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それでは前回のメンズ館の続きでございます。
少々長くなりますが、どうぞお付き合いください。
で、ほとんどの方がお気付きやと思いますが、
名前は「メンズ館」なんて言うてますが、
早い話が百貨店の紳士服フロアの集まりみたいなもんなんです。
ですから、何も身構える必要もないんですが、
妙な緊張感があるのはやはり、
この「メンズ館」という名前のせいなんでしょうか。
私が訪れたのは平日の仕事帰りでして、夜の七時頃。
メンズ館の1階の入り口前で、
オッサンはさっそく入店をためらうのでした。
なぜなら、
もしかしたら、入り口で入場者のチェックでもしてるんとちゃうやろか?
という不安がよぎったからです。
空港の搭乗前のチェックの様に、
ゲートみたいなのがあるんとちゃうやろか? と・・・。
そしてゲートをくぐった瞬間に、
「キ〜ン コ〜ン!」なんて警報が鳴るんとちゃうやろか?と・・・。
そして奥から警備員みたいな人が出てきて、
「お客様は『メンズ』と呼ぶにはちょっと・・・」なんて言われて、
入場を拒否されるんとちゃうやろか? と・・・。
そんな思いを胸に、オッサン、恐る恐る入店いたします。
しかし、そんなアホみたいな心配は全くの不要でして、
誰でも自由に入ることができるのでした。
しかぁ〜し、ここで油断をしてはいけません。
店内のどこからか監視されているかもしれないのです。
不安な気持ちが表情や態度に表れ、
オドオド、キョロキョロしていると、
「ん?挙動不審なヤツ発見!アイツをマークしろ!」
なんて事になったらエライこっちゃです。
ここは心を落ち着かせ、
いかにもメンズ館に入店するに相応しい顔を作って店内に入るわけです。
いやぁ〜・・・、それにしても店内は予想通りの高級感漂う雰囲気でございまして、
高そうなモンがギョーサン並んでおり、
そして多くの高級ブランドショップが軒を連ねています。
フロアはB1〜5Fまでありまして、
各フロアとも2箇所のエスカレータを結ぶようにして
フロア内を一周できる通路がフロア中央付近にあり、
その通路の外側と内側にたくさんのショップが並んでおります。
今日は特に何を買うという目的もないので、
取りあえずエスカレーターで5Fへ行きます。
で、今更ながらではございますが、
私正直、こういう高そうなお店では極度なキンチョーを覚える人間でして、
もうすでにこの段階で額がうっすらと汗ばんているわけです。
しかもこの日は、バレンタインデーの過ぎた平日でして、
客も非常に少なく、通路から見る限り、
各ショップの中にお客の姿を見つけることはできません。
買う目的もないオッサンにとって、これほどの悪い日はございません。
各ショップの店員さんは客もいないので、当然手持ち無沙汰にしてはります。
そこへ場違いなオッサンが1人通路を歩いてくるのです。
オッサン、注目の的です。
もしかしたら、入店した時に怪しいオッサンとしてマークされ、
「怪しいオッサン、5Fへ上がりました、どうぞ・・・」
「了解、怪しいオッサン、額に汗を浮かべてます・・・、どうぞ・・・」
なんて感じで各ショップに伝わっているのかもしれません。
で、これも予想通りなんですが、どのショップの店員さんも
自分とこのブランドの服を格好良く着こなして、
イケメンぶりをアピールしてはります。
でも中には、
こんな感じの店員さんもいてはりまして、なんでかホッとします。
そんな彼には、思わず
「あんたは、こっち側の人間やろ!無理をすんな!無理を!」と
言ってやりたくなります。
そして私が各ショップの前を通るたびに、
「ぃらっしゃいませぇぇぇ〜!」と、
あの独特のイントネーションでお声がかかるのです。
しかもどの店でも言われるのです。正直オッサンには耐えられません。
これならまだ、「シャッチョーさん、いい娘いるよっ!」なんて
怪しい呼び込みの声の方がオッサンの心は弾むのです。
とにかくその声から逃げるようにオッサンは足早に歩きます。
しかし逃げてばかりもいられません。
これはワナかもしれないのです。
この声から逃げるように先へ先へと行くと、しまいには、
額に汗を浮かべたオッサン達が右往左往している小部屋に追い込まれ、
イケメン店員達に「ここはオッサンらの来るトコとちゃうんじゃ!ボケェ!」と
罵られるわけです。ひと呼んで「オッサン ホイホイ」。
トホホ・・・それだけは勘弁です。
そこでオッサン、なんとか気を取り直し、あるショップの前で立ち止まります。
そして特に買うつもりもないのに、
いかにも
「おっ!これ、なかなかええやん・・・。こんなん探しててん・・・」的な表情を作り、
若い子が着そうなジャージ風のジャケットを手に取るのです。
すると奥にいた若い女性の店員さんが、
「ぃらっしゃいませぇぇぇ〜!」と、こちらを見はりました。
うう・・・、ヤバイ・・・と思いながらも
とりあえず、いくらすんにゃろ?と思って値札を探します・・・
でも見あたりません。
ん〜・・・値札はどこやどこや・・・と服の内側をまさぐっておりますと、
いつの間にやらその店員さん、音もなく近づき、すぐそばへ立っているのです。
きっと前世は「忍び」に違いありません。
そうしてこの汗ばんだオッサンに向かって言うのです。
「良かったら試着してくださいね。」
そしてオッサン、思いました。
「本気でそんなこと言うてんのん?オッサンにこんなカッコエエのが似合うと思ってんのん?
しかも、牛丼ツユダク、オッサン汗ダクやで。
こんな汗ダクのオッサンが試着したら、加齢臭がひっついて売りモンにならへんで・・・」と。
「しかも、どこぞの海外アーティストとちゃうんやし、
値段も見んと試着なんかようせんわ・・・。」と。
そしてこちらを見ている彼女に、
日本人的愛想笑いを浮かべ、
「う、うん・・・ありがとう・・・」とだけ言ってその場を去るのでした。
ああ、もう汗びっしょりですわ。
その後はオッサン、
店員さんと接触することを避けながら、各フロアをウロウロとするのでした。
で、たまに見かける他のお客さんは、若いカップルや若いサラリーマンがほとんどで、
たまに同じ様なオッサンを見かけると、「おお!同志よ!」と抱き合いたくなるのでした。
そして最後に向かったのは、地下一階。
今回の調査の最大の目的とも言える、「ネイルサロン」があるフロアです。
で、このフロアにもいろんなもんが売ってますが、
一際オッサンの目を引いたのは、パンツ売場です。
いろんな派手なボクサーブリーフが飾ってあります。
そんな派手派手パンツを眺めてオッサンは悲しく思うのです。
お仕置き定番の「白ブリ」がない・・・。
これでは不届き者をお仕置きできひんぞ!
と、店員に言ってやろうかと思いましたが、
怪しいオッサンとしてマークされてる身として
騒ぎを起こすわけにはいきませんので
グッとガマンです。
そうしてB1フロアをウロウロして、ようやく見つけました。
ネイルのコーナーです。
見た感じ、女性の化粧品売場のようになっており、
カウンター越しに綺麗なお姉さんが立ってはります。
しかし、残念なことにお客は誰もおらず、
ネイルケアの様子を観察することが出来ません。
仕方なく私は、一体どんなトコなんやろうと、
店の前にあるネイルケアの説明の書いたパンフレットを手に取り読んでおりました。
するとカウンターの中から、またもや
「いらっしゃいませぇぇ〜」と声を掛けられてしまったのです。
私は思わず自分のツメを眺めながら思うのです。
こんなに汚く、節くれ立ったゴツゴツ指を、
あんな綺麗なお姉さん達に見せる度胸はないなぁ・・・と。
「ネイル」と言うよりも
「ナイルの氾濫」みたいに汗だくになったオッサンが来たら
ビックリされるだけやなぁ・・・と。
そうしてオッサンは肩を落として、その場を離れ、
メンズ館を後にするのでした。
イケヘンオヤジの、イケメンぶりを期待下さった方、すんません。
オッサンにはやっぱり無理でした。
自称イケメン芸人さんの
「ラーメン、つけメン、僕イケメン!」に対抗して、
メンズ館からそそくさと逃げ帰った、
自称イケヘンオヤジが言うならこんな感じでしょうか・・・。
「着れヘン、買えヘン、もう行けヘン!」
ああ、イケメンへの道は遠いですなぁ・・・。
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