エッセイ

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誕生日

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僕が小学校2年の時、祖父が他界した。
94歳の大往生だった。
その日、いつものように学校に行って
ホームルームが始まるまでの朝のひと時を
友達と昨日のテレビ番組の話をしたりして過ごしていた
ホームルームの時間になって担任の先生が教室に入って
来たのだが、真っ先に僕の所に来ると開口一番、
「すぐにお家にお帰りなさい」と言われた。
理由も何も言われないままだったので、何のことかも
さっぱり解らないまま、ともかく家路に就いた。

その日は僕の誕生日だった。

浅はかな考えしか浮かばない僕は、誕生日だからもしかすると
学校を休んでどこか遊びに連れて行ってくれるのだろうか?
などと馬鹿げた妄想を抱きながら家路を急いだ。
家に帰り着くと、父が玄関先を懸命に掃除していた。
「帰ってきたか?」と言う父の顔を見た瞬間に、
流石の僕もすべてを悟った。
数ヶ月前から祖父が床に臥しており、高齢であったため、
いつ他界するか解らないと言う事は聞いていたからである。
ただ、前日も朝出かける時も、容態が悪くなるような素振りは
微塵もなかったため、思いもつかなかったのである。
その夜に通夜があり、翌日に葬儀が執り行われた。

その日を境に僕の誕生日は祖父の命日となった。

僕の誕生日にはいつも親戚が集まり、
ケーキにローソクではなく仏壇にお線香を立てた。
別に祖父を恨みもなにもしていないが、
バースデーケーキは小学校1年生を最後に僕の前から消え去った。

好きだった人

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僕が中学1年のとき、大好きな人がいた。
声をかけてきたのは彼女の方からだった。
廊下を歩いていると突然「ねえ、君1年」と呼び止められた。
細身のとても綺麗な彼女は1歳年上の2年生だった。
その頃の僕の身長は146cm程しかなく、彼女が何センチあったのかは定かではないが
僕よりも明らかに背の高い彼女の顔を、僕は見上げるように見つめた
それ以来、廊下ですれ違うたびに呼び止められたが、悪い気がするはずもなく、
本当はとても嬉しかったが、表情に出さないように努めた。
そんな日々が過ぎたある夏の日、彼女が一緒に夏祭りに行こうと誘ってきた。
年上の人たちに混じって行くのはちょっと不安だったが、あまり深く考えずに誘いを受けた。
私服で夏祭りに行くのは校則で禁止されていたので、制服を着て待ち合わせの場所に行くと、
すでに彼女はベンチに腰かけて待っていた。
いつもの制服なのになぜかとても大人びて見えた。
僕の顔を見るなり笑みを浮かべ「じゃあ行こうか」と言って彼女は立ち上がった
その瞬間、あ、二人で行くのだと、そのとき初めて気がついた。
え、じゃあ、これってデート。
そう思った瞬間から胸が高鳴り始め、突然の初デートに戸惑いながら彼女と二人歩き始めた。
「ねぇ、どうする? 何か食べようか」彼女は懸命に僕を気遣ってくれた。
たこ焼きを買って、金魚すくいをして・・・。
お金はすべて彼女が出してくれた。
頑張って僕がお金を出そうとすると、「私が誘ったんだからいいの」と言って、
僕がお金を出すのを彼女は拒み続けた。
次は何しようかと思案しながら縁日の出店が立ち並ぶ大通りを歩いていると、
彼女は不意に腕を組んできた。
それだけでも驚きだったのに、僕の肩に頭を持たれかけて甘えるように寄り添ってきた。
当然、心臓はもう爆発寸前だった。
意識が遠のいた状態でしばらくそうして歩いていたが、
数人の女性が僕たちを見ていることに気づいた。あ、あれはクラスメートの・・・。
我に返り少し冷静になってみると、お祭りなのだから、当然同級生だっているはずである。
学校の先生に出会わなかったのが奇跡のようなものだった。
急に恥ずかしくなり、僕は彼女の手を振りほどいた。
彼女はちょっとだけふくれっ面をして見せたが、すぐに笑顔になってまた腕を組んできた。
ただし今度は肩に頭を持たれかけることはしなかったが・・・・・。

彼女は今、しあわせになっているだろうか。

時折、彼女を思い出してはそう思う。

(夏祭りの翌日、クラスメートに詰め寄られたのは言うまでもない)

夜間航海

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航海図と遠くに見える灯台の灯りを頼りに
船は夜のしじまを潜り抜ける
月明かりに照らされた荒ぶる白い波が
前を立ち塞ぐ岩礁の在処を
教えてくれる
後ろを振り返ると
スクリューの白い軌跡が
キラキラと光る銀色の海に
静かに消えてゆく
陸に見えるぼんやりとした街の灯りに
よそ見をしながら
静寂な海に酔いしれる

夜釣り

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夜釣りに行くと
防波堤の突端には決まって外灯がある
薄暗い夜の闇の中で
外灯のわずかな光に照らし出された波が
キラキラとゆれるのが幻想的で
釣りに来たことも忘れ
ただぼんやりと見つめてしまう
気が付くといつの間にか
夜の闇から解き放たれた海が
空の隙間から差し込む眩い光で
海の色を染め始める
沖を通る船が
そのスポットライトを浴びながら
長い航海へと旅立ってゆく

幸せなひと時

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明け方の海岸で
ただじっと海を見ているのが
僕は好きだ
春先のまだ肌寒い朝
自販機でホットココアを買う
それを飲みながら防波堤の上に座り
ココアの甘さが口の中に広がるのを感じながら
「ふっー」っと、小さく息をつく
まるで時間が止まっているようにさえ感じる
ほんの少しだけど幸せを感じる時間
そんなひと時

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