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僕が小学校2年の時、祖父が他界した。 94歳の大往生だった。 その日、いつものように学校に行って ホームルームが始まるまでの朝のひと時を 友達と昨日のテレビ番組の話をしたりして過ごしていた ホームルームの時間になって担任の先生が教室に入って 来たのだが、真っ先に僕の所に来ると開口一番、 「すぐにお家にお帰りなさい」と言われた。 理由も何も言われないままだったので、何のことかも さっぱり解らないまま、ともかく家路に就いた。 その日は僕の誕生日だった。 浅はかな考えしか浮かばない僕は、誕生日だからもしかすると 学校を休んでどこか遊びに連れて行ってくれるのだろうか? などと馬鹿げた妄想を抱きながら家路を急いだ。 家に帰り着くと、父が玄関先を懸命に掃除していた。 「帰ってきたか?」と言う父の顔を見た瞬間に、 流石の僕もすべてを悟った。 数ヶ月前から祖父が床に臥しており、高齢であったため、 いつ他界するか解らないと言う事は聞いていたからである。 ただ、前日も朝出かける時も、容態が悪くなるような素振りは 微塵もなかったため、思いもつかなかったのである。 その夜に通夜があり、翌日に葬儀が執り行われた。 その日を境に僕の誕生日は祖父の命日となった。 僕の誕生日にはいつも親戚が集まり、
ケーキにローソクではなく仏壇にお線香を立てた。 別に祖父を恨みもなにもしていないが、 バースデーケーキは小学校1年生を最後に僕の前から消え去った。 |

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