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2017年10月31日(火)午前
(ここではインパルスの内部波動の延伸とフェイリュアを論じるが、論点の大半はフラットの内部C波の延伸及びフェイリュアにも当てはまる。また書庫『エリオット波動雑学』所載2013年5月11日付「第5波の延伸(extention)」を同時に参照願いたい。)
初めにR.N.エリオットの定義による延伸(extention)を要約する:
1. インパルスの内部の第1波、第3波、第5波(以下、駆動波 motive wavesと呼ぶ)のいずれかが、内部に新しいインパルスを形成して長大化すること。
2. このような延伸が2つ以上の駆動波で起こることは「まれ(rare)」である(後年、never つまり「延伸波動は一つだけ」と修正)」。
3. 延伸は通常(usually)、第5波で起こる。その結果、第5波はインパルスの、それまでのトレンドチャネルの上辺を大きく上抜け(下降波動なら下辺を下抜け)て新しいトレンドチャネルを形成する。
4. 波動の等級(degree)が上位になるほど、延伸が起こる可能性は高くなる。
5. 上抜け・下抜け(penetration, throw-over)は対数チャートで判定する。算術チャートでは、価格変動が高値では過大に、安値では過小に表れるため正しいトレンドチャネルは描けない。
さてフェイリュア(failure)の判定には、以上の延伸の理解が欠かせない。R.N.エリオットによるフェイリュアの定義は、3波動からなるトレンド形成波(1-2-3)と5波動からなる修正波(A-B-C-D-E)の組合せである。「いわばインパルスの第5波を後に続く修正波が盗んだ(stole)ような変態的な波形」がフェイリュアで、このような波形の発生確率はまれ(rare)である。(以上、The Wave Principle, Chapter V “Wave Characteristics”, 1938からの要約。)
『エリオット著作集 (The Major Works of R.N.Elliott, 1980)』をざっと読み返したが、かれがフェイリュアについて語るのは上記の引用箇所だけである。第3波を越えられなかった第5波(上記のB)の内部が5波動なのか、3波動なのか、についてはエリオットは沈黙している。(文脈から判断すると、3波動の可能性が高い。)したがって上述した「5波動からなる修正波」が完了する以前にフェイリュアの判定を下すことは難しい。
誤解をさけるため、R.N.エリオットが “Financial World Articles, Part IV, Bearish Indication?”, 1939で述べる”failure”についても言及しておく。(ここは念のための補足なので読み飛ばしてもらっても構わない。)
“Failure of the fifth wave of any degree to penetrate the channel line, accompanied by indications of a sustained decline, is a warning of weakness.” (要約: 第5波がチャネルの上辺を上抜けられず、下降したままなら、弱含み。) 自明であるが、これは第5波の終端が第3波の終端を越えないという意味でのフェイリュアではない。
次に、R.R.プレクターのフェイリュアの定義を見る。以下では “Elliott Wave Principle – Key to Market Behavior, 1978”の関連個所を要約した。
プレクターは、米国の株式市場では、インパルスの3つの駆動波のうち、もっとも一般的に(most commonly)延伸するのは第3波だという。 事実、Elliott Wave International (EWI – R.R.プレクターが運営する投資助言機関)のアナリストたちは常に第3波延伸を前提として波動計算する。(一方、プレクターは、商品市場では第5波の延伸が一般的だと主張する。) ちなみにプレクターは、R.N.エリオットのフェイリュアを引用しながら、フェイリュアよりもトランケーション(truncation)の呼称が好ましいと述べるので、以下ではプレクターの定義によるフェイリュアにはこの呼称を用いる。
“A truncation can usually be verified by noting that the presumed fifth wave contains the necessary five subwaves. A truncation often occurs following a particularly strong third wave. (大意: トランケーションは、第5波になるはずで未到に終わった波動の内部が5波動からなることが分かれば証明となる。またトランケーションは長大な第3波に続いて起こることが多い。)
プレクターは、トランケーションの出現頻度は「時折(sometimes)」とし、ルールの一環として扱っていて、その言及は上掲書の随所に及ぶ。しかし上記の引用のようなトランケーションの判定方法は、インパルス内部の3つの駆動波のうち、延伸波動は常に第3波であることを前提としない限り、使えない。EWIが2014年7月にシナリオを第5波延伸に修正するまでの4年間、ニューヨーク・ダウの大天井を誤報し続けた原因もここにある(2014年8月28日記事参照。第5波延伸を過小評価して、それ以後も誤報は続いている)。
小ブログ子の経験では、日経平均は、第3波に劣らない頻度で第5波が延伸する。したがって第3波の終端を第5波が越えなかった場合、第3波延伸というそれまでの波動計算の前提をまず疑うべき(つまり、それまでプレクター流で第3波の内部第1波と計算していたものが、実は第3波の終端で、第4波以降は延伸中の第5波あった可能性を探るべき)である。
それでなくても、リアルタイムの波動計算では、未到に終わったとする第5波の内部が、はたして3波動なのか5波動なのかの見極めが難しいことが少なくない。
ちなみにダイアゴナルの内部第5波の延伸は、インパルスの内部第5波の延伸とは原理が異なるが、長くなるので、稿をあらためる。
おぐり
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