リズムは心に響く エヴェリン・グレニー
エヴェリン・グレニーは英国を代表するパ−カッショニストです。彼女は8才の頃から難聴に悩まされるようになり、12才でほとんどの聴覚を失ってしまいました。それでも彼女はプロの音楽家への道を諦めず、ロイヤル音楽アカデミー(RAM)に進みプロ奏者としてデビューしました。
1987年にゲオルグ・ショルティとマレイ・ペライアのピアノと共に録音したバルトークの「2台のピアノと打楽器のためのソナタ」はグラミー賞を受賞しています。耳が聴こえない打楽器奏者の演奏とはとても思えません。ソニーから発売されたCDの解説書では、グレニーについて一言も記述されていないのが残念ですが、バルトークらしいパワフルで鋭角的な打楽器の演奏です。この演奏は私の心に残る素晴らしい演奏だったのですが、彼女のことを知ったのは、数年後のことです。
彼女が24才の時(1990年)に書いた自伝「Good Vibrations」(リズムは心に響く:サイマル出版)を読んで、初めてグレニーの生い立ちと彼女が聴覚を失っていることを知りました。「耳が聴こえないことを言い訳にしたくない」という彼女の強い意志で、数々の困難を乗り越えてきたことを知ったのです。
私は1993年の秋の来日公演を聴くことができました。左の画像が当日のプログラムです。右の画像が著書とバルトークの「2台のピアノと打楽器のためのソナタ」のCDです。当日のプログラムには、彼女の聴覚のことがまったく書かれていません。楽屋でサインする時も普通に会話ができました。読唇術なのです。驚きました。当日の演奏のことが後になったのですが、正確で切れ味の鋭いリズムと大迫力の演奏には驚かされました。プログラムの中で1曲、特に複雑な曲があってスコアを使っての演奏でした。ホールの若い男性がスコアを持って、彼女の斜め前に立っていました。どいうやってスコアを追うのだろうかと思っていたら、その男性はスコアを見ないでめくっているのです!彼女の目の合図でめくっていたのでしょうね。私にはページをめくる合図が見えませんでした。
その後、彼女はベルリン・フィルハーモニーなど数々のオーケストラと共演し、彼女のために作曲された作品や、自らの作品などを演奏して精力的な活動を続けています。
Good Vibrations (振動に触れる)
音は空気の振動(波動)によるものです。彼女は振動の伝わる場所(指先か手首のあたりかなど)によって音の高低や音の大きさを感じとります。体全体で音を感じるということです。Good Vibrations は彼女の口癖です。聴くことは触れることの一つの形なのです。
グレニー音楽教育活動も熱心で、ワークショップなどを開いています。聴覚障害を持つ人にも音楽を楽しめるように、奨学金での支援や音楽教育も積極的に行っています。最近公開された映画『Touch the Sound』でもその様子が描かれています。
CD紹介
ドアティ
管弦楽のためのフィラデルフィア・ストーリーズ(2001)
パーカッション独奏と管弦楽のためのUFO(1999)
「UFO」は、「ロズウェル事件」を題材にした打楽器のための協奏曲です。サイレンが鳴ったり不思議な響きの音楽です。「フィラデルフィア・ストーリーズ」は、フィラデルフィアに縁のある人や物を音楽で表現しています。第3曲は、指揮者のストコフスキーへのオマージュです。バッハの平均律などのパロディが満載です。NAXOSは、なかなかやりますね。
マリン・オールソップ指揮、コロラド交響楽団、エヴリン・グレニー
録音: 2002年11月、デンバー、ベッチャー・コンサート・ホール NAXOS:8559165
CD情報 http://www.hmv.co.jp/product/detail/1796843
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聴覚の障害を乗り越えて、演奏家として大成する!素晴らしいことですね!!エヴェリン・グレニーの演奏はまだ聴いたことがありませんでしたので、また改めて聴いてみたいと思います。
音楽への飽くことのない情熱と執念、音楽に限らず、何事をなすのにもやはり大切なことですね。
2007/6/26(火) 午前 0:38 [ maskball2002 ]
maskballさん、コメントありがとうございます。グレニーは、前向きで明るい性格の人で、このように生きてみたいと思わせる人です。
CDはBMGと契約して多くのソロ・アルバムをリリースしていました。CDの中古市場では時々見かけるのですが、入手は年毎に難しくなっています。SONYから出ていたバルトークもとっくに廃盤です。
2007/6/26(火) 午後 10:15
全く聴こえないのにパーカッションで成功する。才能も素晴らしいのでしょうが、努力も大変なものでしょう。何事も明るく前向きに取り組むことは大切ですね。
2007/6/26(火) 午後 10:27 [ OEK FUN Beginners ]
かの大作曲家と同じ辛さを経験しているわけですが、その辛さがあるからこそ、音楽の楽しさを全身で伝えたいという思いで演奏し慈善活動に尽力しているのでしょう。
以前はよく来日していましたが最近は減っていますね。JinKさんの記事で久々に名前を聞きました。生で体験してみたいものです。
2007/6/26(火) 午後 10:29 [ mar*in*bba*o ]
FurtKleiberさん、演特定の楽器だけが音量が大きいとか小さいといった演奏の不自然さがないのです。マリンバの演奏などは小さな音量で演奏することが多いので、どうやって振動を感じているのか不思議です。
2007/6/26(火) 午後 11:01
確か今年の1月だったと思いますが、彼女は東京に来ていました。都内の小学生に指、手、腕で振動を感じさせるという内容のワークショップを開催したことがWebに記載されていました。聴覚に障害があることで、本当は辛いことも多かったと思います。でもそのような悲壮感を感じさせないグレニーは偉大な演奏家ですね。
2007/6/26(火) 午後 11:10
マーラーの交響曲集中期間が終わったら、バルトーク集中期間になりそうです。ショルティは素敵な演奏家たちと共演していますね。パーカッションに着目したことはこれまでなかったので、私の導入CDになるかもしれません。
2007/6/27(水) 午前 9:50 [ - ]
ショルティとシカゴの初めての録音がマーラーの交響曲第5番でした。引き締まった音の壮大な演奏で、それ以来このコンビの演奏から目が離せませんでした。
ショルティやライナーの指揮するバルトークの音楽は、リズムとアンサンブルが飛び抜けて素晴らしいです。「2台のピアノと打楽器のためのソナタ」では、ショルティの弾くピアノが、ピアノは打楽器であることを改めて認識させてくれます。バルトークの良い演奏があったら教えてください。
2007/6/27(水) 午後 11:18
ハンディキャップを持ちながらも悲壮感を漂わせずに活躍される!素晴らしい!乙武君みたいな方がたくさんいらっしゃるんですね!こういう方をもっと紹介してくれればいいのに・・・同じニュースを流しているワイドショーにお願いしたいわ♪教えてくださってありがとう^^
2007/6/28(木) 午後 4:42
ハンディキャップを持つ人で、ハンディキャップを持っていると言わないし、理由にしたくない人はたくさんいますね。私はグレニーのように明るく楽しく生きてみたいです。
2007/6/29(金) 午前 1:32
グレニーというパーカッショニストのこと、全く知りませんでした。音楽療法にも通じるものを感じました。音楽療法の一つの理論『神経学的音楽療法』では、音楽の要素の中でも、リズムの構造と機能が人間に与える影響を科学的に証明しています。グレニーは、理屈ではなく、演奏でそれを教えてくれているように感じました。まさにリズムは心に響くのですね♪
2007/6/30(土) 午前 0:37
ミルテンさん、リズムが人間に与える影響は科学的に研究されているのですか!グレニーは体得しているのでしょうね。
私は彼女の実演で音楽の力強さに圧倒されました。
2007/6/30(土) 午前 1:15
音楽療法は、その効果を科学的に証明出来ないことに弱みがあります。それでも最近はその研究が進んでいて、今は、コロラド大学のマイケル・タウト博士の理論と証明がもっとも注目されています。しかしそれは研究者にお任せするとして、私達は、音楽の情熱を心と魂でしっかり感じ、受け止めたいです♪
2007/6/30(土) 午後 11:09
ミルテンさん、「音楽の情熱を心と魂でしっかり感じ、受け止める」という言葉には心から共感します。作曲の詳しいことを知らない私でも、空気の振動を通して作曲家の心を感じることができるように思います。
2007/7/1(日) 午前 10:13
今日この本を読んだのですが、グレニーさんは偉大な方だと思いました。
これからもがんばってほしいですね!
2010/7/21(水) 午後 10:27 [ Maimai☆ ]