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あたたかい…
きもちいい…
何も見えない…
声が聞こえる…
まだここにいたい…
呼ばないで…
まだ出たくない…
苦しいの…?
ごめん…
まだここにいたい…
ダメなの…?
そう…
もういられないんだ…
それでも…
まだここにいたい…
「生まれましたよ!元気な男の子です!」
ここは…
もう戻れない…
あそこには…
「ほら、こんなに元気に泣いてますよ。」
悲しい…
淋しい…
涙がとまらない…
もう…
戻れない…
「この子が私の子ども…。こんにちは、私が母親よ。」
この声…
母親…?
何だろう…
よくわからない…
「私に笑顔を見せて。」
笑えないよ…
まぶしい…
眼が見える…
光が広がる…
僕は…
戻りたい…
「あなたに名前をつけなきゃね。」
名前…?
わからない…
僕は…
なんのために…
ここにいるの…
「先生!赤ちゃんの容態が!」
もう嫌だ…
僕はあそこにいたい…
あたたかいあの場所に…
ここはつめたい…
ここにはいたくない…
ここにはいられない…
「心拍数が弱まってます!」
光が消えてく…
眼が閉じてく…
あたたかい…
きもちいい…
あそこに戻れる…
「しっかりして!死んじゃダメ!」
声が聞こえる…
僕を呼んでるの…?
ごめん…
ここにはいたくない…
もうなにも感じない…
さよなら…
「先生!心臓が…停止しました…」
………………………
「そんな…お願い眼を開けて…泣き声をきかせて…私を1人にしないで…」
………………………
「お願い…あなたがいないと生きていけない…。あなたは私の大切な…」
………………………
「!心拍数が…」
声が聞こえる…
泣かないで…
戻らないから…
苦しめないから…
「赤ちゃんが息を吹き返しました!」
わかったから…
もう戻れないって…
わかったから…
居場所がここだって…
「あぁ…よかった…ほんとに…生きて…戻ってきてくれて…」
「もう…どこにもいかないで…もう…離さない…」
もう泣かないで…
ここにいるから…
どこにもいかないから…
そばにいるから…
お母さん…
「あ…この子…笑ってる…。」
終わり
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