は公序良俗に 反し無効であるとの主張がしばしばされていた)もより確固たるものになった と思われます。 |
経済ニュース
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<ポイント>
◆民法改正により法定利率は3%に ◆変動制だが頻繁な変動が起きる可能性は低い ◆紛争が長期化しても遅延損害金は現行ほど増えなくなる ◆将来に渡る損害の賠償額はかなり増える 2015年2月24日、法制審議会は法務大臣に対して民法改正案を答申しま した。この案が同年の通常国会に提出されることになるようです。貸金の利息 などにつき当事者間に合意がない場合に適用される改正後の法定利率は3%と なっています。現行の5%はあまりに市場金利の状況とかい離しているという ことでこの度見直しがされることになったものです。これに伴い商法に規定の ある商事法定利率6%は撤廃となります。 この利率は変動制であり3年に一度、見直されます。市場金利を反映させる趣 旨から、見直しは日銀の公表する民間金融機関の貸出約定平均金利を基に行わ れます。現行利率の基準時とその後の変動後の基準時からみた過去5年間の平 均金利を比較し1%以上の差があった場合に1%未満の差を切り捨てて反映す るというものですから、同金利がおおよそ1%から2%の間で10年以上も低 位安定している状況からすれば、3年毎に毎回変動が起きるというようなこと はないように思われます。 法務への影響ですが、例えば利率に関して特に約定のなかった貸金の返還請求 の利息や、不法行為に基づく損害賠償の遅延損害金が変わってきます。元金1 000万円を払ってもらえず訴訟になり、払ってもらえる時期から2年後に支 払ってもらうことになった場合、現行なら計10%、100万円を利息・遅延 損害金として請求できるのに対して、改正後は計6%、60万円を請求できる ということになります。 法定利率改正により最も影響が大きいものの一つとされるのが、交通事故や労 災で被害者に障害が残ったり、被害者が死亡した場合の将来にわたる損害の賠 償額です。具体的には将来にわたって失う収入の賠償や、将来必要になる治療 費等の実費の賠償などです。 現在の実務では、これらの損害に関しては将来、現実に損害が発生した都度、 少しずつ賠償をさせるのではなく、将来に渡る損害額を前倒し・一括払いで賠 償させる方法が主流となっています。 もっともこの場合、一括で受け取る方は受け取った賠償金を運用できるので得 をし、逆に一括で払う方は損をすると評価することができます。そこで、この 不公平を解消するため、法定利率を基に複利計算で将来にわたり運用した場合 に生じる利息を一括賠償額から差し引いていました。そこで例えば、将来20 年間にわたり毎年500万円、計1億円の損害が生じるとしてその賠償額を計 算すると、現行利率では約6230万円を賠償すべきという計算になります。 これが3%になれば約7440万円となります。 そこで、損害保険金の支払総額に大きな影響を与え保険料を引き上げると言わ れています。もっとも、逆に、既に生じてしまった損害の賠償に関する遅延損 害金は減るので、利率の改定は保険料を引き下げる要素も含んでいます。相対 的には前者の影響が大きいようです。 |
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◆音、動画、色などが商標登録の対象に追加された
◆商工会、商工会議所、NPO法人が地域団体商標の登録主体に 今年(2014年)4月、商標法が改正されました。今回はその主な改正内容 を紹介します。 主な改正内容は、(1)商標登録の対象の追加、(2)地域団体商標の登録主体の拡 充の2点です。 【音や色も商標登録可能に】 これまでの商標法では、商標登録の対象は、文字、図形、立体的形状などに限 定されており、音を商標登録することはできませんでした。また動きのある図 形なども出願方法が整備されていないことから、商標登録を受けつけてもらう ことができませんでした。 しかしデジタル技術の進歩に伴って、ブランドメッセージの発信手段として音 や動画を使用する企業は増加しており、音や動画なども商標法による保護の対 象としてほしいというニーズが高まっていました。また米国や欧州では、動画 も商標登録の対象となっていましたし、視覚で認識できるものに限らず音も商 標登録の対象となっていました(米国では匂いについても商標登録の対象とな っています)。 このような企業のニーズや国際的な動向を踏まえて、今回の改正では(1)音の商 標、(2)色彩のみの商標、(3)動き(動画)の商標、(4)ホログラムの商標、(5) 位置の商標を新たに商標登録の対象となりました。 まず音の商標について具体的にどのようなものが想定されるかというと、久光 製薬がテレビCMなどで使用する企業名とともに流れるメロディを欧州におい て商標登録しています。企業名や商品名とともにメロディが流れるサウンドロ ゴが音の商標の例といえます。またマイクロソフト社はWindowsの起動音を米国 で商標登録しています。製品の起動音も音の商標となり得ますので、ゲームや 電気自動車の起動音などが今後、日本で商標登録されることが予想されます。 色彩のみの商標の具体例としては、トンボ鉛筆が、消しゴムのパッケージに使 用している青、白、黒の3色カラーを欧州において商標登録しています。これ までの商標法においても、図形などに色彩を加えたものは商標登録の対象とな っていましたが、今回の改正により色彩のみを商標登録することも可能になり ました。 動き(動画)の商標の具体例としては、例えば、米国の大手映画会社が映画の 開始前に流れる動画を米国において商標登録しています。 ホログラムとは、見る角度や光の当たり具合などで見え方が変化する図形など のことです。主に偽造防止を目的として付けられるもので、例えば米国ではア メリカンエクスプレス社がクレジットカードに付されるホログラムを商標登録 しています。 位置の商標とは、図形などのマークとその付される位置によって構成される商 標のことです。例えば米国ではIBMパソコンのキーボードの中央にある赤い デバイスが位置の商標として商標登録されています。 この改正規定については2015年5月までに施行される予定です。企業とし ては、自社がCMに使用する音などについて商標登録すべきかどうか、今のう ちに検討しておく必要があるでしょう。 【商工会なども地域団体商標を出願可能に】 2006年4月に地域団体登録商標制度が導入され、地域名と商品(サービス) の名称との組み合わせなどからなる商標(地域団体商標)について商標登録す ることが一定の条件を満たせば可能となりました。例えば実際に登録されてい る地域団体商標としては、博多人形商工業協同組合が登録する「博多人形」や、 兵庫県食肉事業協同組合連合会が登録する「神戸牛」などがあります。 これまでの商標法では地域団体登録商標を登録できるのは、事業協同組合や農 業協同組合などに限られていましたが、近年、商工会、商工会議所、NPO法 人が地域ブランド普及の担い手となることも少なくありませんでした。例えば、 群馬県伊勢崎市の「いせざきもんじゃ」は伊勢崎商工会議所が、香川県小豆島 の「小豆島オリーブオイル」はNPO法人小豆島オリーブ協会が普及に努めて います。 そこで今回の改正で、商工会、商工会議所、NPO法人も地域団体商標の商標 登録の主体に追加されることになりました。 この改正規定についてはすでに8月に施行されており、地域ブランドのさらな る発展が期待されます。 |
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<ポイント>
◆個人データの再委託先への監督は難しい ◆流通過程で「不正な取得」はなかったか ◆パーソナルデータ活用への懸念 ベネッセホールディングスは7月9日、「こどもちゃれんじ」、「進研ゼミ」 などを運営するベネッセコーポレーションの顧客情報760万件が外部に漏 えいしたことが確認されたと発表しました。 ベネッセの発表では、通信教育事業を営むIT事業者からのダイレクトメー ルがベネッセの顧客に届き始め、顧客からの問い合わせが急増したのが、発 覚の経緯だったとのことです。 その事業者、ジャストシステムは自らの発表で、名簿業者から約257万件 のデータを購入したものの、顧客情報がベネッセから漏えいした情報である と認識して使った事実はなく、ベネッセからの漏えい情報か否か確認する手 段もないが、そのデータの使用を中止するとしています。 報道によれば、情報の流出経路には、複数の名簿業者が介在しているとのこ とですが、各名簿業者も「ベネッセから流出した名簿とは知らなかった。」 と警察庁に説明している模様です。 そして、15日現在の報道では、ベネッセのデータベースの保守管理を受託 していたグループ企業からの再委託先のうち1社の派遣社員(システムエン ジニア)が、情報の持ち出しを認め、自ら名簿業者に売り込んだと話してい るとのことです。 個人情報保護法は、個人情報をコンピュータで検索可能に体系的に構成した もの等を「個人情報データベース等」、これを構成する各個人情報を「個人 データ」と定義し、本人の同意なく個人データを第三者に提供することを原 則禁止しています。「等」というのは、コンピュータによらずとも、紙媒体 での名簿なども含む趣旨です。 この定義が少し複雑ですが、個人情報保護法が流出など第三者提供を禁止し ているのは、ばらばらの個人情報ではなく、「個人情報データベース等」を 取り扱っている(5000件以上)事業者に対し、そのデータベース等の第 三者提供を禁止する、ということを意味します。ただ、データベース等まる ごとの流出でなく、一部(たとえ1個の個人情報でも)の流出であっても禁 止されるべきですから、条文上は、データベースの構成要素としての「個人 データ」の第三者提供を禁止しています。 ベネッセから流出した760万件もの顧客情報は、「個人情報データベース 等」の最たる例です。個人情報保護法は、プライバシーを中核とする個人情 報の保護を目的とはしていますが、かつてはそれほどまで保護を必要として いませんでした。権利意識の高まりという事情もありますが、むしろ、大量 のデータを瞬時に取得、コピーすることができ、かつ、インターネットを通 じるなどして、いくらでも流通してしまうという「高度情報通信社会の進展」 が背景です。技術革新により、個人情報が危険にさらされる度合いが大きく なったということです。 そのような危険を除去しつつ、個人情報の適正な活用を目指すのが、個人情 報保護法です。つまり、今回のベネッセの件のように、事業者に顧客情報( データベース)を活かさせつつ、その流出を起こさせないように作られたの が個人情報保護法ということになります。 しかし、個人情報保護法は、個人データの取り扱いを第三者に委託するとい うことなら、本人の同意は不要としています。 本人サイドから見て、自分の個人情報を渡した事業者が責任を持つ以上は、 その扱いが委託先に任されることも想定しうるということでしょう。 したがって、事業者には委託先に対する監督責任が課されています。委託先 との間で個人情報の取り扱いに関する契約書を結んだり、誓約書を徴求した りします。 しかし、文書を作っておけば、丸投げすればよい、というわけではありませ ん。委託先における実際の個人情報の取り扱い状況を「監督」しなければな りません。 とはいっても、現実問題、どのように監督するのか具体的には難しいケース が多いでしょう。 まして、本件のように、再委託がなされた場合、その再委託先までどのよう な監督を及ぼすか、特にIDを与えていたSEが悪意で流出したとなれば、 委託元からすれば、どこまでのことをすればいいか、非常に難しいといえま す。単に「アクセスの記録が残るから、ペナルティを恐れて漏えいはしない だろう」というだけでは足りない、悪意での漏えいを防ぐシステムが必要に なってきます。監視を強めるということなのか、技術的なシステム上の解決 策を講じるべきか。 本件に関する調査のため、弁護士を委員長とする第三者委員会が設置された とのことで、原因究明と併せ再発防止策について、どのようなレポートとな るか関心が集まります。 また、本件では、流通経路も問題です。 複数の名簿業者が介在していたとされています。個人情報の取得に関して個 人情報保護法は、事業者は「偽りその他不正の手段により取得してはならな い」(17条)と定めるのみです。 どの名簿事業者も、ベネッセの顧客情報だったとは知らなかったといってい るようです。 17条の解釈として、名簿業者などが典型例ですが、個人情報の本人から直 接でなく、既にある名簿等のデータベース等を取得するとき、それまでの段 階で特に不正取得が疑われることがなければ、取得源や取得経路を調査する 義務まではないとされているようです。 しかし、ベネッセからの持ち出し者から最初に受け取った(多額のお金を払 ったでしょうが)名簿業者は、データの数・価値からいって、その出所がど こなのか考え及びもしなかったのか、私は疑問に思います。 そのことは転々取得した名簿業者も同様ですし、さらには最終のエンドユー ザーであった会社も、「適法かつ適正に取得」された情報であることを条件 に名簿業者から入手した、というだけでよいのか、という疑問を持ちます。 例えば、名簿業者が大学OBあるいは団体の会員などから、名簿を譲り受け るといっても、その大学や団体から、第三者提供が禁止されているのは容易 にわかります。その名簿の保有者が事業者ではなく、個人だから、個人情報 保護法の適用はない、というのも形式論にすぎるように思います。 営業秘密の取得や使用を禁じている不正競争防止法は、不正に取得された営 業秘密であることを知って取得や使用をしてはならないと規定すると同時に、 「重大な過失により知らないで」取得や使用をしてはならないとも定めてい ます。 ベネッセの顧客情報を真実取得していた事業者らは「重過失」がなかったの かと疑問に思います。「重過失」のハードルが高いのかもしれませんが。 本件の問題が発覚する前、「パーソナルデータの利活用に関する制度改正大 綱」が6月9日政府によって発表されています。 いわゆるビッグデータ、なかでもパーソナルデータの活用の促進のため、「 個人が特定される可能性を低減した」データであれば、本人の同意がなくて も、第三者提供を可能とする措置を講じるとしています。 これまでも個人の特定ができないように加工したものは、個人情報ではない、 とされてきました。 「特定される可能性を低減する」というのは、可能性がゼロではないという 意味でしょうが、これまでの扱いを緩めるもののようです。 事例は違いますが、本件のような悪意が介在する場合、果たして、個人情報 やプライバシーが守られるのか。かなりの難問のように思われます。 |
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この春、下の娘を保育園に預け復職した。上の娘のときも下の娘のときも“保活”というものはとくにせず、幸運にも保育園が決まったのだが、役所に行くと保育課のブースから抱っこひもで子どもを連れた母親たちの悲痛な訴えが聞こえてくる。
ちょうど一年ほど前、横浜市の「待機児童数ゼロ(2013年4月1日時点)」というニュースが話題になった。横浜市は2010年に待機児童数が1500人を超え、全国ワースト1位を記録したが、それからわずか3年で急改善した。横浜方式としてマスコミで取り上げられ、それが呼び水となり子どもを預けて働く人、子育て世代の転入が増加。その結果、今年2月の試算で4月に認可保育所への入所を希望しながら入れない保留児童(※)が、前年同月比751人増の3,353人に達することが判明。その後、保育コンシェルジュなどを通して横浜保育室や保育ママを案内する、などの対応により4月1日時点の待機児童数を20人に抑えた。 横浜市だけでなく、待機児童を抱える自治体は毎年のように待機児童数を上回る保育所の増設、定員増をおこなっているが、待機児童数は毎年ほとんど減少していない。なぜなら、保育所増設の情報を知り、今まで保育所入所をあきらめていた家庭(潜在的待機児童)が入所申し込みをするものの、入所できずに潜在的待機児童から待機児童へと呼び名が変わり顕在化するためで、つまるところ待機児童問題はいたちごっこなのだ。 女性の年齢階級別労働力率は1991年と2011年との比較で見ると多くの階級で増加(厚生労働省「平成23年版働く女性の実情」)、また97年以降雇用者の「共働き」の世帯数が男性雇用者と無業の妻からなる「片働き」の世帯数を上回っている(内閣府「男女共同参画白書平成23年版」)。配偶者控除見直しも検討されるなか、今後女性の就業者数は増加が見込まれる。自治体は、潜在的待機児童数も含めて今後どのくらいの保育需要があるかを徹底的に調査・把握し、それを見据えた対策をとらない限り、今後も待機児童数がゼロになることはないであろう。 ※保留児童とは認可保育園に入所申込みをしたものの、定員超過等により入所できなかった児童のこと。保留児童のうち、無認可保育所や家庭保育室の利用、育児休業中を除いた児童のことを待機児童という。 |




