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私は決して仕事人間ではない。
でも結果的にまっくんよりも仕事を優先したことは多々ある。
今週の金曜日にまっくんが通う小学校のイベントがある。
ただステージの上で歌を歌うだけのイベント。
私は大して重要な事ではない、と考えていた。
ところが今日不意にまっくんから手紙を渡された。
そこには「見にきてね」の文字。
普段、学校の授業の一環で行うような手紙やお知らせの類は大抵嫁さん向けのものだ。
今まではそうだった。
なのに今日、明らかに授業で書いたであろう手紙の宛名は「お父さん」。
まっくんは普段、父親である私を こうじ と呼び捨てにする。
まっくんが物心ついたころには、周りの人間が私のことをそう呼んでいたので呼び捨てにするのが至極当然なこととまっくんは考えたのだろう。
それは、我々にとっては自然な事だった反面、事情を知らない第三者から見れば不自然な事であっただろう。
とにかく、私にとってまっくんから改まって「お父さん」と呼ばれる事にはひどく非日常な印象があった。
まっくんは土日祭日に休みが取れない私の仕事を理解している、と私は勝手に思いこんでいた。
参観日や、土日祭日に行われるイベントに私が参加できないのを責めた事は一度もない。
そんなまっくんが私宛てに手紙を書いてきた。
学校のイベントを見に来て欲しいとの旨の。
私の仕事は休日が非常に不定期だ。
自分から この日に休みたい と言える空気でもない。
大抵、従業員の休みは上長がその日の機嫌と勢いで二、三日前に不意に決まる。
決算セールを控え、大勢の顧客を抱えた私に気紛れな休日が舞い込む気配はない。
ここのところ不機嫌な日々が続いている番頭に劇的な幸運が舞い込む気配は更にない。
でも私は決して仕事人間ではない。
まっくんのステージを見るために仮病を使うくらいワケないサ。
と、いうわけで金曜日の店頭には私の姿はない。
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