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かつてエジプトの警察音楽隊がイスラエルに来たことなど覚えている国民は少ない 大したことではなかった
こんな言葉の字幕が流れた。一台の車が映し出され、ドアが閉まり出て行く。
そこには一列に並んだ8人のアレキサンドリア警察音楽団の姿があった。文化交流のために。
ここからはじまった映画は地味で、しずかで、快く、心に温かいものがいっぱいに広がった。
若い団員のカーレドが空港で聞いた行き先は一字違いの誤りで別の地に到着する。
そこは文化センターはおろか荒涼たる砂漠のような場所だった。
空腹を訴える団員の為に一軒のカフェで昼食を依頼する団長のトウフィーク 。
魅力的な女主人のディナは好意的に応対する。既にバスも無い。
ディナは自分の住まいと日がな一日カフェに入り浸っているイツィク、パピ、にも家を提供する様頼む。
イスラエルとエジプト。かつては激しく敵対していた隣国同士だ。宗教も習慣も全て異なる。
お互いにたどたどしい英語で話すぎこちなさも時間が経つうちに変わっていく。
流れる音楽が実に良い。エジプトの民族音楽も心地よい。異国情緒が郷愁を誘うのだ。
【何を見てもあなたを思い出す 心をこめてお話したいの でも耳に心地よい話にも 冷たいあなたに神の おめぐみを…】女性が歌うこの曲は劇中切々と流れ、エンドロールで再び流れるのだ。
ディナの家に泊ることになった団長は夜のデートを申し込まれ出かける。
彼女は幼い頃からエジプトのテレビ映画や音楽に親しんでいたという。少しずつ打ち解けていくトウフィーク。
最後に妻と子供を失った辛い話を打ち明けるのだが、ディナにもまた辛い過去がありそうだ。
若いカーレドはパピのデートに強引についていく。ボーリング場での彼は素晴らしい恋のキューピットだった。
このシーンは何度見てもクスッと笑いながら何故か感動してしまうのだ。
恋の経験の無いパピが彼女に冷たく接するのを見てカーレドは恋の手ほどきをするのだ。
三人が並んで椅子に掛けている。全てが連係プレーのように進んで行く。
泣いている彼女にハンカチを渡す。お酒を飲ます。膝に手をかける。その手をやさしく撫ぜる。
肩に手を置く。ここで全行程はお終い。最後はキッスでめでたし、めでたし。
彼女からの電話を待ちながら一晩中公衆電話の前で待つ男。
失業中で妻ともうまくいかない男の家庭事情。団員との交流はしずかに、しずかに進行する。
厳しいだけの団長の心の中にあった ”熱いもの”が吐露されるシーンが幾度となくあり切なくなる。
人と人『あたたかいもの』この作品にめぐり合えたことが嬉しい。喜びも大きい。
カンヌ映画祭で数部門受賞。『一目ぼれ賞』この作品のために作られたそうだ。
☆ DVDは娘からまわってくる。レンタルショップで目を皿のようにして選んでいる姿が見えるようだ。
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