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さて女装が完璧になった、塩田さん(芸名)だが、
当初の心配とは裏腹に、ちゃんと女の子に見えるようになった。
しかも、時間が経つにつれ、どんどん女の子になっていく感じである。
なんだかむしろ、いつもの塩田さんより正直、親近感が沸くくらいである。
いいじゃない!かわいい!
と自分の心の中の少年がはしゃいでいるようである。
あとは、本懐である写真撮影の手伝いである。
今回はそのお話の顛末。
近所の公園に三脚だのカメラだのを運んだりメイクを直したりと
手伝いといってもほとんど役には立っていないのだが、
それでも、ものすごくワクワクしてテンションが上がってくるのである
すごく貴重な体験をしている!という実感が湧きあがってくるのだ。
しかし、指示されたときにシャッターを切ったりしていると
なぜかもどかしい気持ちになって来てしまうんである。
ものすごく無性に「あたしも撮りたい!」
という気持ちになってくるのである。
うずうずしていると
それを見かねたのか、挙動不審ぶりに不安を感じたのか
「いいと思ったときに撮ってくれてかまわないよ〜」
と例のオカマ口調で許可が。
「やった!任せて!綺麗に撮ってあげる!」
などと例によって自分までオカマ風の妙なテンションで撮っていると
なんだか不思議なことに
次第に現実感が揺らいでくるような気がしてきて
頭では「この人は男だ」と分かっているはずなのに
目の前にいる人が、よく知っている女の子に見えてきて
目の前で目薬を差すのを見ているはずなのに、
友達が泣いているような錯覚にとらわれて、切なくなったりして
この公園で本当に、この女の子が涙を流すような
そんな出来事があったかのような
そんな気分になってくるのである。
「これが役者か・・・」
と思うと、すごい!と思いながらも、
「今後、塩田さんが泣いてても、なんだか信用できないな。」
などと失礼な感想を抱きつつ
なぜかシャッターを切っていると
それとはまた別の
不思議な気持ちが湧き上がって来るのだった。
それは
焦りにも似ているのだが、
もう少し悲しいような、
しかし安らかなような
それでいて、何をしても満たされないような
不思議な気持ちである。
なぜだろう?
なんなのだろう?
と思いながら撮っていると、
あっという間にもうフィルムが残り3枚である。
「残り3枚か・・・」と思ったときに
唐突に、子供の頃の、
プールに行ったときや、海に行ったときの記憶がよみがえってきて、
「な、なぜこんな寒い日(ちなみに2月)に真夏の思い出が・・・?」
と、一瞬混乱した。
が、直後に「あ〜もう夏休みあと3日か〜」
という当時の気持ちがついでによみがえってきて、
「あぁ、そういうことだったのか」と解った気がした。
あの不思議な気持ちはきっと
過ぎ去っていくものを惜しみ、慈しむ気持ちと
それでも、それを何とか留めておきたいという気持ちなのだろう。
「今!今のこの貴重な瞬間を捉えたい、残しておきたい!」
とどんなに切望しても
時間は流れて、留めることはできないし、そのことも解っているのだけど。
たとえ写真に撮っても、映像に残しても、心に焼き付けたとしても
次の瞬間には、その時はもう終わってしまうのが、解ってはいるのだけど。
それでも、せめて
少しでも残るように、
忘れないように、思い出せるように。
そういう、いわば諦観と切望のような気持ちである。
そしてそれは、すぐに過去になってしまう「今」への祈りのようでもある。
シャッターを切るたびに切り取られる
次の瞬間には変わってしまう
表情や、光の加減や、服のしわや、落ちる葉や
そして、もうすぐいなくなってしまう、
おそらくもう二度と会うことができない女の子が
しかし、確かにここにいて
笑ったり泣いたりしていたのだ。という
そういう、夢のような、もう一つの現実のようなものを残したくて、
私はシャッターを切っていたのかも知れない。
そう思い、誰かを見送るような厳かな気持ちで
最後のシャッターを切ったのだった。
そして、こんな経験をさせてくれた塩田さんにお礼をすると
「こちらこそ、手伝ってくれてありがとうね」と
やはり女の子にしか見えない笑顔で言われ
またもや、やっぱり現実感が揺らぐ気がして
あれ?こっちが現実だったっけ?
と混乱してしまうのだった。
この人誰だっけ?
いや、分かってるよ。
あれ?そうだっけ?本当はどっちが本物だっけ?
などと自分でもよくわからないことを考えながら機材を片付けていたが
そんな私の混乱は知らない塩田さんは
普通にあっさりカツラをはずし、
「疲れた〜腹減った」などと
普段どおりのドスの効いた男の声でつぶやき
しかしその時、やっと
「あ、やっぱりこっちが本物だったか。」
と一気に現実に引き戻されたのだった。
「だよなぁ。そして、やっぱり、どう見ても男だよなぁ・・・」
とちょっと自分の心の中の少年ががっかりする感じを味わいつつ
だが、しかし
この奇妙で貴重な出来事があった日の
空気や、日差しや、温度とか
そこに確かに、
あったはずの出来事や
いたはずの女の子や
そこで流された涙といったような
私がシャッターを切って捕まえようとした
夢のような、もう一つの現実のようなものが
少しでも写っているといい。
そう思うのだった。
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綺麗に撮れてますねぇ
女性ですよwwww
私も役者の卵さんの知り合いが結構居ますが一人『女装が多いんですよ^^;』って子がいましたねぇww
役者さんは大変だ
という私も昔、ちょっとだけ役者してたことあるんですよ
すぐやめたけど^^;
2008/4/3(木) 午後 1:16 [ - ]
ですよねぇ。
やっぱりこれは女性ですよねぇ〜・・・
てゆーか、役者だったんですか!?
本当に案外いるもんなんですね!
う〜ん、世の中には、自分の知らないことが
本当にいいっぱいあるんだなぁ・・
2008/4/3(木) 午後 10:02
ん〜すごいなぁ。。
シャッターを切るときの気持ちをココまで克明に言葉に置き換えられるなんて〜。
ファインダーの向こう側にいた女の子は現実でもあり幻でもあったんですねぇ。。
貴重な体験です。僕も撮ってみたい☆
2008/4/10(木) 午後 10:30 [ tatsuya ]
気持ち的には「サイコ」を撮った時のTatsuyaさんに近い心境なんじゃないかしら。とか勝手に思ってるんだけど、どうでしょう?(笑)
色んな意味で
もうこの先こういうことはないだろうな。と思うとつい感傷的になっちゃいますねぇ。はい。
2008/4/11(金) 午後 1:25
昨日はお疲れ様でした☆
楽しかったデス♪
ん〜僕がサイコ風な写真を撮ったときの撮影風景は、酒を呑みつつ談笑しながらだったんで近くはないような…でも、内面というか深層心理的なものを撮る意味では近いといえば近いのかな。。。
モデル探せばいいじゃないですかぁwオカマモデル。
2008/4/13(日) 午後 1:02 [ tatsuya ]