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まぁ、特に日本に限った話でもないんだろうが、政治とか経済の分野に関して、「政治学や経済学の本をいっぱい読んで来ただけの人物」が、エコノミストだの政治評論家だのという肩書きで専門家然としてモノを言い、それがマスメディアを通じて垂れ流されるという状況に付いては、正直「どうなんだろうなぁ・・・」と思う。
まぁ、そうした「専門家」達の「専門知識」とやらを軽視する気も侮蔑する心算も無いんだが、「政治学や経済学の理論に詳しい」という事と「政治や経済が分っている」というのは別の話な訳で・・・その辺り、もう少しこう、何とかならんものかと思う事は多い。
つい先日、某・・・政治評論家と名乗っているのかな・・・人物が、
「TPPに反対している人間は、比較優位すら理解できていない様な連中だ。」
という様な事を述べたらしい。まぁ、その某・・・池田信夫なんだけどね・・・辺りの言う事なんかに気を取られる必要は無いとは思うんだけど、それでも何というか・・・この手の連中というのは鬱陶しいなぁ、と。
「比較優位」というのは簡単に言うと、
「貿易をする事によって、域内全体の生産力の利用効率が最適化される」
という話だ。つまり・・・例えば、A国ではコメ生産に環境が適している為、100万円のコストで10トンのコメが作れます、と。隣のB国は、諸条件がコメの生産に向かず、10トンのコメを作るのに200万円のコストが掛かっています、と。その場合、B国がコメをA国から輸入する事にして、コメの生産に使っている生産力を自国で生産するのに適した他のものに振り向けた方が、「全体としての生産力」は向上しますよ、と。そういう話だ。
別に間違っちゃいないし、それ自体は非常に有用な理論なんだけどね。ただ・・・
B国はコメの生産を止め、B国の農家はA国に輸出する為のチューリップ栽培に転向しました。結果、B国はA国へのチューリップ輸出で豊かになり、更にはA国から輸入した安価なコメを食べられる様になって、ウハウハでした。
「比較優位」のモデルってのは、ここまでの話しかしないんだわ。
ある年、A国は大変な旱魃に見舞われました。A国でのコメの生産は半分以下に落ち込みました。
とてもB国に輸出する様な余裕はありません。
「こういう状況になった場合にどうするの?B国はどうしたら良いの?」という問いには答えない訳。
それが「比較優位」論の欠陥だとかいう話じゃないよ。「比較優位」ってのは、あくまで「貿易の経済的効用」を説明する為のモデル理論であって、それ以上でもそれ以下でもないんだから。
「自国民が飢餓に見舞われる可能性に対してどの様に対処、準備するか?」
というのは「安全保障」という政治上のテーマであって、そもそも経済理論がカバーする領域ではないのね。
さて・・・現状、TPP推進派とやらは、「平成の開国」などという空疎なスローガンを喧しく連呼している。90年代頃にも、コメの輸入自由化を巡って、「国際分業」などというスローガンを垂れ流す「有識者」がいたものだ。両者とも(と言うか、一緒なんだろうけど)に、「比較優位」論を根拠に「自由貿易」を無条件に礼賛するんだけど・・・
「輸入を自由化する事で日本の米農家が潰れるのであれば、それは日本の米作りが産業として脆弱だという事だ。国際競争の中で通用しない様な産業を補助金などを出して生き残らせるというのは、経済学的に見てナンセンス。自由化で潰れる様な産業ならば淘汰されれば良いし、されるべき。」
経済学を勉強して来ただけの連中の唱える「自由貿易カルト」ってのは、総じてこの様な物言いをするんだけどな。経済学的に言えば、食料でも何でも「全量を一番安い所から調達する」のが正しいのだろうが、政治、国政、国家運営という仕事がテーマとし、何よりも優先しなければならないのは「安全保障」であり、食料であれエネルギーであれ何であれ、「何があっても、どの様な状況になっても必要量を調達できる体制の構築」だ。
「貿易で金儲け」とか「どうしたらより効率的に儲けが出るか」といった話が「安全保障」に優先されるなんて事は、有ってはならないし、やってはいけない事なんだわ。
一部の「有識者」や「学識経験者」な人々には、「経済学の理論上の話」を振り回して「安全保障」の根幹部分を脅かす様な方向に日本を誘導するのは謹んで貰いたいと、切に思う。
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ブログ友のzombiepart6様から転載させて頂きました☆
関連記事として記事2つ自家転載しましたが、メインはこの記事です。
非常にわかりやすい記事です。およそグローバル化に邁進するかのような世界の動向を見るなら、おそらく日本のTPP協議参加というのは、例え政権党がどこであれ、不可避なのかも知れない。
だから、政府には慎重さが求められるのだと考えています。
経済理論を振りかざした具体性のないビジョンなどより、政治的解決の優先されるべき事案について、推進派はここにきても語ろうとしません。
根本的には安全保障があり、今の政権において最も苦手とするジャンルの政治的課題はTPP協議参加ひとつ取っても多岐多様に渡るはずですが。
政治的決断時期など日本国の安全保障と比較すれば全く問題にならないと思います。
いつもながらzombieさんの記事はスマートでとても勉強になります。今後ともよろしくお願い致します☆
2011/11/3(木) 午前 8:11
あのー、想定外と言う概念を持てば、TPPにのめり込むことは出来ないと思います。微妙に不合理な日本の制度にも良いとこが有りますから、貿易の自由化のみの議論は危険です。TPPは日本とアメリカの冷たい戦争になるかも知れません。安保も考え直す時期に来ています。憲法改正も視野に入れましょう。厳しいですが、自立精神を持つ時期がやって来ましたね。
[ 琵琶湖研究室 ]
2011/11/3(木) 午前 9:31
比較有意なんてリカードの古い理論なのに。
TPP はグローバル化に見せた米国中心の排他的経済圏づくり
[ gonta5656fuuten ]
2011/11/3(木) 午前 10:11
初めて、TPPについて頭がすっきり整理できた気がいたします。すばらしい記事・・。ありがとうございます。
[ ふくふきママ ]
2011/11/3(木) 午後 0:44
この説明は分かり易いです!
気象状況や貿易相手国との関係が将来に渡って安定しているといった前提条件が付かないと適用できない理論なんて、ナンセンスもいいところ。
2011/11/3(木) 午後 1:39
>琵琶湖さん
おはようございます^^
コメントありがとうございます。
日米の冷たい戦争と言いますか。現政権のTPP協議参加への戦略の無さや国民的理解のないままの断行後に訪れるのは、外交能力を考えても、米韓FTAに見られるような一方的不平等関係かと。
ルールを主張するどころか、現状では協議参加すら、アメリカ議会様のおうかがいを立てなければなりませんから。
日本としては本来、TPP協議参加と日米安保見直しはセットで国内議論の俎上に乗せるべきでしょうね。
2011/11/4(金) 午前 6:08
>gontaさん
おはようございます^^
コメントありがとうございます。
米国のビジョンが、TPP協議参加国ひいては環太平洋における安全保障を意図しているなら、日本にもメリットが生じます、が、そんな表明は今のところ無く、加えてオバマ政権は自国権益を守るためにジャイアニズムを展開中。そうとられても仕方ありませんね。
2011/11/4(金) 午前 6:10
>ふくふきママさん
おはようございます^^
コメントありがとうございます。
記事のお礼は転載元ブログにてお願い致します。
どうすっきりされたんでしょうか?記事内容に対する意見がないのでなんとも・・・。もう少し具体的に書かれた方がよいかと。
2011/11/4(金) 午前 6:14
>七海丸さん
おはようございます^^
コメントありがとうございます。
TPPに関しては、分かり易い記事が良いですね。
即使えないというか、特定の条件下で使えるって感じでしょう。経済モデル理論というものの宿命かも知れません
2011/11/4(金) 午前 6:16