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イギリスでヴァージナル楽派が隆盛を極めている頃、オランダでは「ドイツ・オルガニスト製造者」と呼ばれた巨匠ヤン・ピーテルスソーン・スウェーリンクが大活躍していました。
私がここで採り上げるCDはまずアンネケ・アウッテンボッシュ演奏「スウェーリンク:鍵盤作品集」(GLOBE輸入盤)とロベルト・ウーリー演奏「スウェーリンク:オルガン作品集」(CHANDOS輸入盤)の2枚です。国内盤のCDを持っていないので曲名などが分からないのですがその素晴らしい音楽性とイギリス・ヴァージナル楽派との密接な関係から紹介せずにはいられません。
アウッテンボッシュ盤ではチェンバロ、ヴァージナル、オルガンを使い分けて演奏されていて、スウェーリンクの作品の雰囲気を楽しむには調度良い録音となっています。収録されている作品は、主に変奏曲や舞曲(パヴァーヌなど)、トッカータやファンタジアなどです。特にパヴァーヌはヴァージナルで演奏されていてイギリスのものと非常によく似た印象をおぼえます。また「More palatino」という変奏曲では、フレスコバルディの「バレットという名のアリア」やギボンズの「イタリアン・グランド」と同じ旋律を用いているところが興味深いです。
ウーリー盤はタイトル通り全部オルガンで演奏されています。私は今までウーリーはハープシコード奏者だとばかり思っていたのですが、教会オルガンも弾くことがあるんですね。驚きです。ウーリー盤はファンタジアやトッカータを主に収録しています。タイトル付きの作品もあるのですが読めないのが残念です。ファンタジアはイギリスのヴァージナル作品とは趣を異にしていて、バッハのフーガを想起させる音楽性となっています。またイギリスで作曲されなかったトッカータはオランダからは遠い南のイタリアのトッカータと雰囲気が似ています。
スウェーリンクの鍵盤作品の中で、ファンタジアは後のドイツのフーガの原点ともいうべき重厚な作風でスウェーリンク独自の特徴を持った音楽といえると思います。トッカータはイタリア音楽を学んだ成果ともいうべきで、後のブクステフーデやバッハの作品よりはフレスコヴァルディに近い作風です。変奏曲やタイトル付きの小品などは、明らかにジョン・ブルやピーター・フィリップスとの親交を示すかのようにイギリスのヴァージナル音楽にとても似た印象をおぼえます。
実は私はまだスウェーリンクの作品を研究中で結論を出すにはまだ早いと思いますが、オランダから出ることの少なかったスウェーリンクの音楽性は、フランドル、イギリス、イタリアの要素が混在した当時としてはとても国際的な音楽だったといえると思います。直接ドイツ人の弟子を大勢もっていたことからも、後のドイツの鍵盤音楽家達に与えた影響は多大で、結果的にバッハに結びつくこととなります。
スウェーリンクはまた機会があれば採り上げていきたい、実に奥の深い音楽家です。
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