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そして、遂に、あっという間に出発の時が来た
外の天気が気になる、テント出入口の紐を解いてそっと頂上のほうを見る。
「やったー、月光が雪面を白く照らし出している」。
昨夜パサンと話し「出発のとき天候が悪ければ退却」と決めていたのだ。
登山靴は何とかテントの中で履くことが出来るが、
アイゼンやハーネス(安全ベルト)を装着するにはどうしても
外で付けざるを得ない。
外は-30度、出発準備のシーンをビデオに収めようと
バッテリーをセットしスイッチを入れたが
3秒ほどでビデオが動かない「しまった」ビデオが凍りついたのだ。
バッテリーをいくつも取り替えても全く作動しない、
何てことだ。必死の思いで肌身につけて大切に暖めていたのに。
ベースキャンプから頂上までのルートを克明に撮影したビデオは無い。
この撮影に成功すれば世界で初の貴重な記録となり、
テレビ局に売り込めたのに、ちょっとしたたくらみは一瞬にしてパーとなった。
考えがあまかった。世界初のエベレストベースキャンプから
頂上までの全ルート撮影はあきらめよう!
気を取り直し登頂することに集中しよう。
テントの外、ヘッドランプの明かりに素手でアイゼンバンドを
締めるが自分の手なのに感覚がすぐに無くなる。
あまりの冷めたさにやっぱり手袋を着けて締めるがうまくいかないので
やっぱり又素手になってやるしかない。
月光の薄明かりの中ヘッドランプの明かりが見える。
すでに他のパーティーが先行している。
ちょうど0時に出発、2時間ほどで先行パーティーに追いつく、
ヘッドランプを照らしながら最初の関門第一ステップを越える。
10m程高さの岩場である、もうすでに頂上へと続く北東稜に入ったのだ、
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